Observations and Implications of the Star Formation History of the Large Magellanic Cloud


J.A.Holtzman, Gallagher, Cole, Mould, Grillmair, + 12
AJ 118, 2262 - 2279 (1999)
Holtzman et al 1999 PDF はここをクリック




 この人の英語は明晰でない。意味を間違えて取った可能性がある。 



 アブストラクト 

 HST/WFPC2 による LMC 3フィールドの CMD から星形成史を導いた。フィールド の一つはバーに、他の二つは外側円盤部に属する。CMD からかなりの割合の星 が 4 Gyr より古いことが判った。LMC バーは他の領域より古い星の割合が高い。 分散=0のAMRでは観測される主系列の太さを説明できない。同じ年齢に対しメタル に巾を持たせるとフィットが良くなる。

 今回の主な結論は、

(1) フィールドの星形成史は星団の年齢分布と異なる。

(2) 爆発的星形成のはっきりした証拠は見つからない。ただし、与えられた年齢の 25 % 以下の年齢巾の特徴は今回の CMD 解析では見つけられない。

(3) 星形成率と LMC/SMC/MilkyWay の接近に相関があるかも知れないが、それほど 劇的ではない。

(4) 星形成史はメタル量分布と合う。  

 1.イントロ 

 ターンオフの重要性 

 CMD 解析の結果、局所群銀河の星形成史が様々であることが明らかとなった。 LMC では主系列星まで観測できるので、古い星のターンオフまで辿り、巨 星から 導かれる星形成史と対照することが可能になる。これは、晩期進化の不定性が 大きいことを考えると利点である。

 星団との比較 

 その上、LMC ではフィールド星と星団を較べることができる。これは、星団が 一般の星と同じように形成されるのかどうかを調べられるので重要である。

    過去の研究 

 Butcher 1977, Stryker 1984 は LMC は若い星から成立していると結論した。 Bertelli et al 1992, Vallenari et al 1996 は LMC フィールド星は バースト年齢 である 4 Gyr より若い星が主体であるとした。HST 観測は星形成が LMC 形成以来 比較的連続な星形成をしてきて、最近数 Gyr は星形成が増加していることを示唆し ている。Holtzman et al 1997, Geha et al 1998 以上全ての観測はバーの外側で行わ れた。バーの内側に関し、Olsen 1999 は星形成率はより連続的であり、ほぼ一定の 星形成率を維持してきたと示唆している。これは、Elson, Gilmore, Santiago 1997 のバーの年齢は 1 Gyr 程度であるという考えと対立する。

 この論文の研究 

 この論文は、バーの1フィールドと共に、これまで研究されてきた円盤部2個所 をHST/WFPC2 により撮像し、CMD を詳細に解析する。

 2.観測 


 観測領域は表1に示した。二個所は中心から数度離れており、比較的すいている。 もう一箇所は混んでいて限界等級は浅くなった。この問題は、バー領域の PSF が 異常に広がっていたためさらに悪化した。これは、「呼吸」として知られている 時々起る副鏡の移動によるものであるが、最大級であった。


 3.解析 

 3.1.測光 

    XVISTAを用いたフィット測光の詳細はHoltzman et al 1997 に述べた。図1は 得られた CMD である。人工星を用いて測光エラーと完全度を調べた。

図1.観測 CMD 左=LMC外辺、中=Hodhe10、右=バー

 3.2.星形成史の導出 

 他の研究 

 これまで多色観測に基づいて多くのグル―プが星形成史を導いてきた。それらは、 Tolstoy,Saha 1996, Dolphin 1997, Hurley-Keller,Mateo,Nemec 1998, Ng 1998, Olsen 1999, Gallart et al 1999, Han 1999 で、基本的には幾つかの SSP を重ねて 観測 CMD にフィットする手法を採用している。

 我々の方法 

 我々は、星を CMD のビンに入れ、観測とモデルの星の差の &ki;2 を最小にする解を求めた。最適解のサーチは非線形の最小二乗法を用いた。

    等時線 

 等時線にはパドヴァグループの Bertelli et al 1994 とGirardi 1999 を使った。 Girardi の等時線は巨星の温度が高めでフィットがずっと良いことが判った。それで 先の解析にはこちらを一貫して使う。等時線に Kurucz 1993 大気モデルを結合して カラーと等級を決めた。

