Halos around Planetary Nebulae


Jewitt, Danielson, Kupferman
1986 ApJ 302, 727 - 736




 アブストラクト 

 パロマー 1.5 m 鏡カセグレン焦点で 44 PNs の深い CCD Hα 撮像を 行った。分解能は 1" - 2", 視野は 400" である。観測した PN の 2/3 で ハローが撮れた。  電離硫黄電子密度測定から幾つかのハローの質量は主電離領域と同じくらい の質量を有することが分かった。


 1.イントロダクション 

 ハローとは 

 多くの PNs は楕円リング状に見える。それらは幾何学的に薄い楕円体形状の シェルとして解釈される。幾つかの星雲では、主電離域の外側に淡い広がりが 見える。

 反射? 

 NGC 7027 に関し、Atherton et al 1979 はハローが反射星雲であると考えた。 Kwok, Purton, Fitzgerald 1978 はハローを前駆赤色巨星から逃れて行く星風 が照らされていると考えた。
 論文の目的 

 ハローは星雲の総質量を決める上で重要な成分である。また、星間空間での 質量収支を考える上でも大事である。しかし、ハローの同定例は少ない。

 ハロー出現率は? 

 そこで、ここでは PN のランダムサンプルを観測し、ハローの出現率を 測ることにした。

 2.観測 

 2.1.観測装置 

 観測はパロマー 1.5 m 鏡カセグレン f/8.75 焦点で行われた。幾つかの 天体は 5 m 主焦点 f/1.4 で行われた。表1に観測をまとめた。

 2.2.画像 

 サンプル 

 サンプルは次の基準で Perek, Kohoutek 1967 から選んだ。

(1)RA1950 = [16h00m, 24h00m], Dec1950 > -25

(2)星雲の長径=[10", 200"]

長径上限は画像からはみ出ないためだったが, NHC 6543 はハローがはみ出て しまったのではずした。
(これはキャッツアイ。大きいリストが欲しい。)


 フィルター 

 フィルター中心波長= 6560 A, FWFM = 98 A. 露出時間= 1200 s.

 偏光観測 

 二つの PNs では偏光シートを置いた撮像を行った。絶対較正はせず、周辺星をゼロ偏光 の基準に用いた。

表1.観測ログ

 2.3.低分解スペクトル 

 電子密度 

 [SII]6716A/[SII]6731A から電子密度を調べる目的で、低分散スペクトルが 撮られた。分散は 4.3 A/pixel で [4300, 7100] A である。


 図1.44 PNs の Hα + [NII] 画像 


左:スカイとピーク値の間の全シグナル。右:シグナルが下10%から作った画像。 10 % 超えは飽和シグナルとして扱われる。左は明るいピーク付近、右は淡い 部分を強調する。













 図2.44 PNs の Hα + [NII] 画像 


左:スカイとピーク値の間の下から 1 % から作った画像。 非常に淡い部分が強調されている。





 3.結果 

 3.1.狭帯フィルター画像 

 形状パラメター 

 図1に 44天体の HI;[NII] 画像を示す。 得られた画像は複雑で容易に分類できない。まずは以下の基礎量を得る。

a, b : 半長軸と半短軸の長さ。10 % 等高線(主星雲)に楕円フィット。

p, q = 半長軸と半短軸の長さ。ハローの縁の等高線に楕円フィット。

φ : 10 % 等高線楕円長軸の位置角。

ep, eh : 主星雲とハローの離心率。

Rp=(ab)1/2, Rh=(pq)1/2 : 主星雲とハローの平均半径。
 不規則性の原因 

 丸いハローの例は、69-2.1, 83+12.1, 106-17.1 である。不規則又はフィラ メンタリーなハローは 2+5.1, 8+3.1, 85+4.1 である。不規則性の原因が 実際にハロー物質分布を反映=2density bounded" か電離輻射が内側光学 的深さの非一様性による="radiation bounded" かはまだ不明である。影 説の例は 41-2.1 と 88-1.1 で、主星雲の淡い方向はハローの明るい方向に 一致する。その反対は 33-6.1, 64+48.1, 106-17.1 だろう。


 表2.星雲の性質 




(1) Perek, Kohoutek 1967 名。(2) 他の名前 (3), (4) 1950エポック (5), (6) lII,bII (7) φ 主星雲長軸の位置角。 (8) 長軸と銀河面との角度。(9) ハローありナシ (10) 距離。(11) 主星雲の タイプ。R=リング、I=不規則、C=中心集中型、B=双極型。


図3.Rh/Rp の分布。

 図3= Rh/Rp の分布 

 図3に Rh/Rp の分布を示す。平均は 2.1 である。離心率の平均は、ep = 0.57, eh = 0.54 で、有意な差ではない。表面輝度の比は Ih/Ip = 10-3 - 0.1 で大きな変動を示す。

図4.実線=長軸と銀河面との角度の分布。破線=長軸が空間内ランダムに向 いていた場合の分布。

 図4=長軸と銀河面との角度 

 図4は、長軸と銀河面との角度の分布を示す。観測分布はランダム分布から きたされるものと矛盾しない。


 図5=輝度の動径方向の変化 

 ハローの大部分の形は不規則で、平均輝度の動径方向変化を議論できない。 図5にはほぼ丸い星雲の方位角平均輝度の動径方向の変化を示す。輝度が 急激に低下することが分かる。

