NGC2660 and Its Nearby Carbon Stars


Hartwick, Hesser
1973 ApJ 183, 883 - 897




 アブストラクト 

 光電 UBV, uvby Hβ 写真 B,V 測光観測を散開星団 NGC 2660 に行った。
(1)星団の赤化は EB-V = 0.38±0.05
(2)(m-M)o = 12.3±0.3
(3)主系列上部の進化した星は V = 15.9 の先が欠けている。
(4)t = 1.2 Gyr, [Fe/H]≤[Fe/H]Hyades
(5)星団中心から 1' 以内に N-型星が存在。
(6)NGC 2660 と NGC 7789 はヘリウムフラッシュ後の進化段階にある。
 NGC 2660 と NGC 2477 の観測 CMD と理論経路との間に矛盾がある。


 1.イントロダクション 

 NGC 2660 は (RA,Dec)1950 = (8h41.0m, -47°02'), (l,b) = (266,3) はあまり目立たない中間年齢星団である。その CMD は NGC 2477 と似る。Hartwick, Hesser 1971 はこの星団中心から 1' 離れた炭素星の距離 を星団と同じと仮定して、予備的測光からその絶対等級を求めた。  この論文では追加測光を加えて、距離と等級の精度を上げる。


 2.観測データ 

 2.1.測光系列 

 写真等級の較正に用いる光電測光系列は V = [8.4, 18.5] の 35 星である。  表1にはそれらの UBV 等級を、図1にチャートを示す。

 表1.NGC 2660 系列星の光電 UBV データ 



 図1.光電測光星と iris 写真測光星。円半径は 1', 2', 3'. No.9009 = 炭素星 



 2.2.写真測光 

 V = 103aD;GG14, B=103aO+GG13 をセロトロロ 152 cm f/7.5 焦点で撮像した。 349 星の iris 測定結果を表2に示す。整約法は Hartwick, Hesser, McClure 1972 と同じである。    B - V = 0.111 + 0.880(b - v)

   V = v - 0.088 + 0.094(B - V)

ここに、 b, v は iris 測光器の測定値である。


 表2.NGC 2660 星の写真測光データ 









 2.3.追加測光観測 

 巨星の B, V 測光 

 DDO システムでの中間帯域測光との利用を考えて巨星の B, V 測光が 行われた。表3にその結果を示す。 iris 測光とはやり方が違うので一応表示する。

 早期型星の uvby Hβ 測光 

 Crawford, Barnes 1969 は早期型星の uvby Hβ 測光が前景減光の決定 に有用であることを指摘した。いくつかの早期型星がシュミット対物プリズム 乾板で見つかった。それらの 7 星のチャートを図2に、光電測光結果を表4に 示す。

 明るいフィールド星の UBV 光電測光データ  

 NGC 2660 付近の明るい星7個の UBV 光電測光データを表5に示す。図2に それらのチャートを示す。 

表3.NGC 2660 巨星の光電測光結果


 図2.減光決定のための uvby Hβ 測光に用いた早期型星。 



 表4.NGC 2660 付近にある明るい星の uvby Hβ 測光 



 表5.明るいフィールド星の UBV 光電測光データ 



 3.赤化と距離 

 UBV 二色図から 

 no.9004 を主系列星と考えると、UBV 二色図の位置から E(B-V) = 0.37 を 得る。表5の青い6星を全て主系列星と考え、それらの赤化を単純平均すると E(B-V) = 0.27 である。しかし、星団に最も近く位置し、6星中最も暗い星 T の値は no.9004 に近い。

 セファイド 

 星団 1⪚ 以内にある3つのセファイド、 SW, SX, T Vel の赤化は Fernie 1967 によると 0.34, 0.33, 0.34 である。セファイド赤化を等値 B-型星赤化に 調整すると、 E(B-V) = 0.37, 0.36. 0.37 となる。

 uvby-Hβ データ 

 A 型星と判断された星の 表4の uvby-Hβ データから、関係式

   (b-y)o = 2.943 - β - 0.1 δc1 - 0.1 δ m1

を使って赤化を決めた。B-型星には関係式

   (b-y)o = -0.116 + 0.097 co

を使う。
 星団赤化 

 表5の星 N と Z はNGC 2660 の南辺近くに位置するが、E(B-V) = 0.39 であ る。一方、星 E, I, R は星団西側の吸収レインの中にあるが、E(B-V) = 0.61 である。明らかに NGC 2660 付近の吸収は非一様である。しかし、星団から一番 角距離が小さい所にある遠い星の値の平均値を採用して、NGC 2660 に対し、 E(B-V) = 0.38 が星団の赤化として適当であろう。

