タイプ II OH メーザー感度限界サーベイで発見されたメーザー源の赤外対
応天体を探した。
(候補選択基準が書いていない。 ) 赤外源は全体として非常に赤く、多くは K-L > 7 である。 (OH 光度)/輻射光度 の比は K-L に伴って上昇する。 OH ピークの速度差 ΔV は輻射光度と相関する。光度が上がると ΔV も大きくなる。 低 ΔV 天体の光度は < 104 Lo である。 | これ等の星は 1 Mo AGB 星が Teff = 2500 K で基本振動しているというモ デルと合う。M 超巨星で典型的な、低 H2O, 高 CO 吸収帯を持つ OH/IR 星は、大きな ΔV と高い L を示し、それらが極端種族 I の M 型超巨星であるという同定と合う。低 ΔV. 低 L 天体は 吸収帯強度がミラ型星の典型値を取る。 驚くべきことに、いくつかの高 ΔV と高い L 星がミラ型星のような 吸収帯強度を示す。これは、以前知られていなかったほど低温で希薄な大気 を持つ M > 5 Mo 星の存在を意味する。 |
OH メーザーの発見後、銀河面 1612 MHz サーベイは多数のメーザー源の存 在を明らかにした。Jones et al 1981 はメーザー源とその位置付近で見つか る赤外源との偶然の一致の確率を調べた。彼らによると、電波源位置に ±15" のエラーがある場合には、背景星との偶然の一致の可能性は無視 出来ない。この論文では、 OH/IR 星の多くの赤外対応天体を観測し、背景星の 混入に関して統計学的解析を行う。 |
OH メーザー発見後10年経ち、いくつかの疑問が残る。 (1)感度限界 OH サーベイで見つかったメーザー源は近傍の OH/IR 星と同種? 電波サーベイで発見された天体の固有光度が分かった例はほんの数個で、スペク トル型は不明である。赤外観測から ΔV > 31 km/s 星を超巨星、 ΔV < 29 km/s 星をミラ型星に同定できるだろうか?赤外と電波の性質 はどう相関するだろうか? |
2.1.探索手続き表2は 1975 - 1981 年のデータである。観測は AAT 4m と IRTF 3m で行わ れた。(候補選択基準が書いていない。 ) 電波源位置は ±15" の誤差を含む。赤外観測で位置が改善された 天体を表1に示す。 2.2.基礎データ表2=基礎データ表2の位置は赤外観測の結果で誤差は ±5" である。第4列の Δ は電波と赤外の位置の差を秒角で示す。[3.8] は L' バンドを意味する。いくつ かの天体では 2.09, 2.2, 2.34 μm 狭帯域フィルター観測を行った。第11 列の H2O 指数 = [2.2]-[2.1] である。CO 指数 = [2.2]-[2.3] は 第12行に載せた。これ等の指数は 2.2 μm 連続光に対して 2.1, 2.3 μm 吸収強度を示す。吸収が強いと指数がマイナスで大きくなる。2 - 2.5 μm CVF 観測のあるもの、 Glass 1978 との位置が異なる星はノートでマークした。 表3=星毎の固有特性 表3には星毎の固有特性を示す。第2列=論文1で定義した Confusion Factor で探索領域=大体半径15" 円内にある IR 天体と同じか明るい天体の数の予想値。 CF > 0.2 だと同定は仮と看做す。 |
![]() 表1.改良されたメーザー源位置 |
![]() 図1.341.12-0.00 の 2 μm スペクトル。H2O, CO 吸収帯が見 える。実線=吸収強度決定用の仮想連続光。 直接法 ここで扱ったような赤い天体では連続光勾配の影響が強くなり過ぎる。 そこで指数の決定には工夫が必要である。図1の縦軸=λ4 Fλ に対して図の直線に対して、 2.09, 2.34 μm での 吸収深さが直接測定できる。 |
![]() 図2.353.60-0.23 の 2 μm スペクトル。実線= 450 K BB. 黒体法 もっと赤い天体に対しては図3のように、 2.15 - 2.25 μm 部と K-L に 合うように黒体をフィットする。この黒体に対して、バンド強度を定義する。 注意すべきは、 CO バンドはダストシェル輻射である程度埋められているので、 実際のバンド強度は測定値より強い。短波長側の H2O バンドは CO 程ダストシェル輻射の影響を受けない。 |
