アブストラクト球状星団のJHK観測球状星団 NGC5927, NGC6712, NGC6838(M71), Tewrzan 2 の JHK カラーと 等級を示す。データは TRGB から 6 等、水平枝の下までに及ぶ。 このほか以前に発表された 47 Tuc と M69 も使う。これらを用い、 色等級図からメタル量と距離を決めるテクニックを開発した。 巨星枝の勾配からメタル量 水平枝より先の巨星枝の勾配から -1.0 から -0.3 の範囲でメタル量を ±0.25 dex 精度で予想できることを示した。その他のパラメタ―、 例えば水平枝の巾、巨星枝と水平枝の分離、などは [Fe/H] と相関しない。 Terzan 2 の距離 他の方法で距離が定まっている球状星団のデータから、〈MKo 〉 = -1.15±0.10 となった。これから Terzan 2 の距離指数は 14.37±0.2 となり、この星団が銀河中心から数百 pc 以内にあること が分かった。(J-H, H-K) 図上で Terzan 2 巨星枝は他の球状星団 巨星よりもバーデの窓巨星と近い。Terzan 2 周囲の巨星の巨星枝勾配から 求めたメタル量は [Fe/H] = +0.1 でバーデ窓に近い。 |
1.イントロ円盤球状星団は主に [Fe/H] > -0.8 で 〈[Fe/H]〉 = -0.54 である。それらの多くは強い減光を受けている。特に Terzan 2 は メタル量が高く、減光も E(B-V)=1.5 と強い。ここでは赤外アレイの観測から メタル量、距離を調べる。 ![]() 表1.ここで調べる球状星団 |
2.1.天体選択ここで調べる球状星団は表1に載せた。NGC6712 は低メタルでハロー球状星団 に分類されることもある。NGC6712 と NGC6838 は単素子での赤外観測が行われて おり、較正に便利でかつ北半球からも観測可能であるので選ばれた。2.2.観測観測は 1991, 1993 2.5m デュポン望遠鏡 + NICMOS 3 で行われた。観測ログ は表2に載せた。2.3.データ解析 |
![]() 表2.観測ログ |
DoPhot を用いて解析を行った。表2に Ter 2 での測光エラーを示す。
![]() 図1.Ter 2 での K 測光エラー. K = 11 mag より明るい星はサチッている。 |
![]() 図2.Ter 2 の 1991, 1993 K 測光の差。K = 11 mag より明るい星 がなぜか多数含まれている? |
NGC 5927 ![]() 図3.3 秒 × 5 K画像の NGC 5927 平均画像。 Terzan 2 ![]() 図4(c).Terzan 2 の 中心部(1993 観測)。 | Terzan 2 ![]() 図4(a).Terzan 2 の K モザイク画像。(b). Terzan 2 の 中心部(1991 観測)。 |
NGC 6712 ![]() 図7.NGC 6712 K画像 |
M 71 ![]() 図8.M 71 K画像 |
4.1.Terzan 2 とフィールド星リングに分ける図4(a) を見ると分かるが、 Terzan 2 中心部は星団星の密度が高い。 一方その周辺は密度が一様でおそらくフィールド星が主要である。 そこで、図4(a) に示すような4つの同心環に分けて密度を測った。その 結果が表8である。 色等級図 図9を見ると、内側の環I, II と環IV は巨星枝位置がずれている ことが分かる。勾配も少し異なる。 |
![]() 表8.Terzan 2 の密度変化 |
4.2.色等級図の一般的記述球状星団の色等級図図11には4つの新たに観測した球状星団の色等級図を示した。 可視巨星枝がカーブしているのに比べて、まっすぐ伸びている特徴が 著しい。実線は4.4節で述べる方法で導いた巨星枝である。 NGC 6712 OSIRIS, LCO データの双方を示した。 LCO データは雲のために浅い。 Terzan 2 星団とフィールドの二つの図を示す。 |
M69 Davidge, Simons 1991 のフィールド1(中央部)データを使用した。 47 Tucanae Frogel et al 1981 から採った。赤化補正後の値を示す。 CMD の特徴 RGB と AGB の区別は分からないが、HB の上で少し太くなるのは AGB が 加わったためかもしれない。HB のすぐ下にギャップが見えるのは進化スピード と AGB がないことの二つの効果が原因であろう。 HB Terzan 2 を除いて HB が見える。HB と GB の相対位置は可視の場合と 大きく異なる。例えば 47 Tuc の場合、B-V では HB の赤端と GB の間に 十分の数等のギャップがあったが、赤外ではくっつい、散開星団の レッドクランプのようである。最も低 メタルの NGC 6712 の場合にのみ青い方まで伸びている。 |
平均星団線 JHK 二色図上での巨星の位置は球状星団、バーデ窓、近傍フィールド で異なる。しかし、球状星団巨星の位置はメタル量にあまり依らない。 図12には赤化補正後の我々のサンプルの二色図を示す。近傍巨星の 平均位置も示した。Terzan 2 パネルにはバーデ窓の巨星ラインも示した。 赤化補正は Cohen et al 1981 AK=0.51E(J-K), E(J-K)= 0.56E(B-V), E(J-H)=0.63E(J-K), E(H-K)=0.37E(J-K)を用いた。 |
二色図上での位置 Terzan 2 を除くと、二色図上での球状星団星は平均星団ラインの まわりに分布する。図を見ると Terzan 2 星の位置はバーデ窓星に近い。 |
巨星枝勾配はメタル量に鋭敏 恒星進化計算によると、巨星枝勾配はメタル量に鋭敏だが年齢や Y には あまり効かない。 手順 (1)ZAHB の上 0.6 - 5.1 mag の星を選ぶ。 (2)2 σ クリッピングの逐次近似で線形フィットを行う。 結果を表9に載せる。 結果 [Fe/H] = -3.09(±0.90) - 24.85(±8.90)×傾き ![]() 表9.巨星枝の勾配 ![]() 図13.Revised Yale 等時線。全て Y = 0.25 仮定。Z と t は図中に示す。 |
![]() 図15.[Fe/H] と巨星枝勾配の関係。 ![]() 図14.6つの星団+Terzan2 フィールド星の巨星枝。 |