パロマー 1.5 m 鏡カセグレン焦点で 44 PNs の深い CCD Hα 撮像を 行った。分解能は 1" - 2", 視野は 400" である。観測した PN の 2/3 で ハローが撮れた。 | 電離硫黄電子密度測定から幾つかのハローの質量は主電離領域と同じくらい の質量を有することが分かった。 |
ハローとは 多くの PNs は楕円リング状に見える。それらは幾何学的に薄い楕円体形状の シェルとして解釈される。幾つかの星雲では、主電離域の外側に淡い広がりが 見える。 反射? NGC 7027 に関し、Atherton et al 1979 はハローが反射星雲であると考えた。 Kwok, Purton, Fitzgerald 1978 はハローを前駆赤色巨星から逃れて行く星風 が照らされていると考えた。 |
論文の目的 ハローは星雲の総質量を決める上で重要な成分である。また、星間空間での 質量収支を考える上でも大事である。しかし、ハローの同定例は少ない。 ハロー出現率は? そこで、ここでは PN のランダムサンプルを観測し、ハローの出現率を 測ることにした。 |
2.1.観測装置観測はパロマー 1.5 m 鏡カセグレン f/8.75 焦点で行われた。幾つかの 天体は 5 m 主焦点 f/1.4 で行われた。表1に観測をまとめた。2.2.画像サンプルサンプルは次の基準で Perek, Kohoutek 1967 から選んだ。 (1)RA1950 = [16h00m, 24h00m], Dec1950 > -25 (2)星雲の長径=[10", 200"] 長径上限は画像からはみ出ないためだったが, NHC 6543 はハローがはみ出て しまったのではずした。 (これはキャッツアイ。大きいリストが欲しい。) フィルター フィルター中心波長= 6560 A, FWFM = 98 A. 露出時間= 1200 s. 偏光観測 二つの PNs では偏光シートを置いた撮像を行った。絶対較正はせず、周辺星をゼロ偏光 の基準に用いた。 |
![]() 表1.観測ログ 2.3.低分解スペクトル電子密度[SII]6716A/[SII]6731A から電子密度を調べる目的で、低分散スペクトルが 撮られた。分散は 4.3 A/pixel で [4300, 7100] A である。 |
3.1.狭帯フィルター画像形状パラメター図1に 44天体の HI;[NII] 画像を示す。 得られた画像は複雑で容易に分類できない。まずは以下の基礎量を得る。 a, b : 半長軸と半短軸の長さ。10 % 等高線(主星雲)に楕円フィット。 p, q = 半長軸と半短軸の長さ。ハローの縁の等高線に楕円フィット。 φ : 10 % 等高線楕円長軸の位置角。 ep, eh : 主星雲とハローの離心率。 Rp=(ab)1/2, Rh=(pq)1/2 : 主星雲とハローの平均半径。 |
不規則性の原因 丸いハローの例は、69-2.1, 83+12.1, 106-17.1 である。不規則又はフィラ メンタリーなハローは 2+5.1, 8+3.1, 85+4.1 である。不規則性の原因が 実際にハロー物質分布を反映=2density bounded" か電離輻射が内側光学 的深さの非一様性による="radiation bounded" かはまだ不明である。影 説の例は 41-2.1 と 88-1.1 で、主星雲の淡い方向はハローの明るい方向に 一致する。その反対は 33-6.1, 64+48.1, 106-17.1 だろう。 |
![]() 図3.Rh/Rp の分布。 図3= Rh/Rp の分布 図3に Rh/Rp の分布を示す。平均は 2.1 である。離心率の平均は、ep = 0.57, eh = 0.54 で、有意な差ではない。表面輝度の比は Ih/Ip = 10-3 - 0.1 で大きな変動を示す。 |
![]() 図4.実線=長軸と銀河面との角度の分布。破線=長軸が空間内ランダムに向 いていた場合の分布。 図4=長軸と銀河面との角度 図4は、長軸と銀河面との角度の分布を示す。観測分布はランダム分布から きたされるものと矛盾しない。 |