![]() 表4.追加観測 ![]() 表5.追加指数 CVF が無いが K,L はある時 図3にはその他の天体の CVF スペクトルを示す。しかし、多くの天体では スペクトルが得られていないので、連続光部が決められない。それらの天体 に対しては、まずゼロカラーに対応する A0 星連続光 (Fλ ∝ λ-3.8) を差し引く。次に K-L カラー温度 に対応する黒体輻射に対してカラー指数を決める。 例 例えば、 328.7-0.2 では、観測 [2.2]-[2.1] = -0.74 だが、AO 星の指数 0.21 を差し引き後は -0.53 である。一方、 BB(830K) の F(2.09)/F(2.2) = 0.83, つまり 指数 -0.20 である。したがって、H2O 指数 = -0.33 である。この他、327.4-0.1 と 328.4-0.2 は CVF とスペクトルと狭帯測光の どちらもがあり、二つの補正指数は良く合っている。一方、327.4-0.6 も二種 のデータが揃っているが、こちらは二つの指数の一致は良くない。ただ、この 天体では指数自体が非常に大きいので不一致は論文の結論に影響しない。 表4=有名 OH/IR 星 有名 OH/IR 星の狭帯測光を行ったので、それらのバンド指数を表4に示す。 第2列には星が SG=超巨星、CM=古典ミラ、VM=ミラ的変光星かを示す。 Hyland 1974 Galctic Radio Astronomy か Stellar Infrared Astronomy のど ちらかを見よ。 (この分類基準が結局何なのか、書いていない。) 表5=文献 2 μm スペクトルからのバンド指数 幾つかの OH/IR 星の 2 μm スペクトルを用いて求めたバンド指数を表5に示す。 |
![]() 図3.赤外天体の 2 μm スペクトル。 |
表3の OH 関係データ 表3の第6列= OH ピーク間隔 (km/s), 第7列=近運動距離、第8列= Mbol. 第9列=MOH の定義は MOH = -2.5 log[(S1+S2) d2] ここに、 S1(Jy), S2(Jy) = ピーク強度、d(kpc) = 近運動距離。 |
変光の効果 赤外観測と OH 観測は同時期でなく、どちらも変光するので、両者の比較は 一般的傾向を見るという意味になる。しかし、明らかに両者に相関はある。 |
![]() 表6.対応星が見つからなかった OH/IR 天体。 同定困難な星 表6には探査領域の限界等級内で対応が付かなかった天体を載せる。これら 8 星に、同定リストには載っているが混入ファクターが大きい星の数を加える と、予想より大分大きくなる。表7には背景星の数が多くて、どれが最も 合うかが決められなかった星を載せた。 |
![]() 表7.近くにある星、紛らわしい星 |
![]() 図4.幾つかのサンプル星の JHK カラー。黒丸= CF<0.1 で同定が確実。 白丸=CF=[0.1, 0.2] でやや同定が怪しい。VY CMa は + 印、IRC-10529 は X 印。実線=星間赤化。点線=黒体。 |
![]() 図5.HKL(L') カラー図。印の意味は図4と同じ。 サンプル星の大部分は赤化線の右側にあり、赤外超過の存在を示唆する。 (原点は? ) HKL カラー図では黒体線に集まる傾向が見られる。 |
![]() 図6.BCL = L バンド輻射補正の L-M 依存性。 光度 L の計算法 近運動距離と SED とから光度 L が分かる。SED が無い場合は輻射補正を 用いる。図6に (L-M) に対する BCL を示す。(L-M) = [0, 1.3] では BCL の振る舞いは規則的で平均 3.7 である。その先赤い 方では下がる。(L-M) = 2.5 までは BCL は 3 以上である。残念 なことに全ての星で L-M が得られるわけではない。その場合は K-L を用いる 必要がある。K-L < 4 では BC = 3.7, K-L = {4, 7] では BC = 3, K-L > 7 で BC = 2 とした。 図7= OH ΔV と Mbol の関係 図7には ΔV と Mbol の関係を示した。距離には近運動距離を採用 している。その特徴は、 (1)ΔV が大きくなると Mbol は明るくなる。 (2)約半数は 104 Lo 以下である。 図8=ΔV によるグループ分け 上の特徴は図8で ΔV によるグループ分けを使った光度ヒストグラム にも良く現れている。ただ、これらの特徴は統計的意味での傾向である点を 注意する。天体によっては遠運動距離にあったり、非円周軌道をしていたり、 観測時期が変光の平均値からおおきくずれていたりするだろう。 |