 その他の特徴 

 典型的には時間間隔は ログスケールで一定に取った。IMF はサルピーター型、 dN ∝ M-2.35dM を採用した。  各ビン内の星の数は人工星を使ったテストで得られたエラーを用いてぼかしをかけた。 これは各バンド、各等級、各場所毎に作った表に依っている。不完全性はこの表で 補正されている。以前(Holzman et al 1997, Geha et al 1998) はカラー巾が広いモード で用いられた。今回は巾の狭いカラービンを用いた。


 4.議論 

 4.1.モデルフィットから星形成史を導くこと 

 二つの星形成史 

 外辺の2領域のデータは一緒にして解析した。星形成史はバーと外辺の二つを求めた。

 距離と減光の評価 

 星形成史への制約を強くするには、他で独立に決まる入力パラメターはそのまま 使いたい。しかし、距離と減光にはまだ議論が残っている。  我々は第1段階では、LMC DM = 18.5 とし、赤化には E(B-V) = 0.10 (Schwering, Israel 1991)を採用した。彼らの E(B-B) マップは前景赤化として、E(B-V)=0.07 を示唆している。残りの E(B-V) = 0.03 が LMC 内部の赤化となる。しかし、この 値だと、モデル主系列が赤くなり過ぎて星形成史を系統的にずらす効果を生んだ。 主系列のカラーが合う唯一の方法は、もっと低い減光、外辺では E(B-V) = 0.04, バーでは 0.07、 の採用である。 バーの赤化の方が大きい! 

多分上の訳でいいと思うがちょっと怪しい。結局 Schwering, Israel 1991 を採用しなかったのか? モデルが赤くなりすぎるというが、これは 減光を大きく補正したため観測主系列が青く、モデルが赤いというずれが生じたという ことか? 採用した 0.04, 0.07 は前景と LMC 内部を合わせた値のことか? こいつ の英語は最低。

興味深いことに、可視の観測(Zaritsky 私信)によると、若いアソシエーションから 離れると赤化が小さくなるとのことである。測光等級のゼロ点のエラーもエラーの原因 として考えられる。Stetson 1998 は、我々の較正と較べ、 F555W - F814W カラーに 0.02 等の差を指摘している。しかし、いずれにせよ、結果に大きな影響はないので、 経験的な低い減光値を使う。

 AMR 

 Pagel, Tautvaisiene 1998 は化学進化モデルを LMC 星団やフィールド星の様々な 観測と合うようにして、年齢 - メタル量変化を導いた。初めはその関係に分散がない としていたが、 Olszewski 1993 の星団データは、どの時期でも生まれる星団のメタル 量にはある程度の分散があることを示唆している。
だからどうするとは書いていない。

 フィットに使う等時線 

 フィットに使う等時線はパドヴァ等時線を内挿して、年齢ビンを Δlog t = 0.1 で区切った。色等級図のカラーは 0.04 等、等級は 0.06 等で区切った。
    フィット結果図の説明  

 図2と図3は LMC バーと外辺の結果である。左上は星形成率の時間変化である。 時間はリニアーに取ってある。左中は累積星形成数が、右上にはメタル量の累積 分布と微分分布が示されている。そして右中には F555W バンド光度関数の観測値 とモデルが比較されている。

右上図のメタル分布を低い方から累積させれば左中図の 星形成数との比較が楽なのに。ところが、図4,5だけはそうなっている。図11, 12で元に戻ってるけど。

 左下は log t - [Fe/H] ビン内の星形成率を立体図で示す種族ボックス(Hodge 1989) である。右下のグレースケールは、モデルと観測との差を観測数の平方根で割った 値を示す。白は観測数超過、黒はモデル超過である。黒から白までの範囲は -3σ から +3σ までである。フィットの良さは &chi: 二乗統計で評価した。グレース ケール図にその値が書いてある。右上図には観測光度関数とモデル光度関数が同じ 母体からでた確率が幾つかを コルモゴロフ - スミルノフ 検定で求めた値が示さ れている。