図5=輝度の動径方向の変化 ハローの大部分の形は不規則で、平均輝度の動径方向変化を議論できない。 図5にはほぼ丸い星雲の方位角平均輝度の動径方向の変化を示す。輝度が 急激に低下することが分かる。 ループフィラメント 多くのハローにループフィラメントが見える。その例は、図1からは、 2+5.1, 33-6.1, 68-0.1, 89+0.1, 103+0.1, 120+9.1。 図2からは、 8+3.1, 9+14.1, 63+13.1, 83+12.1 である。 3.2.偏光63+13.1 と 64+48.1 に対しては、直交する偏光板を使って撮像観測が行わ れた。偏光度 POL < 0.05 が得られた。少なくとも大きな偏光はない。3.3.可視スペクトル電子密度を調べる目的で [SII]6716A/[SII]6731A を測った。ラインが弱いので 多くの天体では、スリットに沿って、大体10" 巾、平均スペクトルを使用した。 空間未分解の平均電子密度を表3に示す。 |
![]() 図5.丸い星雲の方位角平均輝度の動径方向の変化。縦マーク=主星雲と ハローの境界。傾き -4 と -5 を比較のため描いた。 |
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1.散乱光モデル ハローは普通の反射星雲のような星間ダストの散乱光と考える。Atherton et al 1979 は NGC 7027 のハローをこの考えで説明した。幾つか観測と合わない 点がある。 (a) ハローの可視スペクトルが主星雲スペクトルと合わない。ダスト散乱断面 積はグレイに近く、スペクトル差を産み出すのは難しい。 (b) 63+13.1, 64+48.1 の偏光観測はHα 線偏光 POL < 0.05 を示す。 通常反射星雲では POL = [0.05, 0.15] である。 (c) 星間ダスト雲が偶然遭遇したとするにはハローが多すぎる。 (d) ハローに見えるフィラメントのパターンは反射星雲と違う。 2.星風の励起 LPV では dM/dt ≤ 10-5 Mo/yr のマスロスを行っている。 星風が R = 0.5 pc まで広がった時の密度は Nw < 4 cm-3 である。 ( マスロス dM/dt = 10-5 Mo/yr, V = 10 km/s で R pc まで広が った時の H 数密度を計算する。 X = 0.7 として、1年で N = 0.7 10-52 1033/ (1.67 10-24) H/yr = 8.4 1051 H/yr. 厚みは 106 3.1 107 cm = 3.1 1013 cm. 表面積は 4π (3.1 1018R)2 cm2 = 1.2 1038 (R/pc)2 cm2. 1年分の体積は 3.7 1051 R2 cm3 数密度は (8.4/3.7) (R/pc)-2 cm-3 = 2.3 R-2 cm-3 上と少し違う。速度を 1 Mo, 1000 Ro での脱出速度にしているせいかも ) この星風密度を表3の電子密度と比べてみよう。ハローフィラメントでの 密度は大体、Ne = 103 cm-3 である。フィラメント が平均より一桁高密度としても星風密度とはまだ一桁差がある。 したがって、明らかに星風の励起でハロー放射光を産み出すことはできない。 しかし、マスロス率が 10-4 Mo/yr ならば可能かも知れない。 ( それに密度は R-2 で変化するから、ハロー内側は電離 Ne に 達する。 ) 3.星間物質の励起 星間空間では密度が 1 cm-3 なので、励起は考えられない。 |
4.距離に比例する速度 Mathews (1966) は周囲の真空との圧力勾配による力学作用で、主星雲から 分離し、 V ∝ R の加速を受けるハローを考えた。一定マスロスを 仮定して Ne(R) ∝ R-3 となる。 電子温度一定を仮定すると、表面輝度 B = α(Te)NeNeL ∝ R-5 となる。図5のハローの表面輝度変化と比べると、なかなか 有望な仮説であることがわかる。ハローの加熱率が決められないのが 弱点であるが、今後の観測で解決するだろう。 |
1.29/44 でハロー ランダムに選んだ 44 PNs の内 29 PNs にハローがあった。 2.ハロー半径 Rh/Rp = [1.1, 5] で平均2である。 3.長軸の空間の向き 長軸の3次元空間での向きはランダムである。 |
4.電子密度 平均電子密度は Ne = 102 cm-3 で、主星雲の 一桁下である。ハロー中のフィラメントの密度はその 7 倍。 主星雲とハローの質量はほぼ等しい。 ( Ne とハロー体積からハロー質量を 決めている。) 5.成因 ハローの光がダストの散乱光はありそうにない。主星雲から力学的な 分離が起きたのではないか。 |