The Morphology of the Magellanic Clouds Revealed by Stars of Different Age


M-R.L. Cioni, H.J. Habing, F. P. Israel
Astron. Astrophys. 358, L9 - L12 (2000)




 アブストラクト 

 マゼラン雲の DENIS カタログから作った、 (I-J,J) 色等級図の様々な箇所に 集まる天体毎に空間分布図を作った。それらの分布形態は互いに著しく異なる。 色等級図の各領域はそれぞれ異なる年齢に属している。大マゼラン雲は拡がった 丸い形をしており、中心から外れた明るいバー、中心核、不規則な渦状腕がある。 小マゼラン雲には明るい中心部と乱れた構造を示す。古い諸族と若い種族は 互いに中心がずれている。

 1.イントロ 

LMC と SMC 

 マゼラン雲は 0.2 Gyr 昔に銀河系と強い相互作用をした証拠がある(Westerlund 1997). LMC は Irr dwarf と分類されており、その最も明るい特徴は中心バーである。 これは棒渦状銀河に見られるものに似ている。その東の縁
は西側寄り我々に 近い。(Caldwell, Coulson 1986) バーの下にはより古い星の円盤が (Westerlund 1997)拡がっている。SMC の見かけは LMC よりずっと弱いバー、 それにウイングと呼ばれる東側の拡がりが特徴である。SMC は視線方向に奥行き が深い。ウイングとバーの北東部は南側より我々に近い。(Westerlund 1997)

最近のサーベイデータによる構造の研究 

 最近、異なる波長で大規模測光サーベイが行われ、LMC の大規模構造を 調べられるようになった。特にNIRデータは RGB, AGB 時期の星の進化 を調べるための向いている。

 最近 Zaritsky et al 2000 は SMC の非対称な見かけは主に若い星の分布 が原因で、古い星は極めて規則正しい形に分布していることを見出した。彼らの 図は見にくくて、中心に向かっての密度変化を評価することは難しい。 Weinberg, Nikolaev 2000 は LMC から 15 kpc 離れた潮汐デブリの存在を 指摘した。


 2.データ 

 DCMC カタログ 

 この論文は DCMC カタログ Cioni et al 2000 からのデータを使用している。 DCMC は I, J, Ks の内 2 バンドで受かった天体を全て載せている。範囲は、LMC が 20 × 16 平方度で、中心は (5h27m20s, -69°00'00"), SMC が 15 × 10 平方度で、中心は (1h02m40s, -73°00'00") である。 使用したサンプルには Ks で受かったかどうかに関係なく、I と J で観測できた 天体を全て含む。

 天体の区分 

 図1には LMC の CMD を示した。図をきれいにみせるため、3 バンド全てで検出 された星のみをプロットした。この画面を下のように3つに分けた。

(A): I < -4.64 (I-J) + 19.78  明るい矮星、ブルーループ星、超巨星(左から
   3番目の指)前景の矮星と巨星(左側の2本の指)。 若い種族である。

(B): I > -4.64 (I-J) + 19.78 で TRGB の上方。AGB 星

(C):  I > -4.64 (I-J) + 19.78 で TRGB の下方。主に RGB 星で古い種族。

I と J のみで受かった天体は画面の下側に集中している。 I, J, Ks の限界等 級は 18, 16, 14 である。測光エラーの結果、系列は暗くなると幅広になって行く。

 区分別の天体空間分布 

 LMC, SMC の3区分の天体に対してそれぞれの空間分布を作った。そのため、 0.2° × 0.2° ビンで数を数えそれにスムージング処理を施した。 等光線の値は対数で一定に区切られている。データが欠損している領域は内挿で 補った。その影響は図4以外では無視できる。そこでは一種の不連続さが見える。

図1 LMC 20 × 16 平方度の(I-J, I)図。平行線は TRGB(Cioni et al 2000)
   斜線 I = -4.64 (I-J) + 19.87 は区分線。


 3.空間分布 


 前景星の差し引きは行わなかった。その影響は図2上で銀河面方向にはっきり 現われている。他のマップでは前景線の分布はかなり平坦でマゼラン雲の特徴 を見るには影響しない。

 3.1.LMCの空間分布 


 円盤の配置 

 図2, 3, 4 の低密度側等高線はいずれも丸に近い形で、その軸比は傾斜角 i = 30° - 40° と合う。中心は(5h20m, -69°)主軸が約 13° で ある。Westerlund 1997 は古い円盤の星に似た値を与えた。この恒星円盤は HI 円盤(Kim et al. 1998)と形、大きさが似ている。円盤の中心はバー中心 の 30' 北にある。(図2を見よ。)

 LMC の 2 成分 

 我々は Westerlund 1997 の次の結論を再確認した:
(1) LMC は二つの成分、円盤とバー、から成る。
(2) 星の約半数は円盤、半数はバーに属する。
(3) バーの比率は若い星ほど高い。
この形状が一時的なものでないなら、 LMC は不可視物質の重力ポテンシャル中 に埋まっている(Sofue 1999)と考えざるを得ない。これは Stil 1999 の、LMC が 属する矮小銀河のクラス("fast rotators")はダークマターが支配的であるという 結論とも合致する。