 星形成史の特徴 

 図を見ると、星形成率は数倍の増減はあるが大体一定で、円盤外辺では過去数Gyr 星形成が活発になってきているが、バーではそれほど目立たないことが判る。さらに、 約半数の星は 4 Gyr より古いことが判る。これは以前 Holtzman et al 1997, Geha et al 1998, Olsen 1999 が示したことである。

 主系列の巾の差 

 しかし、グレースケール図をよく見ると、モデル主系列が観測に較べ細いことに 気づく。同様の現象はもっと抑えられたレベルで Olsen 1999 にも見られた。 彼らの方が抑えられているのは露出時間が4倍短く、モデル、観測のエラーが大きい からである。この説明としては:

(1)いつでも出来る星のメタル量には巾がつく。

(2)LMC のかなりの星は分解できない連星である。

(3)LMC 星の距離と減光に巾がある。

(4)観測エラーを低く見積もっている。

(3) と (4) はありそうもないので、以下に (1) と(2)を検討する。



図2.年齢 - メタル関係を仮定したバー領域の星形成史。 E(B-V) = 0.07。 観測主系列がモデルからはみ出ている。



図3.年齢 - メタル関係を仮定した円盤外辺領域の星形成史。 E(B-V) = 0.04。 こちらも、観測主系列がモデルからはみ出ている。

4.1.1.メタル量の分散  

 年齢 - メタル量関係をはずす。 

 観測された幅広の主系列は同じ年齢の星でもメタル量に巾があるためではない かと、我々は感じている。銀河系の年齢 - メタル量関係では著しい分散が確認 されている。そのような分散が幅広の主系列を産み出せるかを調べるため、 各年齢区間に対し Z = 0.0004, 0.001, 0.004, 0.008, 0.02, 0.05 のメタル量 との組み合わせを許した。組み合わせに使ったメタル量が選ばれた理由は内挿が 必要ないからである。

 モデルフィットから得られた年齢 - メタル量関係 

 図4,5には、年齢 - メタル量関係をはずした結果を示した。明らかに系統 的な不一致は解消されている。興味深いのは制限を設けなかったに関わらず、 LMC 星団から得られた年齢 - メタル量関係がほぼ再現されていることである。 図6にはこうして得られた年齢 - メタル量関係を示した。関係の巾も星団の 年齢 - メタル量データと大体同じであった。

 今度の星形成史も前と似ている。 

 フィットは向上したが、得られた星形成史は定性的には年齢 - メタル量関係を 固定して得られたものと似ている。バーでは古い星の割合が円盤部より高い。この ように星形成史の特徴がフィットの際の仮定に対して丈夫であることは結論の 確かさを強めるものである。

 メタル量分布。 

 フィットの結果、[Fe/H] ≤ -1 の星は、外辺で 15 %、バーで 30 % を占める ことが予言される。しかし、巨星に対するその比率を求めるには進化の効果を勘案 する必要がある。古くて低メタルの種族は巨星枝への放出率が低いので、低メタル 巨星の割合は、星全体で見た時の低メタル星の割合より小さい。この効果はかなり 効き、バーでは巨星サンプル中の低メタル巨星の割合は半分くらいに押し下げられ ていると考えられる。



図6.バーで得られた年齢 - メタル関係。四角=各年齢でのピークメタル量。
   ばつ=平均メタル量。実線=Pagel-Tautvaisiene 1998 関係。


 高メタル星 

 主系列の赤い側を説明するには太陽並みかそれ以上の高メタル星を導入する必要 があった。ただし、連星の効果が主系列を上に押し上げることを考慮すると、高メ タル星の寄与が過大に評価されている可能性がある。



