Infrared Array Photometry of Metal-Rich Globular Clusters I. Techniques and First Results


Kuchinski, Frogel, Terndrup
1995 AJ 109, 1131 - 1153




 アブストラクト

 球状星団のJHK観測 
 球状星団 NGC5927, NGC6712, NGC6838(M71), Tewrzan 2 の JHK カラーと 等級を示す。データは TRGB から 6 等、水平枝の下までに及ぶ。 このほか以前に発表された 47 Tuc と M69 も使う。これらを用い、 色等級図からメタル量と距離を決めるテクニックを開発した。

 巨星枝の勾配からメタル量
 水平枝より先の巨星枝の勾配から -1.0 から -0.3 の範囲でメタル量を ±0.25 dex 精度で予想できることを示した。その他のパラメタ―、 例えば水平枝の巾、巨星枝と水平枝の分離、などは [Fe/H] と相関しない。

 Terzan 2 の距離 
他の方法で距離が定まっている球状星団のデータから、⟨MKo ⟩ = -1.15±0.10 となった。これから Terzan 2 の距離指数は 14.37±0.2 となり、この星団が銀河中心から数百 pc 以内にあること が分かった。(J-H, H-K) 図上で Terzan 2 巨星枝は他の球状星団 巨星よりもバーデの窓巨星と近い。Terzan 2 周囲の巨星の巨星枝勾配から 求めたメタル量は [Fe/H] = +0.1 でバーデ窓に近い。

 1.イントロ 


 円盤球状星団は主に [Fe/H] > -0.8 で ⟨[Fe/H]⟩ = -0.54 である。それらの多くは強い減光を受けている。特に Terzan 2 は メタル量が高く、減光も E(B-V)=1.5 と強い。ここでは赤外アレイの観測から メタル量、距離を調べる。


表1.ここで調べる球状星団



 2.観測とデータ解析 

 2.1.天体選択 

 ここで調べる球状星団は表1に載せた。NGC6712 は低メタルでハロー球状星団 に分類されることもある。NGC6712 と NGC6838 は単素子での赤外観測が行われて おり、較正に便利でかつ北半球からも観測可能であるので選ばれた。

 2.2.観測 

 観測は 1991, 1993 2.5m デュポン望遠鏡 + NICMOS 3 で行われた。観測ログ は表2に載せた。

 2.3.データ解析 




表2.観測ログ





表3.NGC 5927 データ

 3.測光 

 DoPhot を用いて解析を行った。表2に Ter 2 での測光エラーを示す。


図1.Ter 2 での K 測光エラー. K = 11 mag より明るい星はサチッている。



図2.Ter 2 の 1991, 1993 K 測光の差。K = 11 mag より明るい星 がなぜか多数含まれている?



 NGC 5927 



図3.3 秒 × 5 K画像の NGC 5927 平均画像。



 Terzan 2  



図4(c).Terzan 2 の 中心部(1993 観測)。























Terzan 2 



図4(a).Terzan 2 の K モザイク画像。(b). Terzan 2 の 中心部(1991 観測)。



NGC 6712 



図7.NGC 6712 K画像
 M 71 



図8.M 71 K画像



4.JHK カラーと等級  

4.1.Terzan 2 とフィールド星  

 リングに分ける 
 図4(a) を見ると分かるが、 Terzan 2 中心部は星団星の密度が高い。 一方その周辺は密度が一様でおそらくフィールド星が主要である。 そこで、図4(a) に示すような4つの同心環に分けて密度を測った。その 結果が表8である。

 色等級図 
 図9を見ると、内側の環I, II と環IV は巨星枝位置がずれている ことが分かる。勾配も少し異なる。

表8.Terzan 2 の密度変化



図9.Terzan 2 の4リングにおける色等級図。実線=星団とフィールドの 各ベストフィットライン。


図10.Terzan 2 の4リングにおける二色図。実線=フィールド巨星の平均 カーブを Terzan 2 の赤化分移動したもの。


 4.2.色等級図の一般的記述 

 球状星団の色等級図
 図11には4つの新たに観測した球状星団の色等級図を示した。 可視巨星枝がカーブしているのに比べて、まっすぐ伸びている特徴が 著しい。実線は4.4節で述べる方法で導いた巨星枝である。

 NGC 6712 
 OSIRIS, LCO データの双方を示した。 LCO データは雲のために浅い。

Terzan 2 
 星団とフィールドの二つの図を示す。
 M69 
 Davidge, Simons 1991 のフィールド1(中央部)データを使用した。

 47 Tucanae 
 Frogel et al 1981 から採った。赤化補正後の値を示す。

 CMD の特徴 
 RGB と AGB の区別は分からないが、HB の上で少し太くなるのは AGB が 加わったためかもしれない。HB のすぐ下にギャップが見えるのは進化スピード と AGB がないことの二つの効果が原因であろう。

 HB  
 Terzan 2 を除いて HB が見える。HB と GB の相対位置は可視の場合と 大きく異なる。例えば 47 Tuc の場合、B-V では HB の赤端と GB の間に 十分の数等のギャップがあったが、赤外ではくっつい、散開星団の レッドクランプのようである。最も低 メタルの NGC 6712 の場合にのみ青い方まで伸びている。


図11.球状星団の色等級図











 4.3.二色図 


 平均星団線 
 JHK 二色図上での巨星の位置は球状星団、バーデ窓、近傍フィールド で異なる。しかし、球状星団巨星の位置はメタル量にあまり依らない。 図12には赤化補正後の我々のサンプルの二色図を示す。近傍巨星の 平均位置も示した。Terzan 2 パネルにはバーデ窓の巨星ラインも示した。 赤化補正は Cohen et al 1981 AK=0.51E(J-K), E(J-K)= 0.56E(B-V), E(J-H)=0.63E(J-K), E(H-K)=0.37E(J-K)を用いた。
 二色図上での位置 
 Terzan 2 を除くと、二色図上での球状星団星は平均星団ラインの まわりに分布する。図を見ると Terzan 2 星の位置はバーデ窓星に近い。



図12.脱赤化後の星団二色図。三角=単素子データ。破線=星団の平均。 実線=近傍巨星。一点破線=バーデ窓。


 4.4.星団巨星枝とメタル量パラメタ― 

巨星枝勾配はメタル量に鋭敏 
 恒星進化計算によると、巨星枝勾配はメタル量に鋭敏だが年齢や Y には あまり効かない。

 手順 
(1)ZAHB の上 0.6 - 5.1 mag の星を選ぶ。
(2)2 σ クリッピングの逐次近似で線形フィットを行う。
結果を表9に載せる。

 結果 

     [Fe/H] = -3.09(±0.90) - 24.85(±8.90)×傾き


表9.巨星枝の勾配




図13.Revised Yale 等時線。全て Y = 0.25 仮定。Z と t は図中に示す。

図15.[Fe/H] と巨星枝勾配の関係。











図14.6つの星団+Terzan2 フィールド星の巨星枝。



 4.5.HB 

 4.6.距離 

 5.HBモデルとの比較 

 6.まとめ