アブストラクトLMC 6 領域の HST F814(∼ I), F555(∼ V) 撮像による V555 ∼ 26.5 に達する CMD を得た。測光の不完全性、測光エラー、連星、減光を考慮 して様々な初期質量関数で恒星進化モデルをフィットし、星形成史を導いた。CMD モデル化には Gallart et al が提案した「部分モデル法」を適用した。全ての 領域で、 τ ∼ 700 Myr の星形成中断が認められた。領域間の変化もあった。 LMC バー近くの 2 領域には、若い(τ < 1 Gyr)と古い(τ ≥ 10 Gyr) 星形成現象、それに 3 - 6 Gyr のはっきりした星形成中断が見られた。他の 2 領域 は非常によく似た星形成史を示した。そこでは τ ≈ 2 - 3 Gyr と 6 ≤ τ ≤ 10 Gyr に星形成率の増大が見られた。残りの 2 領域では星形成率は 一様で星形成の増加減少は見られなかった。 1.イントロ地上観測による LMC の星形成史星団 大部分は t < 4 Gyr, 少数が t > 10 Gyr, 一つだけが t = 8 Gyr (Mateo et al 1986) フィールド 外側の数フィールドでCMD解析から2−4Gyrに通常の 10倍の星形成率バースト。Bertelli et al 1992 |
HST による LMC 星形成史の研究 地上観測ではt>6Gyrの主系列に到達できない。 ――> HSTの利用 Gallagher et al 1996 WFPC2から過去数GyrはSFR=一定。2Gyrに短いバースト。 Holtzman et al 1997 同じデータ(バ―から4°)で LF を作り、 10 Gyr は SFR 一定。t < 2 Gyr 3 倍。 ――> 4 Gyr より若い星と古い星の数が大体等しい。 CMD に中間年齢星ターンオフを見出した。 Elson et al 1997 もっとバーに近い所の観測から 1 - 2 Gyr と 2 - 4 Gyrの成分を検出 ただし、正確な年齢はメタルで変わる。 Geha et al 1998 外側3箇所から、やはり4Gyrより若い星と古い星の数が大体等しい。 Olson et al 1999 バーではより定常的な SFH。Elson et al 1997 と異なる Holtzman et al 1999 バーストの証拠がない。フィールドと星団のSFHは違う。 この論文ではLMCから6°以内の6箇所のCMDからSFHを作る。 |
星団観測プログラムの一環として撮ったデータを使用。 NGC1805, 1818, 1831, 1868, 2209, Hodge11 付近 F814W(I)とF555W(V)を2枚づつ撮影した。 ![]() 2.1.サンプル選択ALLSTARで星を選択した。図1のNGC1818フィールド CMD を見ると以下の特徴に気付く。 (1)飽和はV555=18.5 (2)主系列がV555=26.5まで。 (3)ターンオフ=V555=22.5(t>10Gyr) (4)レッドクランプはV555=19、V555−I814=0.9 (5)CMD右の暗い星は赤色矮星 2.2.測光精度IRAF/PHOT taskの与える測光精度を採用。カラーの精度は σ(Color)2=σ(I)2+ σ(V)2 と決める。 2.3.サンプル完全性=C過去の研究ではC(V),C(I)としか求めていないが不十分である。 V の検出と I の検出は独立でない。 C(V−I,V)=C(V)*C(I)とするのは以上の理由で誤っている。 人工星の検出実験を(V−I,V)のメッシュ毎に行った。 何でカラーが影響するのか理解できない。定義が違うのかな? |
![]() 図1.NGC 2128 付近の星の CMD ![]() 図2.Hodge 11 付近のフィールド星の CMD。数字グリッドは C(V-I,V)×100 % 完全度を示す。 |