図4.年齢 - メタル関係を緩めたバー領域の星形成史。 E(B-V) = 0.07 。



図5.年齢 - メタル関係を緩めた円盤外辺領域の星形成史。 E(B-V) = 0.04 。

 4.1.2.未分解の連星 

 連星の質量分布 

 連星の質量分布ははっきりしないが、IMF と同じで無相関と仮定すると、 大質量星の伴星の質量は低質量星の場合が圧倒的に多く、したがって測光への 影響は無視できる。影響が大きいのは主系列の底付近の低質量連星の場合である。 LMC で観測されている 1 Mo 付近主系列で連星効果を出すには連星の星質量の間 に相関がある場合である。Gallart et al は Leo I の CMD を説明するために そのような説を提案した。彼らは質量比 0.6 以上の連星の割合を引き上げて フィットを向上させた。しかし、問題は LMC で観測された主系列の巾は中間光度 で最も大きいことである。連星による効果は低質量ほど大きいだろうから 主系列の下ほど巾が広がるはずである。したがって、連星モデルは観測の特徴とは 一致しない。
    連星モデルのテスト 

 連星仮説をテストするため、年齢、メタル量の組み合わせに連星の割合を 0.5, 質量分布は IMF と同じ、質量比を 0.5 以上に限定してフィットを試みた。その 結果は著しく悪かった。

 しかし 

 このように、メタル量の分散の方が幅広主系列の説明としてはよさそうであるが、 どちらの効果もある程度の寄与をしている可能性は強い。特に高メタル星の寄与と される分は連星効果で減少する可能性が高い。


 4.2.星形成史導出の正確さ  

  

 モデルフィットに際しては多くの仮定が置かれた:

(1)星の進化モデルが正確である。

(2)IMF は一定で、dN &pop; M-2.35dM の形をとる。

(3)各星の距離と減光は共通である。

(4)観測データはモデルと同じ測光システムで較正され、観測エラーは正確
    に評価されている。

(5)フィットに使用した SSP が銀河内の全ての星をカバーしている。

これらの仮定は全ていくらかのエラーを含んでいる。したがって問題は仮定からの ずれが結論にどのくらい影響するのかという点である。残念ながら、仮定に含まれる エラーの性質が不明なのでこの問題の取り扱いは極端に難しい。

 ベスト解が存在するか? 

 これらの問題の結果、観測結果とポアソン統計によるエラー内でフィットする解 が一つも存在しない可能性が高い。ここでのベストモデルがその良い例だろう。フ ィットされる色等級図上の独立な区域の数を考えると、χ2 の値が もっと良くて、1に近くても当然に思える。

 色々な銀河での星形成史を求めた仕事を調べると、他の星形成史でも同じくらいの フィットを達成していることが判る。ベストフィットモデルは統計的にはデータ と合い容れなくても真の姿にもっとも近い近似であると看做すべきである。

 特徴の重視 

 ベストフィットモデルは色等級図全体で平均して良く合うという基準で選ばれる。 そのため、星が多く測光エラーが低い箇所に重みがかかる。その結果、星の年齢に 関し決定的な情報を含む領域があったとしてもそこに特別な重みはかからない。

 例えば、上部主系列が存在していたらそれは若い種族の決定的な証拠である。しかし、 もし古い種族星の数が圧倒的に多かったら、モデルは古い種族を合わせるように働き、 場合によっては若い種族へのマッチを犠牲にするかも知れない。何か、色等級図上の ある領域に余分な重みを受け取れる方法を考え出すべきで将来の研究はその方向を 目指すべきだろう。

 仮定の影響 

 さらに付け加えると、仮定の変更が星形成史に系統的な偏りを産み出すことがある。 例えば、赤化の値を高くすると低メタル星を多くする必要が出て、もし年齢 - メタル 量関係が仮定されているなら、その結果古い星を増やすことになる。IMF を変える ことも類似の効果を産み出す。

 パラメターを変化させたら 

 仮定したパラメター値の効果を見るため、赤化を 0.04 < E(B-V) < 0.10 、距離を 18.2 < m - M < 18.7 、INF 勾配を -2.95 と -2.35 2種類のどちらか、

  

