Taurus-Auriga 分子雲での前駆主系列星探査 IRAS から以前 Taurus-Auriga 分子雲コアに随伴していると知られていな かった早期型前駆主系列星を探した。6個の埋もれた天体は T Tau 型星の 平均的な明るさを持っていた。これらから、 L ≥ 0.5 Lo では探査が 完全と考えられる。 埋もれた星の寿命 埋もれた星と T Tau 星の数の比から、寿命を求めると、T Tau を τTTS ∼ 106 yr として、 τemb ∼ 1.2×105 yr となる。 |
降着率との矛盾 τemb から導かれる降着率と Lbol との矛盾は、もし 降着が τemb に比べ短期間に生じた、または、T Tau 星 の年齢が過小評価されているならば、解消する。 周星円盤 もし、そのどちらかが正しいなら、埋もれた前駆主系列星の降着率は 単純に母分子雲からの落下率に結びつかない。というのは多分落下がまず 周星円盤に対して起こるからである。 |
埋もれた星の光度が暗すぎる Beichman et al 1986, Myers et al 1987 は Taurus-Auriga 分子雲コア 付近で 11 個のダスト雲に埋もれた若い天体を発見した。その領域には 可視で見える T Tau 星が 100 個くらいある。したがって、埋もれた天体の 時期は 105 yr と見積もられる。もし、この期間に星の質量分の 落下が起きるなら、降着率は 10-5 Mo/yr となる。この 降着率だと、光度は 50 Lo (R=3Ro 仮定)となる。しかし、実際には 観測された光度は、数 Lo 程度であった。 IRAS を用いた TTS 探査の拡大 統計精度を上げるために、 Taurus-Auriga での IRAS 天体探査を行った。 Beichman et al 1986 の探査領域を広げ、 以前には同定されていなかった 天体を新たに 25 個見つけた。近赤外測光、可視分光からそれらが若い 星であることが判った。それらの内埋もれた星 6 個の光度は 1 Lo 程度で TTS と看做せる。この探査で L ≥ 0.5 Lo の TTS 探査はほぼ完全に なった。 |
低光度問題の解消1 しかし、低光度は低降着率を意味し、埋もれた星の数から予想される 寿命(∼ 1-2 105 yr)内に 1 Mo の降着量を達成するのは 難しい。もし、降着が非常に短域間に集中して激しく起こる、例えば FU Ori バーストのような、ならばこの矛盾を避けられる。または、 もう少し穏やかで長い降着が起きているのかも知れない。この場合、 サンプル数が小さいとそのような現象にぶつからなくても不思議ではない。 低光度問題の解消2 低質量星はその降着量のかなり、30 - 40 %, を可視星時代に獲得するのかも 知れない。現在の TTS 降着率の見積もりはそのためには TTS 寿命が現在の 予想値の 3 倍は長くなる必要があることを示唆する。 |
a.FIR データ選択基準a. F(25)> 1 Jy または F(60) > 1 Jy b. 25 μm, 60 μm で IQ = 2 or 3. c. α = [3h45m, 5h15m], δ = [+15°, +35°] 選択天体 約 140 IRAS = 約 115 フィールド星と前駆主系列星 + 25 新天体。 これら新天体を表1に載せた。チェックのために F(12) > 1 Jy で 探したら新たに 10 以上の新天体が加わったが、F(12)/F(25) ∼ 2 - 4 で 明らかにフィールド星であった。 IRAS 二色図 図2に IRAS 二色図を示す。25 個の新発見天体のうち 9 個は TTS 枠内 にあり、 7 個は Meyers et al 1987 の分子雲コア天体と似たカラーを持つ。 位置精度 IRAS の RA 精度は Taurus-Auriga では 10 - 40 arcsec である。 そこで、MMT NIR 観測により、位置の再決定をした。結果は表1に 示した。フラックスも ADDSCAN で再計算し、表1に載せた。 Harris, Clegg, Hughes 1988 との比較 Harris, Clegg, Hughes 1988 は IRAS を用い、可視で同定済みの TTS 12 個の FIR カラーを求めた。内、5個は Meyers et al 1987 と一致 している。また、一つは Haro 6-10 であり、もう一つは W UMa 系であろう。 残り 5 個は我々の探査でも引っ掛かり、少なくとも3個は前駆主系列星、 一つは銀河である。 我々の新IRAS 天体中 4 個は TTS 枠内にあるが、 Harrism Clegg, Hughes リストに載っていない。 |