追加データ 数を増やすためCastero et al 2001 の7領域データを足した。 (1)Castero et al の方が露出時間が短いので飽和等級が明るい。 その結果V<19.5ではLFに超過が生じている。 (2)中間等級でも Castero et al のLFには系統的な超過が見られる。 フィールド間の違いは完全にランダムではないらしい。 (3)本論文のLFだけは検出率の補正をしているが、V<25では差がない。 C=100%に近いからであろう。 (4)CMDのRGBは本論文が0.05赤い。他の領域でもそうで多分焦点の 時間変化に伴うPSF変化が原因。 そんなことって本当にアリなのか?同じ望遠鏡でも違う測光システムの ように扱えってか? ![]() ![]() 図3.上:NGC 1831 付近の光度関数。 下:我々(白丸)とCasero et al(クロス)の CMD | で、2つのサンプルを共通の測光システムにするため Castero et al データの カラーを少しずらす。 その方法は、 (1)MSに沿う0.25等のビンで平均カラーを出す。 (2)つないで基準線を作る。 (3) Castero et al のI等級をずらして基準線が一致するようにする。 (4)RGBはI(Castero et al)を0.05ずらす。 (5)等級の調整後次のように統合した: (A) V<19.5 Castero et al を使用。 (B) 19.5<V<23.5 双方使用。 (C) 23.5<V Javiel et al 使用 統合データによるCMD 統合CMDにはV= 19.9 と 23.5 の切れ目で数が段になっているのが見える。 また、NGC1805 の RGB は太く、減光量が領域内で変化しているためであろう。 赤化ベクトルの向き(多分)にたなびいて見えるのが面白い。 Casterto et al が指摘した中間年齢ターンオフも見える。 と書いてあるがどれか不明。 ![]() 図4.追加データを合わせたデータセットによる CMD. |
4.1. 合成CMD合成 CMD を作るプロセスは以下の通り。(1)SFR(t) を一つ選ぶ。 (2)年齢―メタル量関係には星団から決めたOlzewski et al 1996 を採用。
(3)Girardi et al 1998 等時線を使用。 i番目の等時線からの貢献星数 Ntheo,i は、 Ntheo,i(τ2,τ2) = C ∫τ1τ2SFR(τ) ∫mmin(τ)mmax(τ)ψ(m) dm dτ ここにφ(m)はIMFでKroupa2003を採用した。 星団距離:DM(光学中心)= 18.5、円盤の i=45°、ノードライン=N−S (4) ランダムに選んだ星(質量m)に対して V,I を求める。 選び方は、0と1の間のランダム変数 r に対して以下の式でmを決める。 ∫mmin(τ)mψ(m) dm = r ∫mmin(τ)mmax(τ)ψ(m) dm dτ (5)連星ペアもfbinの確率で作る。 (6)赤化ベクトル (Av,E(B-V))を適用する。Av/E(B-V) = 3.1, Av は Castro et al を採用。 (7)星の位置をエラーのガウス分布でばらまく。 (8)星が観測CMD範囲外なら捨てる。 (9)CMDに組み込むかどうかは確率pを合併域ではp=C(V−I,V)、 単独域ではp=0.5・C(V−I,V)で決める |
![]() 図5.合成 CMD。 a)古い種族。明瞭な単一ターンオフ。水平枝。 b)中間年齢種族。レッドクランプ c)若い種族が支配的。主系列がV555<19まで伸びている。 d)中間年齢と古い種族の混合。レッドクランプ。 |
4.2.統計フィット=観測 CMD とモデル CMD との直接比較。比較方法= Partial Models Method (PMM, 部分モデル法)Gallart et al 1999 他の方法として、Hernandez et al 1999, Dolphin 2002 使いやすいから。 部分モデル法の説明 部分モデル= 部分的時間区間の間星形成率一定とした CMD SFR(τ)からの CMD は部分モデルの線形結合で表わされる。 i = 部分モデルの番号、j = CMD を区切った際の領域番号 Ni,j = i - 番目の部分モデルからの j - 番 CMD 領域への寄与。 ai = i - 番目の部分モデルの重み Nj = Σ aiNi,j = j-番目の CMD グリッド内の星の数
