Valinhos 2.2 micron Survey of the Southern Galactic Plane II.
MIR Photometry, IRAS Identification and Nature of the Sources


Epchtein, Le Bertre, Lepine, Marques dos Santos, Matsuura, Picazzio
1987 AAS 71, 39 - 55




 アブストラクト

 南銀河面を走査した Valinhos 2.2 μm で検出した 630 天体を報告する。 90 % が IRAS と同定された。K, L + IRAS で SED を調べた。大部分はダストに 覆われた晩期型星であった。 K-L, L-[12], [12-25] カラーを用いて、 分類を行った。O-, C-リッチ星の分離に成功した。幾つかの特異星の性質も 論じる。

 1.イントロ 

Valinhos 2.2 μm サーベイは 南銀河面 10° × 120° を掃き、l = 240 - 360°、|l| < 5° の間に K < 5.5 mag の星 1500 個を見出した。初めの338 個は論文 Epstein 1985 に載せた。 ここでは残りの 292 個のリストを示す。



 2.観測と結果 

 IRAS 天体との同定は 40" 以下で行った。図1に位置の差のヒストグラムを示した。 平均して 16.5" のズレがある。表1に全天体 630 のリストを載せる。 第16列のアステリスクは以前の可視、赤外カタログ天体との同定 を示す。図2には K 等級分布を示す。

図1.位置の差のヒストグラム







図2. K 等級分布



 3.Valinhos ESO 天体の分類 

 (K−L, K−M)
 図3には (K-L, K-M) 二色図を示す。この領域では黒体に沿って 並んでいる。

 IRASが入ると 
 ところが、図4、5、6のように IRAS バンドと近赤外を組み合わせると、 黒体輻射から大幅にずれて行く。また、近赤外と遠赤外の SED は二つの黒体 輻射の重ね合わせでかなり良くフィットできる。従って、全体の SED  Sλ を 特徴付けるには、星温度 Ts, ダスト層温度 Td, それに両者の半径比 r = Rs/Rd の 3 つのパラメターで十分である。
  Sλ = Bλ(Ts) + r2 Bλ(Td)

カラーの意味 
 K-L は Ts に敏感である。(12-25) は Td に反応する。一方 (L-12) は r への依存度が高い。そこで、(K-L, L-12) = Ts とr の分類、 (K-L, 12-25) = Ts と Td の分類、の二つの二色図を用いた。どちらの図 も二つの離れた集団を示す。


図3.(K-L, K-M) 二色図。四角=既知。バツ=未知。


図5.(K-L, 12-25) 二色図。
 タイプ a 
 図4上で、K-L = 0.2, L-12 = 0.5 付近に集中し、(L-12) < 0.8 で 区切られるグループである。SED は T > 4000 K 単一黒体輻射でフィット 出来る。"a" 群は正常の非変光星と考えられる。

 タイプ b 
 図4上での"b" 群の境界は、

   0.2 > K-L > 0.7,  0.8 > L-12 > 2

である。"b" の 17 % は超巨星または長周期変光星に同定されている。 それらの星は薄いダスト層に囲まれた M 型星である。"b" 群中 LRS が 得られている星は 1n 型か 2n 型である。"b" の典型例 IRSV 1038-5247 の SED は 2500 K と 300 K の二つの黒体輻射の r = 10 の重ね合わせでフィットできる。"b" 群の Ts は "a" 群より 低く、 300 K < Td < 500 K である。最後に、図4、5 に見られる "a" と "b" との間にあるギャップは Td << Ts であることから説明される。



図4.(L-12, K-L) 二色図


図6.(L-12, 12-25) 二色図。



 他のタイプ
 "a", "b" 以外は広がっていて特徴付けが困難である。そうでは あるが、図4には二つの枝が見える。一つは L-12 軸にほぼ平行で、 もう一つは黒体輻射に平行に伸びている。図4上両者の境界を

   L-12 = 3.33(K-L) - 0.33

とする。このラインの上領域の典型例は図7c にある IRSC1022-6039 で、 "o1" タイプと呼ばれる。このラインの下の領域は変光星を 多く含み、IRAS 観測と L 観測との時期の差が大きな L-12 カラー の分散の原因となっている。従って、それらの天体の分類には 観測時期のズレの影響が小さな図5(K-L, 12-25) を用いる。

 炭素星
 実際には図5上には K-L = 0.7 の先が二本に分かれる。一本は 黒体輻射に沿って伸び、もう一本は明らかにその上に伸びる。境界は

   12-25 = 0.42(K-L) + 0.10

である。最初の枝 ("c" タイプと呼ぶ)は図7f の IRSV1514-4940 が典型で 炭素星である。もう一方の枝の天体は "o2" と呼ばれる。 K-L <1.4 の時 "o2" と呼ばれる。K-L > 1.4 の場合は "o3" である。 "o1", "o2", "o3" はダスト層の光学厚みが増加する方向に並んでいる。










図7.SED





 4.LRS 分類との比較 

 サンプル 630 星のうち 153 星は LRS 分類がある。表4にその 分布を示した。2n 天体は b, o1, o2 天体に、4n は c タイプに対応 していることが判る。予想されるように NIR サーベイでは IRAS 中で 青い天体に重みがかかり、 LRS クラス 3, 5, 6, 7, 8, 9 の天体は 殆ど見つかっていない。