 ループフィラメント 

 多くのハローにループフィラメントが見える。その例は、図1からは、 2+5.1, 33-6.1, 68-0.1, 89+0.1, 103+0.1, 120+9.1。 図2からは、 8+3.1, 9+14.1, 63+13.1, 83+12.1 である。

 3.2.偏光 

 63+13.1 と 64+48.1 に対しては、直交する偏光板を使って撮像観測が行わ れた。偏光度 POL < 0.05 が得られた。少なくとも大きな偏光はない。

 3.3.可視スペクトル 

 電子密度を調べる目的で [SII]6716A/[SII]6731A を測った。ラインが弱いので 多くの天体では、スリットに沿って、大体10" 巾、平均スペクトルを使用した。 空間未分解の平均電子密度を表3に示す。

  

 

図5.丸い星雲の方位角平均輝度の動径方向の変化。縦マーク=主星雲と ハローの境界。傾き -4 と -5 を比較のため描いた。  





表3.電子密度の測定。Δα = スリット中央と中心星の RA 距離(arcsec)。Δδ = スリット中央と中心星の Dec 距離(arcsec)。L = [SII] ライン測定に使ったスリットの長さ(arcsec)。 スリットの向きは E-W である。r = (Δα2+ Δδ2)1/2. Rp = 主星雲半径。 Ne の計算には Te = 104 K を仮定した。

 図6:[SII]6716A/[SII]6731A と Ne のスリット位置に沿った変化 


ライン強度が強く、平均の必要がない PNs でのスリットに沿ったライン比変化。






 4.解釈 

 1.散乱光モデル 

 ハローは普通の反射星雲のような星間ダストの散乱光と考える。Atherton et al 1979 は NGC 7027 のハローをこの考えで説明した。幾つか観測と合わない 点がある。

(a) ハローの可視スペクトルが主星雲スペクトルと合わない。ダスト散乱断面 積はグレイに近く、スペクトル差を産み出すのは難しい。

(b) 63+13.1, 64+48.1 の偏光観測はHα 線偏光 POL < 0.05 を示す。 通常反射星雲では POL = [0.05, 0.15] である。

(c) 星間ダスト雲が偶然遭遇したとするにはハローが多すぎる。

(d) ハローに見えるフィラメントのパターンは反射星雲と違う。

 2.星風の励起 

 LPV では dM/dt ≤ 10-5 Mo/yr のマスロスを行っている。 星風が R = 0.5 pc まで広がった時の密度は Nw < 4 cm-3 である。
( マスロス dM/dt = 10-5 Mo/yr, V = 10 km/s で R pc まで広が った時の H 数密度を計算する。

X = 0.7 として、1年で N = 0.7 10-52 1033/ (1.67 10-24) H/yr = 8.4 1051 H/yr.
厚みは 106 3.1 107 cm = 3.1 1013 cm.
表面積は 4π (3.1 1018R)2 cm2 = 1.2 1038 (R/pc)2 cm2.
1年分の体積は 3.7 1051 R2 cm3
数密度は (8.4/3.7) (R/pc)-2 cm-3
= 2.3 R-2 cm-3
上と少し違う。速度を 1 Mo, 1000 Ro での脱出速度にしているせいかも )

この星風密度を表3の電子密度と比べてみよう。ハローフィラメントでの 密度は大体、Ne = 103 cm-3 である。フィラメント が平均より一桁高密度としても星風密度とはまだ一桁差がある。 したがって、明らかに星風の励起でハロー放射光を産み出すことはできない。 しかし、マスロス率が 10-4 Mo/yr ならば可能かも知れない。
( それに密度は R-2 で変化するから、ハロー内側は電離 Ne に 達する。 )


 3.星間物質の励起 

 星間空間では密度が 1 cm-3 なので、励起は考えられない。
 4.距離に比例する速度 

 Mathews (1966) は周囲の真空との圧力勾配による力学作用で、主星雲から 分離し、 V ∝ R の加速を受けるハローを考えた。一定マスロスを 仮定して Ne(R) ∝ R-3 となる。 電子温度一定を仮定すると、表面輝度 B = α(Te)NeNeL ∝ R-5 となる。図5のハローの表面輝度変化と比べると、なかなか 有望な仮説であることがわかる。ハローの加熱率が決められないのが 弱点であるが、今後の観測で解決するだろう。


 5.まとめ 

 1.29/44 でハロー 

 ランダムに選んだ 44 PNs の内 29 PNs にハローがあった。

 2.ハロー半径 

 Rh/Rp = [1.1, 5] で平均2である。

 3.長軸の空間の向き 

 長軸の3次元空間での向きはランダムである。
 4.電子密度 

 平均電子密度は Ne = 102 cm-3 で、主星雲の 一桁下である。ハロー中のフィラメントの密度はその 7 倍。 主星雲とハローの質量はほぼ等しい。
( Ne とハロー体積からハロー質量を 決めている。)


 5.成因 

 ハローの光がダストの散乱光はありそうにない。主星雲から力学的な 分離が起きたのではないか。