VMC = the VISTA survey of the Magellanic Clouds は 2009 年に観測を開始 した。その後、 Ks モニターと追加の Y, J 測光をマゼラン系に亘り行ってきた。 | その中には脈動変光星=セファイド、RR Lyrae, AGB 星が含まれている。 それらの星はマゼラン系の幾何学を追跡する有用な天体である。 |
概要 VMC は 2009 年に開始し、 2018 年に終了する予定である。これは VIRCAM/VISTA 0.34"/pixel Rayethon 検出器 16 個を用い 1.65 平方度の視野を持つ。これ によりマゼラン雲系 170 平方度を繰り返し観測する。観測深度は全バンドで 22 mag (5σ Vega)に達し、 Ks = 10 mag でサチる。サーベイは Y, J フィルターでは 3 回の独立な観測、 Ks では 12 回の独立な観測を行う。 VMC の主目標 VMC の主目標は、マゼラン系全体で空間分解した星形成史を導くことと、 系の立体構造を明らかにすることである。最初の目標には古い種族のターン オフまで達する必要があり、これが限界深度を決めた。第2目標はセファイド や RR Lyrae の変光星距離を用いるのに必要なモニタリングの方式を決めた。 レッドクランプ星も距離決定に用いられる。 タイル 検出器間のすき間が大きいので、6点観測のモザイクですき間をつぶす必要 がある。こうすると、中央の 1.5 平方度は 2 - 6 回観測される一方、端の方 の極端な個所では 1 回しか観測されない。 VMC サーベイは 110 個のタイル から成る。 |
モニタリング Ks 観測は観測時期の間隔を最短 0, 1, 3, 7, 17 日というリズムで行う。 ( 最短の例で示すとどうなるのか?) 一方、 Y, J 観測にはそういう制約はない。これらは同じ晩に観測される。 フィルターを変えずにタイルを一枚撮るのに 1 時間かかる。 VMC 観測全体では 2000 時間= 250 晩必要である。VMC観測はサービスモードで実施される。 データ処理 (1) Cambridge Astronimy Survey Unit で VISTA Data Flow System pipeline = VDFS を通し、タイル画像を作る。対応する天体カタログ作成。 (2) Wide Field Astronimy Unit で個々の観測を重ねた深い画像を作る。 (3) データは VSA = VISTA science archive に収納される。そこが一般の アクセス点となる。一年ごとに VMC データのいくらかが公開される。それらは VSA または ESO archive から採ってこられる。 公開ポリシー VMC 公開ページは http://star.herts.ac.uk/~mcioni/vmc で、そこでは深いカラー画像とユーザーフレンドリーなズーム―インに触れる。 特に 83/110 タイルが完全に完成している。 SMC と ブリッジも完成した。 LMC の 80 % も終了した。これら完了タイルでは、各フィルターでパイプライン と PSF カタログ付きの深い画像と天体リストが得られる。 |
セファイドの近赤外測光 タイプ I セファイド= 4 - 20 Mo で年齢は 数億年。 anomalous セファイド= 低メタル 1.3 - 2.1 Mo で年齢 数 Gyr. タイプ II セファイド= 0.5 Mo で 9 - 10 Gyr. セファイドの周期光度関係に対する He, Fe 組成の影響は近赤外では軽減される。 また、変光曲線はサインカーブ風になる。減光は小さい。これらの結果は セファイドの近赤外測光を魅力ある物としている。 立体マップ 図2 =(J-Ks, Ks) 図には不安定帯の位置が示されている。VMC 複期測光を 用いて、8タイプのモデル変光曲線が作られ、平均等級が求められた。これら の観測等級と OGLE から決めた周期を用いて、図3a には周期光度関係を得た。 LMC の厚みは 0.2 mag, SMC で 0.7 mag を考慮し、距離効果を定量化できる だろう。