Star Formation: From OB Association to Protostars


Lada
1987 IAU Symp.115, 1 - 18





 1.イントロダクション 

 これまでの研究の歴史。研究者にとり特に意外だったのは、収縮する 分子雲コアに収縮運動が検出されず、放出双極流ばかりが受かったこと であった。

 この論文では大局的な方向、渦状密度波、順次連続星形成、OB アソシエイションと星団の力学進化、初期質量関数などの研究と、 もう一つの微視的な方向、個々の天体の形成と初期進化の研究の二つ を合成して、アソシエイションと星団の進化に関する現在の理解と 分子雲中の若い個々の天体の進化に基づいて、恒星の初期進化の シナリオを提示する。可視ー赤外の広帯域測光の有用性を強調し、 真の原始星を見出し、星形成の謎を直接解き明かす見通しを述べる。

 2.アソシエイションの初期力学進化 

 初期の仮説 
 関心は膨張する星の集まりをどう作るかに集中した。
アンバルツミアン(1947)
 アソシエイションの年齢は 数10Myr で、銀河系よりずっと若い。
(ρAss < ρcrit = 0.1 Mo pc-3)は銀河系の潮汐力に対し対抗できない。
Opik(1953)
 超新星の膨張シェルが圧縮されてそこに星が生まれた。
Oort (1954)
 HII 領域の膨張で膨張ガス雲が作られ、その中で星が出来る。


 CO による分子雲の観測
 過去10年の CO 観測から、アソシエイションは巨大分子雲 (50-100 pc, 104 - 105 Mo)から生ま れることが判った。巨大分子雲は 15 Mo pc-3 , 乱流圧 で支えていて、明らかに拘束系である。そこからどうして非拘束な アソシエイションが生まれるのか?
Deurr, Imhoff, Lada (1982)
 λ Ori OB, T アソシエイションの観測から新しいシナリオ。
 アソシエイションは低密度 HII 領域の中心に位置する。HII 領域は ほぼ円形のダストとガスのシェルに囲まれている。  分子雲の中に生まれた若い星の HII 領域がアソシエイションの星が 生まれた分子雲をほぼ完全に吹き払ってしまった。シェルの質量と アソシエイションの質量から星形成効率は極めて低く 0.2 - 0.3 % である。これは比較的短期間(HII 領域の寿命)で大質量星が系を 拘束していた質量を吹き飛ばした事を意味する。これが非拘束系 のアソシエイションを産み出したのである。

 吹き飛ばしモデル 
 上のシナリオは理論的には以前から提唱されていた。
von Hoerner (1968)
 O型星は巨大ガス雲を吹き飛ばせる。
Whitworth (1979)
 星形成効率が 4 % なら普通の IMF だと O 型星で雲が破壊される。
Elmegreen, Lada (1977)
 sequential 星形成はもっと効率よく雲を散逸させる。


 新しいモデル 
 図1に新しいシナリオを図示した。
(1)初めに分子雲全体で総質量の約 1 % を消費する低質量星が生まれる。

図1.アソシエイション形成の漫画。


(2)その後どこかの時点で誕生した OB 星が周囲のガスを加熱・電離・散逸する。
(3)OB 星誕生は近傍星形成を中止させ、一方分子雲深部で OB 星誕生を促す。
(4)最終的に全複合体が散逸する。

分子雲の散逸が短期な為、誕生した星の運動を断熱的に調整する時間がなく、非拘束系 となってしまう。仮に調整に成功しても、恒星密度が低く潮汐破壊に耐えられない。


 速度分散 
 このシナリオの重要な予想は、膨張アソシエイションの速度分散は当初分子雲 内部での速度分散と同じくらい。数 km/s であるということである。Mathieu, Latham 1986 は λ Ori アソシエイションの速度分散が 2 km/s である ことを見出した。これは分子雲の典型的な速度巾である。



 3.星形成効率の重要性 

 なぜ星形成は低効率なのか?
 今や問題は何故星形成効率がそんなに低いのかという点にある。現時点 ではどんな物理条件が低効率の星形成を強いるのか不明である。 生まれる星の 10 % が力学的に拘束された星団として生まれると考えられる (Roberts 1957)。星団の存在は分子雲内部の諸過程の相互作用の結果、ある 条件で拘束系が生まれる場合があることを示す。