![]() 図2.IRAS 二色図。破線枠= T Tau 星ボックス(Harris, Clegg, Hughs 1988). 星印=新しい IRAS 天体。黒四角=Meyers et al 1987 のコア天体。 白丸=フィールド星。十字=銀河。 NH3 IRAS 天体の幾つかは NH3 探査で引っ掛かっている。非常に赤い 04158+2805 は L1527 のアンモニアコアの位置にある。他の IRAS 天体も暗黒雲 L 1534 アンモニアコアと一致したり、反射星雲 IC 2087 と重なっていたりする。 |
b. 近赤外測光JHK 観測は MMT で行われた。結果を表2と図3に示す。 IRAS 天体の NIR カラーが晩期矮星、または T = 1000K - 3000K の黒体に近いことが判る。我々のサンプルの NIR カラーは TTS と区別できない。ただし、いくつかは極めて赤く、Meyers et al 1987 のコア天体と似る。 |
![]() 図3.J,H,K 二色図。実線=低質量主系列星(G - M 型)。破線=黒体。 星印=新しい IRAS 天体。黒四角=Meyers et al 1987 のコア天体。 白丸=T Tau 星。白四角=weak-line T Tau 星。 |
c. 可視スペクトルスペクトル型の決定可視観測が可能な IRAS 天体の低分散(10 A)スペクトルを撮った。 幾つかは、銀河であった。残りの多くは低質量 TTS か Ae/Be 星の 特徴を示す。スペクトル型は Jacoby, Hunter, Christian 1984 の スペクトルアトラスと眼視比較で決めた。 連星 幾つかは可視星位置が 2″ - 4″ 赤外位置とずれている。可視+赤外連星は表3に示した。 ![]() 図4.新発見 IRAS 天体の A-型及び F-型スペクトル。内3つには Hα 輝線があり、前駆主系列星と思われる。 |
A - F-型スペクトル Taurus と Perseus を結ぶ雲の方向にある4天体は 図4 に 示すように A-, F-型スペクトルを示す。その3つには Hα 輝線がある。 TTS スペクトル 他の TTS スペクトルを図5に示す。 ![]() 図5.新発見 T Tau 星の可視スペクトル。04158+2805 の λ6300 [OI] 線は多分本当。 |
3.a. SED, 分類、と光度クラス分類Lada のクラス分類は α = dlogλFλ /dlogλ に基づいている。 クラス I α > 0 (λ = 1 -2 μm) 通常可視では見えない。 落下ガスで覆われた天体 クラス II 0 > α > -1. でかなり平坦。 TTS 型スペクトル 赤外超過フラックスは星周円盤から来る。 クラス III α ∼ -3 レーリージーンズ型テール。 SED 図6、7にそれらの SED を示す。おおよそ α の順に並べてある。 Lada クラス分類は表4に載せた。図7の 6 個の SED は Meyers et al 1987 に示された深く埋もれた天体と似ている。そして 04368+2557 はアンモニア コア L 1527 と場所が一致している。第2章で述べた輝線天体 04158+2805 の SED も α > 0 である。したがって計7個のクラス I 天体が新たに 発見された。その内6個は上に述べた通り可視では見えない。可視スペクトル で TTS とされた星の残り 9 個はクラス II である。内 3 つは Perseus, 他の 6 個が Taurus-Auriga 領域にある。 変な SED 04185+2022、04356+3159 銀河。 04264+2433、04302+2247 TTS と 埋もれた天体の中間。しかし、04264+2433 に輝線はないので より高精度スペクトルかアンモニア観測が必要。 03580+3135 可視, NIR スペクトルは強い赤化を受けた F-型星だが、FIR は 埋もれた星の SED を持つ。二種類の天体の重なりかも知れない。 以上から SED が変な天体は前駆主系列星とは見なせない。これらはこの先 の議論から落とす。 |
