アブストラクト南銀河面を走査した Valinhos 2.2 μm で検出した 630 天体を報告する。 90 % が IRAS と同定された。K, L + IRAS で SED を調べた。大部分はダストに 覆われた晩期型星であった。 K-L, L-[12], [12-25] カラーを用いて、 分類を行った。O-, C-リッチ星の分離に成功した。幾つかの特異星の性質も 論じる。 |
1.イントロValinhos 2.2 μm サーベイは 南銀河面 10° × 120° を掃き、l = 240 - 360°、|l| < 5° の間に K < 5.5 mag の星 1500 個を見出した。初めの338 個は論文 Epstein 1985 に載せた。 ここでは残りの 292 個のリストを示す。 |
2.観測と結果IRAS 天体との同定は 40" 以下で行った。図1に位置の差のヒストグラムを示した。 平均して 16.5" のズレがある。表1に全天体 630 のリストを載せる。 第16列のアステリスクは以前の可視、赤外カタログ天体との同定 を示す。図2には K 等級分布を示す。![]() 図1.位置の差のヒストグラム |
![]() 図2. K 等級分布 |
(K−L, K−M) 図3には (K-L, K-M) 二色図を示す。この領域では黒体に沿って 並んでいる。 IRASが入ると ところが、図4、5、6のように IRAS バンドと近赤外を組み合わせると、 黒体輻射から大幅にずれて行く。また、近赤外と遠赤外の SED は二つの黒体 輻射の重ね合わせでかなり良くフィットできる。従って、全体の SED Sλ を 特徴付けるには、星温度 Ts, ダスト層温度 Td, それに両者の半径比 r = Rs/Rd の 3 つのパラメターで十分である。 Sλ = Bλ(Ts) + r2 Bλ(Td) カラーの意味 K-L は Ts に敏感である。(12-25) は Td に反応する。一方 (L-12) は r への依存度が高い。そこで、(K-L, L-12) = Ts とr の分類、 (K-L, 12-25) = Ts と Td の分類、の二つの二色図を用いた。どちらの図 も二つの離れた集団を示す。 ![]() 図3.(K-L, K-M) 二色図。四角=既知。バツ=未知。 ![]() 図5.(K-L, 12-25) 二色図。 |
タイプ a 図4上で、K-L = 0.2, L-12 = 0.5 付近に集中し、(L-12) < 0.8 で 区切られるグループである。SED は T > 4000 K 単一黒体輻射でフィット 出来る。"a" 群は正常の非変光星と考えられる。 タイプ b 図4上での"b" 群の境界は、 0.2 > K-L > 0.7, 0.8 > L-12 > 2 である。"b" の 17 % は超巨星または長周期変光星に同定されている。 それらの星は薄いダスト層に囲まれた M 型星である。"b" 群中 LRS が 得られている星は 1n 型か 2n 型である。"b" の典型例 IRSV 1038-5247 の SED は 2500 K と 300 K の二つの黒体輻射の r = 10 の重ね合わせでフィットできる。"b" 群の Ts は "a" 群より 低く、 300 K < Td < 500 K である。最後に、図4、5 に見られる "a" と "b" との間にあるギャップは Td << Ts であることから説明される。 ![]() 図4.(L-12, K-L) 二色図 ![]() 図6.(L-12, 12-25) 二色図。 |
他のタイプ "a", "b" 以外は広がっていて特徴付けが困難である。そうでは あるが、図4には二つの枝が見える。一つは L-12 軸にほぼ平行で、 もう一つは黒体輻射に平行に伸びている。図4上両者の境界を L-12 = 3.33(K-L) - 0.33 とする。このラインの上領域の典型例は図7c にある IRSC1022-6039 で、 "o1" タイプと呼ばれる。このラインの下の領域は変光星を 多く含み、IRAS 観測と L 観測との時期の差が大きな L-12 カラー の分散の原因となっている。従って、それらの天体の分類には 観測時期のズレの影響が小さな図5(K-L, 12-25) を用いる。 炭素星 実際には図5上には K-L = 0.7 の先が二本に分かれる。一本は 黒体輻射に沿って伸び、もう一本は明らかにその上に伸びる。境界は 12-25 = 0.42(K-L) + 0.10 である。最初の枝 ("c" タイプと呼ぶ)は図7f の IRSV1514-4940 が典型で 炭素星である。もう一方の枝の天体は "o2" と呼ばれる。 K-L <1.4 の時 "o2" と呼ばれる。K-L > 1.4 の場合は "o3" である。 "o1", "o2", "o3" はダスト層の光学厚みが増加する方向に並んでいる。 ![]() |
図7.SED
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サンプル 630 星のうち 153 星は LRS 分類がある。表4にその
分布を示した。2n 天体は b, o1, o2 天体に、4n は c タイプに対応
していることが判る。予想されるように NIR サーベイでは IRAS 中で
青い天体に重みがかかり、 LRS クラス 3, 5, 6, 7, 8, 9 の天体は
殆ど見つかっていない。
