冷却過程の種族 I 白色矮星, Mi = [1, 1.5] Mo, の進化計算を行った。 オーバーシューティングパラメター f = 0.016 モデルでは、Mi = [1.3, 1.32] Mo の post-AGB 星で最終ヘリウムフラッシュ LTP が起きる。もっと高効率 f = 0.018 では [1.28, 1.3] Mo で LTP が起きる。マスロスパラメター η を5倍変えたが、 LTP には影響せず、進化時間を変化させたのみで あった。Mi = 1.3 Mo に対し、 f = 0.016 と 0.018 の二つの値で、LTP 期 の動径振動のモデル計算を行った。 | Mi=1.4 Mo, f=0.016 モデルでの最長周期 P = 117 日は FG Sge の観測値 に合う。その時、 M = 0.565 Mo, R = 126 Ro, Teff = 4445 K である。 しかし GD Sge の周期変化率 1960 - 1990 はモデル値の3倍である。 |
最後のヘリウムフラッシュ Bertolami 2016 の計算では、post-AGB 期 (Menv/M = 0.01 から Teff = 20,000 K まで)は 34,000 年(Mi=1Mo) から 600 年 (4Mo) である。 post-AGB 星のエネルギー源は水素燃焼であるが、それが停止する前に ヘリウムフラッシュの起きる可能性がある。(Schonberner 1979) Blocker 2001 は最終ヘリウムフラッシュが起きるのは、LTP = 水素燃焼 期間中か、VLTP = 水素燃焼終了後白色矮星期か、とした。進化経路は Teff = 4000 K という低温領域まで下がる。 LTP 星? 幾つかの PNe 中心星の等級、スペクトル変化、FG Sge, V4334 Sgr, V605 Aql が LTP モデルで説明される。モデル計算による変化速度は観測と良く合う。 |
FG Sge PN He1-5(Henize 1961) の中心星 FG Sge はもっとも良く調べられてきた 最終へリウムフラッシュ星である。観測は 130 年に及び、この間に 1880 年の Teff = 45,000 K から 1992 年の 4500 K まで下がった。さらに、60年間 に FG Sge の周期は 1930 年の 5 日から 1986 - 1989 年の 115 日にまで上昇 した。周期増加は 1990 年以降停止している。(arkipova et al 2009) 振動計算 ここでは、振動計算を観測と比較する |
オーバーシューティング 進化計算は MESA version10398 で行った。対流は α = l/Hp = 1.8 の ミクシング長モデルで扱う。オーバーシューティングは Herwig 2000 に従う。 Oov(z) = Do exp(-2z/fHp) ここに、 Do = 対流拡散係数(Langer et al 1985) で、Schwarzschild 境界 から 0.004Hp 離れた点での値である。f = オーバーシューティングパラメター。 f の影響を見るため、 f = 0.016 (通常使われる値) と f = 0.018 の二つで 計算した。 マスロス AGB 期より前の計算は Reimers 1975 のマスロス則、 (dM/dt)R = 4 10-13ηR (LR/M) Mo/yr で計算した。 一方、 AGB 期は Blocker 1995 のマスロス式 (dM/dt)B = 4.89 10-9ηB L2.7M^2.1 (dM/dt)R Mo/yr を採用する。ηR=ηB=0.5 とした。 post-AGB で信頼できるマスロス式は存在しない。ここでは仮に前出の Blocker の式を使用する。マスロスパラメターηp = [0.02, 0.1] で計算してその効果を確認する。 |
![]() 図1. 点線=1Mo. 実線=1.3 Mo. 破線= 1.5 Mo. f = 0.016, η p = 0.05 仮定。 黒丸=ヘリウム燃焼の極大。楕円=FG Sge の大体の位置。 |
![]() 図2.最終ヘリウムフラッシュ期における LH, LHe, L = LH + LHe の時間変化。Mi = 1.3 Mo, f = 0.016, ηp = 0.05. L 図1は Mi = 1, 1.3, 1.5 Mo の進化経路 図1は Mi = 1, 1.3, 1.5 Mo の進化経路を表す。M = 1.3 Mo 進化のループ は最終ヘリウムフラッシュによる。図2には Mi = 1.3 Mo, f = 0.016, ηp = 0.05 での LH, LHe, L = LH + LHe の時間変化を示す。便利のため、時間 t はヘリウム燃焼極大をゼロとした。 水素燃焼は回復せず、ヘリウム燃焼が次第に衰え、白色矮星となる。 |
![]() 図3.Mi = 1.3 Mo, ηp = 0.05 の進化。実線は f = 0.016. 破線は f = 0.018. 黒丸=ヘリウム燃焼の極大。数字=縦線(post-AGB 開始) からの年数。 LTP 出現範囲 図3にはオーバーシューティングパラメター f = 0.016 と 0.018 との違いを 示す。f が上がると ヘリウムフラッシュ時期が遅れる。しかし、そのどちらも LTP である。 その後の変化はほぼ同じ経路に収れんする。結局、 f = 0.016 では、 Mi = [1.30, 1.32] Mo で、f = 0.018 では Mi = [1.28, 1.30] で LTP が 出現する。 |
図4=パラメターによるモデル変化 図4には f, ηp を変えたときのループ上温度が下がり 半径が増加していく際の進化経路の違いを示す。 便利のため、Teff = 10,000 K の時を tev = 0 とした。 LTP 期 R 最大時の星パラメター 表1には LTP 期に R 最大となる時の星パラメターを示す。 ![]() 表1.LTP 期に R 最大となる時の星パラメター |
![]() 図4.(a) ηp = 0.05 で f = 0.016(実線). f = 0.018(破線) の場合の経路。 (b) Mi = 1.3 Mo, f = 0.016 の場合、ηp による差。 |
![]() 図5.断熱指数 Γ1 と質量座標 (1-Mr/M) の関係。 Mi = 1.3 Mo, f = 0.016, ηp = 0.05. R = 125.4 Ro, Teff = 4445 K. |
![]() 図6.P の時間変化。Mi = 1.3 Mo, f = 0.016(実線), 0.018(破線) |
P 変化の比較 図6と図7を比較すると、M = 1.3 Mo, ηp = 0.05, f = 0.016 のモデルが観測に合う。特にモデルの最大周期 117 日が 1990 年以降安定している FG Sge 周期に近いことは注目に値する。 |
![]() 図7.FG Sge の周期変化。様々なデータを集めた。実線はそのフィット。 |
FG Sge のこれまでの変光周期変化をほぼ合わせられるモデルパラメター が得られた。今後予想される周期下降期の観測が重要である。 |