 4.1.炭素星 

 1n, 0n 炭素星 
 炭素星は通常 11.2 μm SiC 放射帯を持ち、LRS 4n に分類される。 しかし可視分光から明らかな炭素星とされる星で LRS 1n, 0n に分類 されるものがある。それらは SiC 帯がないか自己吸収を受けているか である。

 K, L 測光による炭素星の判定 
 "c" タイプは主に炭素星が占めている。17/23 は純正炭素星である。 一つは LRS = 2n であるが放射帯が非常に弱いための誤分類である。 二つは LRS = 0n であるが、その内の一つ IRSV 1519-5115 は視察する と 4n が妥当である。従って残る 3 つ、 IRSV1204-6417, 1301-6242, 1601-4825 だけが何の情報もない。その上、現在別に進めている 4n 天体 の NIR 測光では 80 % が "c" に、10 % が "o3" に分類される結果と なった。これらの結果から "c" 天体は炭素星と看做す事は尤もらしい と言える。したがって、 未同定 IRAS 天体の K, L 測光から炭素星か M-型星かを決める見込みが出てきた。

 4.2.酸素リッチ星 

 表4を見ると、LRS を持つ 35 個の "o1" 星中 32 個は 2n であり、 4n は一つもない。これから "o1" 星は O-リッチと考えられる。 "o2" も 4n に属するのは 1/39 である。

表4.LRS 分類と Valinhos 測光分類の関係



 5.個々の天体 

 5.1."b" 天体 

 "b" 天体の幾つかは 60 μm 超過を示す。例えば、IRSV 1012-5915, 1102-6241, 1409-6402, 1528-5555, 1529-5836。
IRSV 1102-6241 は M0/M1 超巨星 HD96195 に同定されている。その SED は図8(a) にあるが、サンプル中唯一の 50 天体(赤く滑らか) である。RT Cas の SED と似ている。冷たいダスト雲が周囲にあることを 示唆する。

 5.2."oN" 天体 

 "o2" 天体 
 IRSV 1612-5128 は IRAS16122-5128 と同定される。しかし 50" 離れた HD145973 とは同一でない。
 IRSV 1126-6438 (図8b) LRS = 44 の SED は炭素星のそれとは似ていない。 これは "o2" タイプである。この星は輝線星 Hen 658 と同定されている。 惑星状星雲 PK330+0.2 と同定された IRSV 1607-5110 と SED が似ている ことも考慮するとこの星は PN への進化途中にある炭素星と考えられる。
 IRSV 1635-4754 (図8c) は暗黒雲 DC337.0 と同定されている。しかし これは暗黒雲と無関係の晩期型星ではないか?

 "o3" 天体 
 6 天体が T(K-L) < 1000 K である。それらは IRSV 1336-6222, 1402-6107(図7e), 1606-5228(図8d), 1657-4136(図8e), 1713-3902(図8f), 1738-3559 である。大部分は F(25) > F(12) であり、IRSV1402-6107 は F(60) > F(25) である。それらの幾つかでは FIR 勾配が f-f 放射 と一致する。これらの中で IRSV 1336-6222 だけが LRS = 25 である。
 IRSV 1540-5413 (図8g) はサンプル中唯一シリケイト吸収帯 LRS = 71 を示す。これは従って厚い星周層に囲まれているはずだが K = 2.25 と非常に 明るい。OH 検出の報告はない。



図8.興味深い天体の SED 。

 5.3."c" 天体 

 ダスト層の温度 
 "c" 天体は通常単一黒体で近似される。二成分が必要とされる場合でも 低温側の温度は 400 K 付近で "oN" 天体ほど低くならない。これは多分 炭素の凝結温度が高いせいであろう。

 極端炭素星 
 IRSV 1519-5115 は K = 2.58, F(12) = 1320 Jy と非常に強い赤外源である。 LRS = 04 なので、これは CIT 6 (IRC+30219) と似た極端炭素星ではないかと 考えられる。

 異常スペクトル 
 IRSV 1632-4656 (図8i) は "c" 天体であるがスペクトルは異常である。 K が窪み、単一黒体のフィットが出来ない。 SED は IRC+10420 と似る。

 超巨星 RT Car 
 IRSV 1042-5909 (図8j) は超巨星 RT Car(M2Ia) と同定された。この FIR はシラスの混入が強い。Forte, Marraco 1986 によるとこの星は細長い星周 雲に囲まれている。

 5.4.特異天体 

 IRSV 1112-6102 (図8k)
 Robert 37 (WR)

 IRSV 1554-5137 (図7g)
 輝線星 Hen 1379, Ts = 2000K, Td = 270 K, r = 120

 IRSV 1716-3907 (図8l)
 未同定






 6.結論 

 JHKLM + IRAS で 630 星の分析を行った。25 % は通常星、残り大部分 はダストに覆われた晩期型星であった。  炭素星と酸素星を正確に分別できることが判った。その結果を使い、 多くの極端炭素星を見つけ出せるであろう。中でも最も興味深いのは IRSV 1519-5115 で PN への進化途中にある炭素星である。1540-5413 は OH/IR 星、1716-3907 大きな赤外超過を持つ輝線天体である。



 表1 Valinhos-ESO カタログ








 表2 同定