4.1.炭素星1n, 0n 炭素星炭素星は通常 11.2 μm SiC 放射帯を持ち、LRS 4n に分類される。 しかし可視分光から明らかな炭素星とされる星で LRS 1n, 0n に分類 されるものがある。それらは SiC 帯がないか自己吸収を受けているか である。 K, L 測光による炭素星の判定 "c" タイプは主に炭素星が占めている。17/23 は純正炭素星である。 一つは LRS = 2n であるが放射帯が非常に弱いための誤分類である。 二つは LRS = 0n であるが、その内の一つ IRSV 1519-5115 は視察する と 4n が妥当である。従って残る 3 つ、 IRSV1204-6417, 1301-6242, 1601-4825 だけが何の情報もない。その上、現在別に進めている 4n 天体 の NIR 測光では 80 % が "c" に、10 % が "o3" に分類される結果と なった。これらの結果から "c" 天体は炭素星と看做す事は尤もらしい と言える。したがって、 未同定 IRAS 天体の K, L 測光から炭素星か M-型星かを決める見込みが出てきた。 4.2.酸素リッチ星表4を見ると、LRS を持つ 35 個の "o1" 星中 32 個は 2n であり、 4n は一つもない。これから "o1" 星は O-リッチと考えられる。 "o2" も 4n に属するのは 1/39 である。 |
![]() 表4.LRS 分類と Valinhos 測光分類の関係 |
5.1."b" 天体"b" 天体の幾つかは 60 μm 超過を示す。例えば、IRSV 1012-5915, 1102-6241, 1409-6402, 1528-5555, 1529-5836。IRSV 1102-6241 は M0/M1 超巨星 HD96195 に同定されている。その SED は図8(a) にあるが、サンプル中唯一の 50 天体(赤く滑らか) である。RT Cas の SED と似ている。冷たいダスト雲が周囲にあることを 示唆する。 5.2."oN" 天体"o2" 天体IRSV 1612-5128 は IRAS16122-5128 と同定される。しかし 50" 離れた HD145973 とは同一でない。 IRSV 1126-6438 (図8b) LRS = 44 の SED は炭素星のそれとは似ていない。 これは "o2" タイプである。この星は輝線星 Hen 658 と同定されている。 惑星状星雲 PK330+0.2 と同定された IRSV 1607-5110 と SED が似ている ことも考慮するとこの星は PN への進化途中にある炭素星と考えられる。 IRSV 1635-4754 (図8c) は暗黒雲 DC337.0 と同定されている。しかし これは暗黒雲と無関係の晩期型星ではないか? "o3" 天体 6 天体が T(K-L) < 1000 K である。それらは IRSV 1336-6222, 1402-6107(図7e), 1606-5228(図8d), 1657-4136(図8e), 1713-3902(図8f), 1738-3559 である。大部分は F(25) > F(12) であり、IRSV1402-6107 は F(60) > F(25) である。それらの幾つかでは FIR 勾配が f-f 放射 と一致する。これらの中で IRSV 1336-6222 だけが LRS = 25 である。 IRSV 1540-5413 (図8g) はサンプル中唯一シリケイト吸収帯 LRS = 71 を示す。これは従って厚い星周層に囲まれているはずだが K = 2.25 と非常に 明るい。OH 検出の報告はない。 ![]() ![]() 図8.興味深い天体の SED 。 |
5.3."c" 天体ダスト層の温度"c" 天体は通常単一黒体で近似される。二成分が必要とされる場合でも 低温側の温度は 400 K 付近で "oN" 天体ほど低くならない。これは多分 炭素の凝結温度が高いせいであろう。 極端炭素星 IRSV 1519-5115 は K = 2.58, F(12) = 1320 Jy と非常に強い赤外源である。 LRS = 04 なので、これは CIT 6 (IRC+30219) と似た極端炭素星ではないかと 考えられる。 異常スペクトル IRSV 1632-4656 (図8i) は "c" 天体であるがスペクトルは異常である。 K が窪み、単一黒体のフィットが出来ない。 SED は IRC+10420 と似る。 超巨星 RT Car IRSV 1042-5909 (図8j) は超巨星 RT Car(M2Ia) と同定された。この FIR はシラスの混入が強い。Forte, Marraco 1986 によるとこの星は細長い星周 雲に囲まれている。 5.4.特異天体IRSV 1112-6102 (図8k)Robert 37 (WR) IRSV 1554-5137 (図7g) 輝線星 Hen 1379, Ts = 2000K, Td = 270 K, r = 120 IRSV 1716-3907 (図8l) 未同定 ![]() ![]() |
JHKLM + IRAS で 630 星の分析を行った。25 % は通常星、残り大部分 はダストに覆われた晩期型星であった。 | 炭素星と酸素星を正確に分別できることが判った。その結果を使い、 多くの極端炭素星を見つけ出せるであろう。中でも最も興味深いのは IRSV 1519-5115 で PN への進化途中にある炭素星である。1540-5413 は OH/IR 星、1716-3907 大きな赤外超過を持つ輝線天体である。 |