![]() 表4.光度と SED クラス分類 色々な光度 表4には光度を載せた。LNIR は JHK+[3.4]データの 台形和である。LIRAS は Emerson 1988 の方法で求めた。 3.4 - 7 μm は間隙部になるが直線でつないで総光度 L1.25-135 を出した。 総光度 L1.25-135 表4を見ると、総光度 L1.25-135 = 0.4 - 4 Lo で、 降着光度として期待される 10 - 50 Lo より低い。135 μm の先からの 寄与が最大と思われる 04368+2557 でもその補正で 1.6 --> 2.5 Lo に なる程度である。SED ピークが 100 μm より先にある、つまり温度が 30 - 40 K より低ければ、今回の光度評価が過小という可能性もある。しかし、 これまでの観測ではピークは 100 - 160 μm に存在する。 |
3.b. Taurus 前駆主系列星の光度α ∼ 0 の平坦 SED 天体図8にクラス I, II 天体の光度関数を示す。α ∼ 0 の平坦 SED 天体 が可視 TTS の中にある。これらは深く埋もれたクラス I 天体と典型的 TTS 星の中間にあると考えられる。これらを クラス I に入れても II に入れても 光度関数はそれほど変わらない。 探査の完全度 議論の後、 L > 0.5 Lo では完全! 他天体の混入と同定違い IRAS ビームが大きいために、source confusion と duplicity が問題となる。 Rucinski 1985 の IRAS TTS 観測データの収集では 20 % が近くの明るい星で 同定間違いを引き起こしていた。 |
![]() 図8.クラス I, II 天体の光度関数。上:Taurus-Origa. 下:Ophiuchus |
図8を見ると L > 0.5 Lo, つまり探査が完全と考えられる光度、で
埋もれた天体種族の数は TTS 種族の数より小さい。モデルでも降着期間
は TTS 期間より短い。しかし、観測された埋もれた天体光度は TTS 光度
とあまり変わらない。これはモデルと大きく異なる点である。
4.1.埋もれた時期の長さTaurus-Origa 域の天体数a クラス I (α > 0)が 18 個。"平坦"(α ∼ 0)が8個 b クラス II TTS が 59 個。τTTS∼106 yr. c クラスIII WTTS が 20 個。WTTS の年齢 ∼ 106 yr. WTTS の探査は不完全なので、実数は TTS とほぼ同じであろう。 d b, c から L > 0.5 Lo 前駆主系列星の数は 100 - 140 個となる。 e (埋もれた天体/前駆主系列星)∼ 0.1 - 0.2 寿命評価 TTS 期間を τTTS ∼ 106 yr とすると、 τemb ∼ (1-2) × 105 yr となる。 モデル 上の寿命はモデル計算とも大体合っている。問題は光度。 |
4.2.光度と降着率降着率の見積もりクラス I のエネルギー源が降着、クラス II はコアの収縮と重水素燃焼 と看做されている。降着光度は L = G*M*(dM/dt)/R で与えられる。 L = 0.3 Lo (図8のクラス I 光度関数ピーク) M = 0.1 Mo (星になる最低質量) R = 1 Ro (前駆主系列星の 0.1 Mo "birthline" Stahler 1988) を仮定すると、dM/dt ∼ 10-7 Mo/yr となる。 モデルとの乖離 上の値を求める際にはコアの収縮や重水素燃焼の寄与を無視したから、 10-7 Mo/yr は降着率の上限を与えていると看做せる。これは モデルの与える値の 1 - 2 桁小さい値である。 円盤? この値は、可視 TTS で円盤への降着率として求められた値に近い。 計算式が意味するのはコアへ落ち込む率であり、これはもし物質が コア半径よりずっと大きい位置、例えば星周円盤、に一旦落ちるなら、 その時の割合とは異なってもよい。 |
数の比 (埋もれた星/TTS) ∼ 0.1 - 0.2 光度関数 埋もれた星の光度関数は L ∼ 0.5 Lo にピークを持つ。 |
降着率問題 典型的な値から概算で求めた降着率は 1 - 2 桁小さすぎる。 解決案 バースト的な降着が短時間に生じ、今回の小さなサンプルでは引っか からなかった。または、TTS 期にも降着が生じている。 |