図7.モデルフィットの χ2。左=赤化を変化させた時。右=距離。
   各パネル内の2本の線は、AMR 固定と非固定の場合。



で一つのパラメターだけを変え、残りの二つのパラメターは最適解のままで、計算を 行った。 図7には、バーと外辺の2領域に対し、赤化を変えた時、距離を変えた時の χ2 を、(つまり、 IMF 勾配= -2.35 固定)AMR 固定(上線)と AMR 制限はずしの2つの場合について示す。AMR 固定の場合にはフィットの良さは パラメター値により大きく変わり、χ2 はそれぞれ、(m - M) = 18.5, E(B-V) = 0.07(バー), 0.04(外辺)で達成される。しかし、AMR の制限をはずすと フィットの良さはパラメターにあまりよらなくなる。これは、異なるパラメターに関し フィットネスに対するある種の縮退があることを予想させる。

 観測からの制約 

 上の結果は、星形成史をフィットする際には観測から独立に 決まるパラメターは固定しておく方が、フィッティングの変数としておくより、 よい、という我々の仮定を支持するものである。将来、観測的にメタル量分布が 決定されると星形成史は大きく前進するであろう。

 LMC への距離、赤化、 IMF、メタル量分布に関する独立な観測からの制約の下で、 それらの量の不確実性が星形成史に及ぼす効果を考察したい。図8には外辺(上) とバー(下)のそれぞれで、AMR 固定(左)とAMR はずし(右)の場合に m-M と E(B-V), IMF 勾配を変えた時の星形成史を示す。太い実線が我々の最適パラメター 解である。図を見ると、パラメターが変化しても星形成史の定性的な様子は変わら ないが、各年齢での星形成率は数倍の変化を被ることが判る。最も大きな影響は IMF 勾配を変えた時である。IMF が急(破線)になると、観測は若い星の割合を 増すことを要求するようになる。これは当然のことでもある。

 ここで考えたパラメターの範囲は観測的に許容される全領域である。したがって、 図8はわれわれの結果の不確実性の範囲を示していると考えてよいだろう。勿論、 星の進化モデルの不確実性、測光エラーがそれに加わるが。

図8.m-M, E(B-V), IMF 勾配を変えた時の星形成史。上左図=外辺+固定AMR。 上右図=外辺+AMRはずし。下左図=バー+固定AMR。下図=バー+AMRはずし。

 4.3.差分色等級図 

 外辺とバーの差分色等級図 

 メタル量が同じ星集団の間では色等級図の差は年齢差として解釈される。メタル量に 差がある場合は解釈はより困難である。ここで、 LMC 外辺とバーとの星形成史の 違いを考えよう。我々のモデルはバーに較べると外辺部では若い星の寄与が大きいこと を示している。これは Olsen 1999 の結果と一致するが、Elson et al 1997 とは 合わない。前者は我々と似た方法、後者はバー CMD を見た結果である。

 図9には外辺とバーの差分ヘス図を示した。差分を取る前の各ヘス図は Mv = 4 - 4.5 の間で星数が等しくなるように規格化されている。この部分は検出が完全でかつ進化 効果が小さいからである。

図に目盛りがない。

白は外辺部が多い箇所、黒はバーが多いところである。スムーズィングをかけて 図を滑らかに見えるようにしてある。明らかに図の下側が黒い。これはバーが中間年齢 の星を多く含んでいることを示す。

図下側に見える中州状の黒班の中間から 右側に白い肘が出ているのは古い種族の下部 RGB で、すると中州の上端は中間年齢 主系列のターンオフだろうか。規格化で合わせたのはその下で、1 Mo 付近の主系列 だろう。だから、10Gyr付近の主系列で数を合わせると、バーの中間年齢ターンオフ が多くて黒く浮き上がるという解釈らしい。

 バーは相対的に多くのレッドクランプ星を含むが、これも中間年齢星を代表している。 一方、上部主系列は白い。これは外辺部に若い星が多いことに対応する。このように、 モデルと無関係な色等級図の比較からもバーは相対的に古い星を多く含むことが判る。
  

図9.バーと外辺との差分ヘス図。




 見せかけの系列 

 バーの色等級図には図1に見られるように、はっきりした系列が現れていて、

RGB のことだろうか? 

