The UKIRT M33 Monitoring Project - II. The SFH in the Central Square Kiloparsec


Javadi, van Loon, Mirtorabi
2011 MN 414, 3393 - 3409




 アブストラクト 

 UKIRT を用い、M 33 (μ=24.9) の NIR モニタリングを実施した。目的は 進化最終期に あり、光度から初期質量が分かる星を探し出すことである。この第2論文では、 初期質量関数を求め、そこから星形成史を導く。星形成率は 0.002 から 0.007 Mo yr-1 kpc-2 の間を変動する。 SFH には二つ のピークがあった。第1は ≥ 6 Gyr 昔で 星質量の 80 % 以上がこの時に 生まれた。 もう一つは 250 Myr 昔に 200 Myr 続いた星形成で、< 6 % の 星か作られた。  画像面と銀河面の両方に、動径分布と経度分布を、古い、中間年齢、若い種族 に対して描いた。古い RGB 星は楕円体分布を、若い星は平坦な円盤状 分布をすることを見出した。中間年齢星はバルジまたはバーらしきものを示す。


 2.インプットデータとモデル 

 2.1.変光星カタログ 

 2.2.進化モデル 

 パドヴァモデル 

 このモデルは post-AGB 進化までを含む。






図1.UKIRT カタログ星の CMD. 緑点=変光星。赤線= Marigo08 等時線。 log t = 10 は O-リッチダストのマスロス。log t = 9 は C-リッチダストで 両者の勾配が異なることに注意。J-Ks = 1.5 より赤い側では星周ダストの 赤化を含めている。白黒二重線は 大質量、 AGBs, RGBs の領域。  


 3.変光星光度から星形成史へ 

 ξ = 星形成率。(星質量/yr/天空面積) とすると
 dM(t) = ξ(t) dt          (1)
N = 星の数で表現すると
ここに fIMF = 初期質量関数で、
 fIMF = A m    (3)
Kroupa01 の IMF を採用すると、

min = 0.02 Mo, max = 200 Mo とする。
 dn(t) = dt の間に生まれる年齢 t の変光星の数。


上式を変形して


 dn' = dt の間に生まれて「観測される」変光星の数
 δt = 変光星寿命。


従って、


左ページの式は少しわかりにくいので下に書き直す。ファクター2 が追加に必要である。

t は後ろ向きに測った時間である。
m(t) = t で生まれ、現在変光星星(AGB 先端)になる星の質量。
δ(m) = m(t) 星の変光星としての寿命。
ξ(t) = 星質量形成率。 
φ(M) = IMF. ただし、∫φ(M)dM=1 で規格化。すると、
ξ(t)φ(M) = 質量 M の星数での形成率。

観測される変光星は平均すると変光星寿命の半分の変光星年齢であろう。 従って、観測される変光星 m(t) の数分布を n(m) とすると、

  n(m) = ξ(t)φ(M)δ(m)/2

  ξ(t) = 2 n(m)/φ(m)/δ(m)

 


 3.1.誕生質量と大振幅変光星の K 等級 


図2.低中間質量星の質量光度関係。Z = 0.019, 0.015, 0.008, 0.004. 実線=線形スプラインフィット。赤点線=M33 に適用する Z/0.015 に対する フィット。  

図3.スーパーAGB から RSG までを含む、より広い質量範囲での質量光度関係。 Z = 0.019, 0.015, 0.008, 0.004. 赤実線=4Mo 点と RSG を直線で内挿した場合。  



図4.M 33 の中心 kpc 四方における大振幅星の質量分布。 実線=ダストシェルの赤化補正を施した。赤点線=全てに炭素質ダストの 赤化補正。青破線=O-リッチダストの赤化補正。  

 進化モデル 

 進化モデルから AGB 先端光度と初期質量の関係を求めた。 それを図2、図3に示す。Z = 0.019、K = [16, 16.4] の クネクネは M-型星と C-型星の BC の差に依るものである。

 スーパーAGB 

 図3の log(M/Mo) = [0.7, 1.3] では K 等級が暗い方へ大きく 動く。しかし、以前に指摘されたように、これらの星ではモデルが進化の 最終末まで計算されていない。この状況の対処策として以下の二つがある。

(1)赤実線の内挿線を使う。

(2)不完全計算結果を受け入れる。

 3.1.1.減光の補正 

 図1には log t = 9 の炭素星と log t = 10 の M-型星に対して、赤化線 を引いた。勾配の差に注意。進化経路は J-K = 1.25 から曲げたが、J-K > 1.5 に対して補正を行う。その式は

  Ko = K + a[1.25 - (J-K)]        (9)

炭素星で a = 0.52, O-リッチ星で 0.72 である。 図4には減光補正して得た質量関数を示す。

表1.質量光度関係 log(M/Mo) = a K + b の係数 a, b. K = 2MASS Ks.  


 3.2.変光期間 


表2.変光期間 log(δ/t) = D + Σi ai exp[log(M/Mo) - bi]2/(2ci2) の係数。  

  

 変光の期間は星質量により変化する。

図5.質量ー変光期間関係。実線=表2の多ガウシャン近似式。 上:スーパー AGB 期を内挿式で近似。(下)途中まで計算結果をそのまま。  


 3.3.質量分布から星形成史へ 


表3.質量ーAGB星年齢関係式の係数  

図6.質量ー年齢関係。  


 4.M 33 の星形成史 

 第1ピーク 

 こうして得た星形成史を図7に示す。強い星形成が 4-8 Gyr (log t = 9.6-9.9) にあり、そのピークが 6 Gyr (log t = 9.8) にある。ピークの 位置については、誤差もあるだろうが、少なくとも 5 Gyr よりこっち 星形成率が低下していることは確かである。

 第2ピーク 

 第2の星形成活動期が 200 - 300 Myr、log t = 8.3 - 8.5 にあった。 そのピーク高は第1ピークに匹敵するほどである。その後は星形成率が 再び低下して現在に至る。

 形成された星総量 

 今回の星形成史から、過去に形成された星の全量は 3.9 107 Mo kpc-2 であり、うち 80 % は t > 4 Gyr で作られ、最近 500 Myr 以内の分は 6 % と分かる。

図7.大振幅星から求めた、M 33 の中心 kpc 四方における星形成史。  


 4.1.仮定の影響 


図8.赤=赤化変光星(J-K > 1.5)の SFH への寄与。黒=全体。  

 4.1.1.赤化星 


図9.赤= AK > 0.5 変光星の寄与。  

 4.1.2.振幅閾値 




図10.黒:μ = 24.9 採用。赤:μ = 24.5 採用。  

 4.1.3.距離 


図11.仮定メタル量4種に対する SFHs。  

 4.1.4.メタル量 

 4.1.5.スーパーAGB 星 


図12.質量ー光度関係。図3との違いは super-AGB 星の パラメター化の改訂版。  

図13.Z = 0.015 での SFH.スーパーAGB が暗いとした時。  



表4.質量・光度関係 log(M/Mo) = a K + b  

表5.変光星期間 δ 対質量関係。 log(δ/t) = D + Σi ai exp[log(M/Mo) - bi]2/(2ci2) の係数。  


 4.2.場所による変化 


図14.銀河平面上での動径分布。赤=大質量星、比較のため3倍で表示。黒= AGBs. 青= RSGs.  

図15.画像上での動径分布。  



図18.左:Mitchell による M33 (1850)。中:UV 画像。右:UFTI 画像