予備的なセファイドのマップは SMC が LMC と似て、長く伸びたバー と腕に付随する領域を持つことを示す。SMC は 20 kpc に及ぶ深さを持ち、 北東部は我々や LMC に近く、南西側が遠い。図3b を見よ。 図4=新発見セファイド 新しく 290 の古典セファイドが SMC の周辺部に発見された。幾つかを 図4に示す。 ![]() 図2.SMC 古典セファイドの CMD. 黒線=基本振動の理論的不安定帯。赤点= 基本振動星。灰色線=第1倍音理論帯。青点=第一倍音星。マゼンタ線= 第2倍音理論帯。シアン点=第2倍音星。 |
![]() 図3a.古典セファイドの周期・ウェッセンハイト関係。赤=基本振動。青= 第1倍音。シアン=第2倍音。分散は SMC の幾何学深度を示す。 ![]() 図3b.SMC での古典セファイドの分布。各点の色は距離を示す。 |
![]() 図5a.上: LMC の RR Lirae logP - Ks 関係。灰色線=等メタル量。 下:Ks - [Fe/H] 関係。灰色線=等周期線。 RR Lyrae は古く(> 10 Gyr), 低質量(0.6 - 0.8 Mo) でヘリウム核燃焼 段階にある星である。それらは水平枝に集まる。その近赤外変光巾は可視より ずっと小さく、光度はセファイドより暗い。我々は LMC 中の 70 RR Lyrae サンプルを解析した。 |
![]() 図5b.SMC RR Lyrae の Ks 位相変光曲線。周期は OGLE III から。赤線= ベストフィット。 そのメタル量を分光観測で求め、周期を OGLE III から 決めた。それらの周期-光度-メタル量関係を計算した。図5a に それを logP-Ks, Ks-[Fe/H] 面上に示した。 |
![]() 図6a.SMC 内 2662 RR Lyrae の P - Ks 関係。 得られた PKsZ 関係を用いて、基本振動する 2622 個の RR Lyrae 星距離を 求めて、 SMC の構造を探った。 |
![]() 図6b.SMC 複区間毎の RR Lurae 平均距離の分布。各点は 0.5 x 0.5 deg 2 を代表する。 図5b にはPKs関係を示す。 0.2 mag になる大きな散布度は SMC が視線方向に伸びていることの反映である。 図6にはその変光曲線の例を示す。SMC の3次元分布はほぼ楕円体である。 |
8 Mo 以下の星は AGB 星に進化する。特に中間年齢の AGB 星は化学 組成により M-型または C-型となる。それらは数百日周期の変光を 示す。最近 GAIA はその潮汐尾中に変光星を発見した。 | VMC サーベイはその周期の比較的短い期間の測光しかできない。 しかし、 2MASS や DENIS と組み合わせて、より正確な周期と平均等級を 求めることが出来る。平均 Ks の決定はより正確な周期光度関係 の導出につながる。 |
VMC の現状 VMC 観測は 80 % 完了した。様々なタイプの変光星に、少なくとも 12 回の 観測から、正確な平均等級が与えられる。数年以内に我々はこのデータを使っ て、マゼラン雲のより深い理解を目指す。セファイドと RR Lyrae を用いた SMC 解析は間もなく完了し、その結果は OGLE を用いた解析と較べられるだろう。 LMC とブリッジの解析がそれに続き、さらに AGB 星データが補足的な結果 を与えるだろう。 |
軌道史 異なる年齢の星種族の分布はマゼラン雲の軌道史を調べる助けになる。 最近のシミュレイションによると、LMC は銀河系に対する初回遭遇の途中に あるか、又は 5 Gyr という長周期軌道にある。初回遭遇が正しければ、 銀河系質量は 1,5 1012 Mo で、 LMC は宇宙初期からの質量を そのまま保持していることになる。 4MOST=今後 マゼラン系の更なる理解には多くの種類の星のスペクトル、固有運動、 視線速度情報が欲しい。さらに鉄存在量は年齢の推定に有用である。 それらは VISTA + 4MOST 装置による将来の研究課題である。このプロジェクト は 2022 年に開始され、5年間続く予定である。 |