数十億年昔の激しい星形成と結び付けたくなる。この系列はElson et al 1997 でも 影を付けた図で示されている。この特徴は外辺部とは対照的である。しかし、これは 連続的星形成のモデルでも現れる特徴なのである。その原因は、対流核を持つ上部 主系列星がその主系列寿命の大部分を低温で高光度の領域に進化するが、その後高温 側に退くからである。そのため、色等級図上に突先が生じる。星は低温領域で 長時間を過ごすので、連続星形成の場合でも主系列からずれた第2系列が生まれる。

 これはメタル量=一定の場合でも生じる現象だが、AMR があると更に強調される。 図10には、12Gyrの間、星形成率=一定に AMR = 固定で計算したヘス図を示す。 上に述べた系列がはっきりと見える。これは過去のある時期に星形成率が高い時期が あったかに見える。このように、色等級図をただ見ただけで解釈すると誤った結論に 導かれる危険がある。

 上部主系列カラーの2分性について 

 こうして、Elson et al 1997, この論文、Olsen 1999 の間で生じているバーの 相対的年齢に関する差異の原因を理解できるようになった。Elson et al 1997 は 上部主系列のカラー分布が二つに分かれることから、バーが若いことを主張した。 彼らは青い方を 1 Gyr に起きたバー形成に関連させ, 赤い方を 4 Gyr 前の円盤全体 の形成に関連するピークとした。我々は赤いピークは星形成率一定の場合でさえ 出現する一般的な特徴で、青い方は星形成率が最近高まったためであると考える。
  

図10.星形成率=12Gyrの間一定、AMR = 固定、とした場合のヘス図。


 4.4.フィールドと星団の星形成史の比較 

 年齢ギャップ 

 我々が導いた結論の中で最も注目すべきは、バーと円盤の双方でフィールド星 の星形成史が星団年齢分布と異なることである。 LMC 星団は 4 - 12 Gyr の間 にはっきりしたギャップが存在する。( van den Bergh 1991, Girardi et al 1995 ) このギャップの古い側には14の球状星団、若い側には多数の 若い星団が存在するのに、ギャップ内にはたった一つ ESO 121-SC03 があるだけである。 それに反し、この論文で導かれた LMC フィールド星形成史はその間も連続的に星が 作られてきたことを示している。

 星団年齢分布をフィールド星形成史に適用可能か? 

 Geha et al 1998 は星団年齢分布に対応するフィールド星形成史を仮定すると、 その光度関数は観測と全く合わないことを示した。しかし、この結論はやや不公平 である。なぜなら、古い星団は一般的には若い星団より大きく、質量で重みをかけると 大きくて古い星団をより考慮する結果になるからである。

これも良く分からない。生存率、蒸発の補正をしなければ逆に 若い星形成に重みがかかると思えるが。

それに加え、破壊作用も考えてもよい。

ここでは何を言おうとしているのか判らない。

    ギャップを条件に星形成史をフィットさせると。 

 結果として我々はより一般的に 4 - 10 Gyr の期間に星形成が停止していた場合に LMC フィールド星の観測を説明できるかどうかを考えた。図11,12が LMC バー に対するその結果である。AMR 固定での星形成史の方は中間年齢を入れたモデルより 明らかにフィットが悪い。その理由は簡単に説明できる: 最も古いターンオフ付近 で幅広な準巨星帯が存在することから、年齢の巾があることが想定される。しかし、 そのような帯は年齢とメタル量の異なる組み合わせで実現可能である。というのは、 古くて低メタルの星は若くて高メタルと星と色等級図上で簡単に混じり合ってしまう からである。これは図12(AMR はずし)が年齢ギャップにかかわらずかなりよく ヘス図を再現していることに現れている。しかしながら、図を良く見ると、M(F555W) ∼ 2.5 付近で準巨星が出来過ぎている。これは、ヘス図の残差からも光度関数 からも判ることである。ヘス図の χ2 はギャップがあっても無い場合 より少し悪いだけだが、光度関数がデータと合っている確率はそれを退けるくらいに 低い。その上、ギャップの存在によりかなり多く、約 40 % の星が低メタルの古い種族に押しや られた。これは Olszewski 1993 のメタル分布、強い水平枝が欠けていることと矛盾 する。それでも、可能性としては、 LMC には拡がった低密度の古い種族からなるハロー が存在し、中心から離れるに従いそれが中間年齢や若い種族を圧倒することもあり得る。