![]() 図7.表3からの Mbol - ΔV 関係。黒丸、白丸は図4と同じ。 ![]() 図8.図7の天体の絶対輻射等級ヒストグラム。サンプルは ΔV > 34 km/s と ΔV > 34 km/s の2グループに分けた。破線は confusion の強い天体。 |
図9には H2O 指数と CO バンド強度の関係を示す。 図から分かるように超巨星とミラ型星が区別される。 |
![]() 図9.H2O と CO バンド強度の関係。プラス= IRC 超巨星。バツ = IRC ミラ型星。四角= WX Ser =古典的ミラ。三角=表5の EB 天体。 点線=この論文で提案する超巨星とミラ型星の分離線。 |
![]() 図10. 1612 MHz OH メーザー絶対等級(表3で使用)と Mbol の関係。 三角= EB 天体。 |
![]() 図11.メーザー光度/輻射光度 と輻射等級の関係。SG とした点線領域= IRC 超巨星の存在領域。 VM とした点線領域= IRC ミラ的天体。 |
近運動距離の正否 OH/IR 星の IR 同定と近運動距離から導いた光度の多くは 10,000 Lo 以下で あった。 Baud (1981) によると、高ΔV 群は速度分散が小さく、距離の選択に誤り は少ない。この群には低光度星が少数含まれている。一方、低ΔV群の速度 分散は大きく、運動距離の採用に疑いが強い。 (同じ方向の視線速度距離により変 わるが、各点での速度分散とどう分離するのか分からない。) しかし、運動距離の採用が系統的に光度を下げるように働くことはないだろう。 |
低光度の OH/IR 星 従って、多くの OH/IR 星は古典ミラの周期光度関係の外挿値よりも低い光度 を持つという結論から逃れられない。 (周期光度関係の外挿の話はここで いきなり出て来たのではないか?表には周期データは載っていない。) この後、低温度が達成可能かとか、Q の式の話とか、ごたごた書いてあるが、 数字無しの議論で、怪しげなので略。 |
![]() 図12.(MBOL-MOH) - (K-L) 関係。(MBOL -MOH) がより正になることは、ポンピング効率が高いことを意味する。 点線=異常に青い天体。 IRC メーザーは光度関数の低光度サンプル OH メーザーサーベイで見つかった OH/IR 天体の銀経分布と視線速度特性は それらが太陽から遠方にあることを示唆する。Johnson et al 1977b は平均と して、遠方 OH/IR 星のメーザー強度が IRC ミラ型星に同定される高銀緯電波 源に比べ約百倍明るいことを見出した。Baud 1978 Thesis による電波光度関数 は低光度側で急激な上昇を示す。従って、太陽近傍の IRC サンプルはこの低光 度部に属するのではないか?高光度メーザーは稀なために太陽近傍に存在しな いのであろう。 図13=赤い星はメーザー効率が高い この論文で示す OH/IR 星は IRC 天体より赤外カラーが赤い。OH メーザーが FIR 光でポンプされるなら、赤い天体は FIR が強いので納得の結果である。 図12には、(MBOL-MOH) - (K-L) 関係を示す。赤い星 ほどメーザーポンピングの効率が高いことが分かる。 図13=色々なサーベイの天体の関係 図13には OH サーベイで発見された天体と、AFCRL 天体、古典ミラ、IRC 超巨星の関係を示す。 IRC 巨星は Mbol が不明でプロットできなかった。様々 なサーベイがそれぞれの限界内でどのような天体をピックアップするかが分かる。 |
![]() 図13.色々なカテゴリーの天体の比較。黒点= ここの OH/IR 天体。三角= 古典ミラ (Engels 1979). 四角= AFCRL 天体。六角=IRC 超巨星。IRC ミラ的 天体は光度不明なためここに載せられない。 ![]() 図14.L = 104 と仮定した時の IRC ミラ的変光星の Z 分布。 実線=スケール高 300 pc 指数関数型分布。 図14=IRC ミラの Z ヒストグラム IRC ミラの光度は分からないが、仮に 10,000 Lo とした時の銀河面高度 Z のヒストグラムを図14に示す。図の実線は高度スケール 300 pc のモデルである。 この値は古い円盤種族の 1 - 2 Mo 星に対応する。 |