NO,j は CMD j - 領域内の観測された星の数、r は部分モデルの数。 l = 星の総数を合わせるための規格化定数。 χr-12 の許容範囲を以下のように定めた。 (χr-12)min < χr-1 2 < (χr-12min + 2σ S ここに、σS はこの先の文章は 理解できない。原文は " the standard deviation from (χr-1 2)min of 100 realizations comparing the best CMD (the solution that yields (χr-12)min ) to the observed CMD" r = 13 とした。これは、主系列、準巨星枝、赤色巨星枝を効果的に覆う数である。 図6はそうして決めた CMD 上の区分が示されている。図6の各パネルにはそれぞれ 二つの部分モデルが載せてある。それらの年齢区間は図の中に示されている。 部分モデルの大部分は若い種族だが、それは CMD の特徴が若い(1 - 6 Gyr)種族の ターンオフに対しては古い種族に対してより鋭敏だからである。 部分モデルの数を変えて実験を繰り返したが、8個がベストであった。 | ![]() 図6.8等時線から作ったモデル。CMD上に13点をとった。 各パネルには2つの期間区分が表示されている(らしい)。 |
![]() 図7.NGC 1805 と NGC 1818 5.1. NGC 1805 と NGC 1818最近 2 Gyr は星形成が活発化している。 NGC 1805 では 6 - 10 Gyr 昔に星形成 が中断した。 NGC 1818 では 2 Gyr 以前は比較的平坦で、6 - 10 Gyr の低下も あるかどうか微妙である。5.2. NGC 1831 と NGC 1868一様な星形成史を示す。NGC 1831 では 3 - 10 Gyr 昔が僅かに低く見える。 NGC 1868 周辺では全くそのようなことはない。NGC 1868 では 1 - 3 Gyr で 星形成が活発であった。5.3. NGC 2209 と Hodge 11両方共に 1 - 6 Gyr 昔に星形成率が増加している。特に NGC 2209 では、 1 Gyr 昔に星形成のピークがあり、その後星形成が抑えられている。 |
![]() 図8.NGC 1831 と NGC 1868 ![]() 図9.NGC 2209 と Hodge 11 |
5.4. ベスト解パラメターのテスト図10にはNGC 1818 フィールドで異なるパラメターを採用した場合の SFH の変化 が示されている。図から、採用 パラメターの変化による SFH の変動は比較的穏やかであることが判る。ベスト解パラメターは上パネルに記してある。表3では我々の得たパラメターを 以前の研究結果と比較した。 Castro et al 2001 の(m-M)oは彼らの円盤モデルに基づいている。彼らの赤化値は 等時線フィットから決められている。Santiago et al 2001 は LMC 星団の等時線 フィットから値を得ている。彼らの星団と我々のフィールドは近いので同じ赤化を 期待してよい。NGC 1805 野幅広な RGB は赤化の内部変化を予想させる。 表の値は良い一致を示している。例外は Hodge 11 フィールドの赤化で、Castro et al は非常に低い値を取っている。ただ、著者らもこれを怪しいと述べている。 ![]() | ![]() 図10.NGC 1818 フィールドで異なるパラメターを採用した場合の SFH の変化。 上:E(B-V) 実線=0.05, 点線=0.03, 破線=0.04 中:(m-M)o 実線=18.58, 点線=18.68, 破線=18.48 上:fbin 実線=0.5, 点線=0.75, 破線=0.25 |
領域間の差 場所間で SFH が異なっていた。 バーに近い NGC1805, 1818 領域はt<2Gyrに SFR 高い。6 - 10 Gyr で低い。 LMCの東側、NGC 2209,Hodge 11 では 2 - 6 Gyr にSFRが高い。 NGC 1831, 1868 では SFH が比較的一様。 ただ、星の拡散を考慮すると、得られた SFH は その場所で過去に起きた SFH ではないことを注意しておく。それにも拘らず、場所 間の変化があるのは混合が完全でないからであろう。 古い種族の存在 LMC種族に関しては時代と共に概念の変化があった。 80年代初頭ころまでの、若い星からなる(Butcher 1977,Stryker 1984)から、 90年代に Bertelli 1992 が 4 Gyr にバースト説を唱え、HSTにより古い、 中間年齢種族の星が続々発見され、Holtzman et al 1997 では 4 Gyr より古い星が 半分以上という結果を出した。 今回の結果はその延長上にあると言える。 ギャップ SFRにギャップが見つからなかった。6−10GyrでSFRが低下したのはバー に近いフィールドのみである。これは星団形成のギャップと矛盾する。 この点でここでは星団から求められたAMRを使用していることを注意する。 | ![]() |