 感じ 

 結論としては、我々はフィールド星の星形成に 4 - 10 Gyr のギャップが存在した という可能性は低いと感じる。

図11.年齢 4 - 10 Gyr 星形成停止条件での LMC バー星形成史。AMR 固定。




図12.年齢 4 - 10 Gyr 星形成停止条件での LMC バー星形成史。AMR はずし。

 4.5.星形成バースト 

 古い種族と若い種族 

 星形成を連続かバーストかと決める程度には幾つかのファクターが存在する。 古い種族では色等級図の年齢による変化は遅い。したがって、時間分解能は低い。 若い種族では変化は速いが、数が不足しがちである。

 バーストの検出を試みたが失敗 

 我々の星形成史は Δ log t = 0.1 の時間分解で計算した。そこで、一つの ビンだけを Δ log t = 0.01 にしてそこでバーストを起こしたらフィットが 良くなるかを調べた。結果は殆ど同じだった。ただ、二つ以上のビンでバースト させるとフィットが悪くなった。主な理由は上部主系列の星の数が少なすぎること である。もっと観測領域を大きくして星の数を増やせば検出が可能になるだろう。 また、4 Gyr より古い年齢ではバーストの検出は極めて難しい。

 4.6.星形成史と LMC の相互作用史 

 近接遭遇の頃に星形成はやや盛んだった 

 マゼラン雲は 2.5 Gyr ほど昔に銀河系と近接遭遇をしたと考えられている。(Zhao 1999) 例えば図8を見ると、その頃星形成率が穏やかな高まりを示していることが判る。しかし 決して劇的な高揚ではない。我々のモデルではバーストを分離する能力がないことを 考えると軌道と星形成の相関を否定することはできない。

    ミクシング 

 星形成が円盤全域で一斉にトリガーを起こすことはないだろう。しかし、ミクシング により 0.5 Gyr 以内に円盤経度方向には混ざり合うと思われる。

 4.7.星形成史と LMC の化学進化 

 化学進化モデル 

 Pagel, Tautvaisiene 1998 は LMC 化学進化モデルを以前のモデルと比較した。 それらは、星形成史をフリーパラメターにし、互いにイールド、 IMF, インフローなどの扱い が異なっている。彼らのベストフィットモデルは一様な星形成の上に 3 Gyr 付近の 高まりが乗ったものである。しかし、彼らは同じくらいよい一致を示す滑らかに変化する 星形成史モデルも作った。我々の星形成史はその二つのモデルの中間であり、組成データ に合わせることができるのではないだろうか?

 次のステップ 

 星形成史の次のステップは星形成史を化学進化モデルと合体させることである。 そうして、色等級図データと組成データを同時に満足させることである。原理的には この作業は質量流入と流出をより一意に決めることになる。


 5.結論 

 主な結果 

 HST の深い色等級図を解析した結果、4 Gyr より古い星がかなり多数存在する ことが判った。分散のない年齢 - メタル関係は主系列の巾の太さを再現できない。 その制限をはずしてフィットが可能になった。得られた種族ボックスは LMC 星団 の年齢 - メタル平均関係を満足するだけでなく、その分散も無理なく説明した。この モデルは組成分布を予言しているので観測によるチェックが可能である。

 バーに古い種族が多い 

 差分色等級図の方法で円盤に較べるとバーは古い星の割合が高いことが判った。 これは Olsen 1999 の結果と合い、Elson et al 1998 と異なる。後者がそのような 結論に至った理由を明らかにした。

    ギャップ 

 星団と違い、フィールド星には年齢分布のギャップが存在しない。しかし、4Gyr より古い昔の星形成史に強い制限をかけることは困難である。準巨星が多数観測 されれば、そして理想的にはそれらのメタル量が判ればフィールド星がギャップを 埋めているかどうかをはっきり判定できる。

 バースト 

 星の数が不足していて LMC にバーストが起きたかどうかを確認出来なかった。

 将来 

 さらに深く古い星のターンオフまで高精度測光で到達できると星形成史がより 正確になる。多数の星のメタル量の決定は重要である。