 図3=CMD 

 図3には表1−3のデータに基づいた CMD を示す。表1の星は、星団近くにあり、 かつ CMD 上で自然な位置にある星のみをメンバーとして採用した。図の実線は (m-M)o を出すために引いた主系列線である。

 距離 

 主系列線に E(B-V) = 0.38 の補正を行い、 Eggen 1965 の ZAMS とのフィット から、(m-M)o = 12.3±0.3 D = 2.9 kpc を得る。



図3.NGC 2660 付近 350 星の CMD. 黒点=2枚以上の乾板で測光。バツ=1枚。 十字=表1、2の光電測光星のうち星団メンバーとみなされた星。 炭素星は、 V = 11.53, B-V= 4.3

 4.理論進化経路との比較 


図4.点線=モデル進化経路。実線=モデル等時線。Y = 0.3, Z = 0.01. 等時線に付けた数字は Gyr 単位の年齢。

 図4=モデル等時線 

 NGC 2660 の年齢とターンオフマスは理論等時線との比較から決まる。図4 には Y = 0.3, Z = 0.01 に対する当時線が示されている。経路の値は付録の 表に載せた。

 巾 0.25 mag. の切れ目 

 理論モデルは主系列の最青部のすぐ下に巾 0.25 mag. の切れ目 が生じることを示す。観測データを統計的に調べると、V = 15.9 に切れ目が 存在することが分かる。

図5.NGC 2660 付近の光電測光星の赤化補正後二色図。青い星は NGC 2660 の 巨星とよく合う。一方、図3の中でターンオフより明るく赤い方に位置する星は 二色図上で低重力領域に位置する。実線=ヒアデス。

 図5=二色図上のブルーストラグラー 

 図5には二色図を示す。光電観測された星の内、ターンオフ近くにある3星 が二色図上でターンオフ経路の下に位置する。これらの星は NGC 2477, NGC 188 で見つかっている。注目すべきは M 67 にも, もっと明るいところに いわゆるブルーストラグラーが存在することである。

 星団年齢とターンオフ質量 

 図5に巨星枝近くにある4星を示す。この4星から、 [Fe/H]2660 ≤ [Fe/H]Hyades と分かる。図3から VTO = 15.35 である。したがって、mbol(TO) = 15.40, Mbol(TO) = 1.55 となる。Y = 0.30, Z = 0.01 の等時線と比べ、 年齢 1,5 Gyr が得られる。ターンオフ質量= 1.7 Mo である。もし、Y = 0.29, Z = 0.03 モデルを使うと、年齢 0.9 Gyr, ターンオフ質量= 1.9 Mo である。


 5.炭素星 

 炭素星等級 

 1972 論文で、NGC 2660 付近に N-型星が存在することを指摘した。 セロトロロでの2年間にわたる 7 観測の結果を表6に示す。注意すると、この星の カラーと等級は測光標準星の範囲から逸脱しているのでデータ処理には外挿値を 使用した。 Eggen 1972 はこの星は P = 100 d の変光星ではないかと述べている。 ⟨V⟩ = 11.53 から Mv = -2.0 mag となる。

NGC 7789 炭素星との比較  

 Gordon 1968 は N-型星は Mv = [-1.5, -3.5] であるとした。一方、Richer は Mv = -2.7±0.7 とした。Gaustad, Conti 1971 はもし MSB 75 が NGC 7789 メンバーならば、その絶対等級は Mv = -2.1 であると述べた。 この等級の近さは、NGC 7789 と NGC 2660 の CMD が、したがって年齢が近い ことを考えると興味深い。

表6.炭素星の B, V 測光


 6.結論 

(1)NGC 2660 の赤化は E(B-V) = 0.38±0.05 mag.

  (2)(m-Mo = 12.3±0.3 mag.

  (3)進化した主系列上 V = 15.9 mag にギャップがある。

 
(4)星団年齢は 1.2 Gyr. メタル量はヒアデスと同じか少し下。

  (5)星団に属すると思われる炭素星は Mv = -2.0±0.3, M = 1.8 Mo

  (6)NGC 2660 と NGC 7789 の炭素星はヘリウムフラッシュ後の進化段階