 星団形成の問題 
 拘束系の星団を産み出している分子雲と、非拘束アソシエイションを産み 出している分子雲との、比較研究は星形成で最重要課題である。ただ、どの 分子雲が星団を産み出しつつあるかをどう判定するかが問題だ。 もし、星形成効率が 25 % かそれ以上 (Elmegreen 1983, Mathiu 1983, Lada et al 1984) の領域で拘束系星団が生まれるなら、適当な体積での 星形成効率を決定する事は原始星団の同定につながる。
 Rho Ophiuchi の例 
 この問題で大事なのは「適切なる」体積の選択である。それはおそらく 100 個程度の YSO を含む体積であろう。これはアソシエイションの場合 数十パーセク、星団の場合は数パーセクに対応する。例えば Rho Ophiuchi 分子雲のコアには 100 個の星が 1 パーセクの中に集まっている。そこでの 星形成効率は 25 % を越えている。
 同じような質量の星を産み出していても、 T アソシエイションを持つ Taurus は異なる物理条件を持つ。例えば、Ophiuchi 暗黒雲の温度は 35 K だが、Taurus は 10 K。ただ、その原因や機能はまだ分からない。

 星形成効率の有用性 
 星形成効率という概念は星団、アソシエイションの形成だけでなく、 単一星の形成を考える際にも有用である。 光空間分解能の赤外、電波観測がこれから重要になる。



 4.原始星と YSO の進化 

 4.1.YSO の SED 

 SED 分類 
 Ophiuchi 暗黒雲コア内の赤外天体の 1 - 20 μm 測光が得られた 。その SED log[λF(λ)] - log λ は 3 種類に分けられる。(Lada, Wilking 1984)

I-
 2 μm より長波長側で上がる。可視では見えない。

II-
 黒体より幅広だが、平坦または 2 μm より長波長側で下がる。
 可視で見える。大抵 T Tau 星に分類。

III-
 赤化を受けた黒体 SED で近似できる。
 赤化補正した温度に対応するスペクトル型。

 スペクトル指数 
 スペクトル指数は、

      a = dlog[λF(λ)]/dlog λ

クラス I   0 < a < +3 

クラス II   -2 < a < 0 

クラス III  -3 < a < -2 

SED 例は図2を見よ。興味深いのは、Ophiuchi 暗黒雲内の可視天体は 全てクラス II か III であったことである。可視で見えない天体は 全てクラス I であった。




 Ophiuchi 暗黒雲の YSO クラス 

 クラス分けの普遍性 
 L1551 IRS 5 以外のサンプルは Ophiuchi の Lada Wilking 1984 からのものである。他の暗黒雲天体も類似かどうかは興味ある問題である。 少なくとも低質量 YSO はそのようである。

 逸脱サンプル 
 クラス分けは SED の連続変化に区切りを入れたもので、境界では どちらかは紛らわしい。また、二つコブのように単純な a で SED を 表わしきれないものもある。それらは大抵クラス I と II の境界付近の 星である。



図4..典型的クラス II 天体。

図3.典型的クラス I 天体。



図5..クラス III 天体。実線=黒体フィット。H-K から赤化はほぼ 確実に決まるのでフィットは一意である。



 4.2.進化系列? 

 提案シナリオ 
(1)分子コアが形成される。コアは急な密度勾配を持ち回転している。 ( Adams,Shu 1986) 
(2)コアが不安定になり内側から崩壊していく。原始星天体の形成。 (Larson 1973, Adams,Shu 1986) 太陽質量でこの原始天体のサイズは 0.1 pc 程度であろう。その中心には濃い恒星状コアと円盤が発達して行く。 その SED は強い右上がりになる、(Adams, Shu 1986)
(3)放出流が開始され、落下物質を捉えて外向きに変える。放出流はまず 落下外層を破壊し、運び去る。次いで、星周円盤が赤化した若い星、 多分 ZAMS のごく近く、を表わす。(クラスIII)
 T Tau 天体の位置付け 
 クラス II 天体の SED は黒体より幅広で、大きな赤外超過を示す。 これは 数 AU 離れたダストによるものであろう。それは球殻か円盤のいずれか であるが、HL Tau の観測などから円盤らしい。

 エネルギー注入 
 放出流は分子雲に力学エネルギーを注入する。その結果より大質量の星を 形成する条件が分子雲の中に出来てくる。こうして大質量星が出来ると 分子雲が散逸し、星形成効率に応じて、若い星が星団またはアソシエイション として現れる。



 5.結論