OH 強度に対して異常に青い4つの星 図12の左下隅にある4つの星、20.7+0.1, 27.6-0.9, 31.0-0.2, 42.6+0.0 は他の OH/IR 星と離れた場所を占めている。なぜ、この位置にあるかの解釈は 困難である。同定ミス、近くの青い星の光の混入もあり得る。 |
本当ならば 近赤外によるポンピング、円盤に囲まれていて星本体が見える等の可能性も 考えられる。 |
表8=低 CF 星のリスト OH/IR 星に関し整合する解釈が得られたので、狭帯域カラーと 2 μm スペクトルに対してもこの解釈を広げられるだろう。表8には紛れ込みの 可能性 CF が少なく、狭帯域カラーと 2 μm スペクトル が揃った 13 星 のリストを示す。 一般に SG タイプ天体は超巨星という同定に合っている。 低 CF SG天体は皆 ΔV > 29 km/s で、35 km/s より小さいのは 354.88-0.54 の一つだけである。 Mbol が計算された 6 天体では全て、 Mbol ≤ -4 であった。4つは Mbol < -6 である。このように、CO 吸収 があり、 H2O 吸収が弱いかそこそこの天体は明るい極端種族 I ("SG" の分類の根拠と上げられた ΔV、Mbol, CO, H2O との関係が書かれていない。2.c.に Hyland 1974 Galctic Radio Astronomy か Stellar Infrared Astronomy を見よとあるが。未見。 ) VMタイプ VM タイプの場合は SG タイプほど単純でない。それらの光度は 103 - 105 Lo に亘る。ΔV = 19 - 46 km/s である。表7の 低 ΔV, 低 L 候補は、古い円盤種族の LPV という分類に合致する。高 ΔV, 高 L 候補の解釈は難しい。しかし、おそらく超巨星の中には非常な 低温大気を有し、強い水蒸気吸収を示すものがあるのだろう。VY VMa はかなり 強い水蒸気吸収を示し、また McGregor, Hyland 1981 は LMC に Mbol = -7.6 で 強い水蒸気吸収を持つ星 #6 を見出した。 L 大の星は2種類 恒星モデルの立場からは、L 大の低温度星は次の2つである。 (1)Mi > 9 Mo で、非縮退ヘリウム燃焼核を持つ星。ただ、現在のモデル では超巨星の有効温度を 2500 K までは下げられない。SMRの可能性はある。 (2)Mi ≤ 9 Mo で縮退核を持って AGB 先端に達する星。ΔV が大 きくなるには Mi > 5 Mo が必要であるから、結局 Mi = [5, 9] Mo である。 |
![]() 表8.2μm スペクトル型 このようにして、5 - 9 Mo AGB 星と 1 - 2 Mo AGB がタイプ II OH/IR 星 になるなら、2 - 5 Mo ミラが OH/IR にならないわけがあろうか? この後、中間質量 AGB 星と ΔV = 26 - 31 km/s OH/IR 星の関係が 難しく論じられていて良く分からない。 |
低ΔV グループ ΔV < 34 km/s 星の大部分は、近運動距離を採用すると、L < 104 Lo となる。これは、ミラ型星の質量を 2.5 Mo へ外挿した 値より低い。これら、低光度、低ΔV グループは、それらが 1 Mo と 低質量で、 Teff = 2300 K と低温で基本振動していると考えると納得である。 運動学と光度はそれらが古い円盤種族 1 - 2 Mo AGB 星という考えに導く。 それらは 2 - 5 Mo の中間質量星ではない。 SGタイプ 高ΔV, 高 L で、弱-中強度の H2O と、中 - 強強度 CO 吸収という超巨星の特徴を持つ。M > 9 Mo であろう。 |
タイプ VM I 低 L, 低ΔV で強い CO, H2 吸収を持つ。古典的ミラと IRC ミラ的変光星のグループである。円盤種族 AGB 星で 1 - 数 Mo であろう。 タイプ VM II VM I より L 大、ΔV 大である。CO, H2O 吸収はミラ的 である。これらの星は 5 - 9 Mo の AGB 星であろう。VM I から VM II への 特性は M, L, ΔV の連続的変化を示す。 ( それで、 2 - 5 Mo はどこにみつ かるのか、良く分からないまま。) |