 クラスA 

 図2はまだらで不規則な分布を示している。クラスAの星は 0.5 Gyr より若く、 非常に明るい主系列星から成る。4° 以上に広がるバーは図2ではっきり 見える。バーにははっきりした中心集中部分がある。30 Dor 領域はバーの 北東側に小さな特徴として見える。Shapley Constellation III は δ ≈ 67° の大きな模様である。バーの両端の長く伸びた模様は渦状腕の存在を 示唆する。これは、北西部の HII複合体 領域 N11 で最もよく見える。類似の構造 は、恒星複合体(Maragoudaki 1998), アソシエーションとHIIR (Bica et al 1995) の分布にも見える。

 クラスB 

 AGB 星は 1 Gyr 程度の比較的若い種族を代表し、明るいバーと中心核が 図3には見える。Shapley Constellation III は AGB 星でははっきり現れない。 幅広で微かな渦状腕がバーの南東端から始まり、(4h45m, -73°)で二つに 分かれている。これは、Bothun,Thompson 1988 がマゼラン雲の表面測光を 行った際に注意した特徴である。彼らの 1.1 < B-R < 1.35 図を見よ。 少なくともこの渦状腕は潮汐効果であるようだ。と言うのはこの腕は、 マゼラン雲ブリッジにつながっているからである。Staveley-Smith et al 2000. 最も外側の等高線は Kunkel et al 1997 による炭素星の分布と同じ形をしている。


図3.LMC クラス B. 等高線は 3, 5, 7, 10, 20, 30, 50, 100, 150 /0.04平方度
 クラスC 

図4は古い種族を表わす RGB 星の分布を示す。ここには再び明るいバーが見える。 バーの巾は若い種族のバーより著しく太い。前景星が最も下の等高線には影響して いる可能性がある。南の渦状腕ははっきりしない。しかし、図3の北側に見える 2 本の微かな渦状腕は図4でも α が 5h から 6h, δ が -64° から -68° への対応する模様として存在する。

 HI マップとの対応 

 Bothun,Thompson 1988 は LMC が他の矮小銀河と違って、はっきりした渦状構造 を持つ銀河と同じようなスケール長を有すると結論した。興味深いのは、図 2, 3, 4 に出た非対称渦状腕は Gardener et al 1998 の HI マップとよく一致 することで、それは彼らの力学モデルでよく再現される。




図2.LMC クラス A.
   等高線は 100, 125, 200, 400, 500, 800, 1000, 1200 /0.04平方度



図4.LMC クラス C. 等高線は 100, 150, 200, 250, 500, 600 /0.04平方度


 3.2.SMCの空間分布 


 SMC の構造は未だに理解されていない。Westerlund 1997. 我々のマップは異なる 年齢の種族が異なる分布をすることを示している。

 クラスA 

若い成分は図5に見られるように、 北東から南西への軸に沿って非対称な分布をする。南側では最外側の等高線は4つ の突起を示す。これらは潮汐効果を表わしているのかも知れない。少なくとも 東側と西側の突起はマゼラン雲ブリッジと向きが揃っている。密度が上がると北東 へ拡がり、SMC バーと平行になる。バー構造自身は若い星団の分布(Bica, Dutra 2000)、上部主系列星の分布(Zaritsky et al 2000) と同じである。星団、HIIR, アソシエーション (Bica,Schmidtt 1995) も南の突起部に見られる。若い星団は SMC バーの南西部に強く集中している。SMC 主要部の外側には2つの銀河系 球状星団 NGC 104 = 47 Tuc と NGC 362 が存在する。Stanimirovic et al 1998 による HI 分布図は若い星とよく重なる。

 クラスB 

 図6に見られるように、AGB 星の分布は若い星よりなだらかで、二つの明るい 中心がある。これは炭素星の分布 Hardy et al 1989 にも見られるものである。 東側のピークは若い種族のピークとも重なる。

 AGB 星分布の軸は、若い種族より傾きが寝ていて (PA &astmp; 75°) RGB 星 の分布と大変よく似ている。LMC の場合と同様、年齢が古くなると分布は規則的 かつなだらかになって行く。これは、Zaritsky et al 2000 の B-, V-バンド像 にも見えたことである。Kunkel et al 2000 の炭素星分布の最外側等高線も そうであった。Rebeirot et al 1983 の炭素星分布は図6の第2外側等高線を 満たしている。

 クラスC 

 図7に示す RGB 星の分布は AGB 星と似て、二つのピークを示す。西側の ピークは AGB に比較すると RGB でより強く出ている。東側のピークは 西側よりかなり若いようである。Stanimirovic et al 1998 が作った SMC の HI マップの最も強いピークは上の二つのピークの丁度中間に位置する。


図6.SMC クラス B. 等高線は 2, 5, 10, 15, 20, 25, 50 /0.04平方度


 古い種族はバーの主要部から 2° 離れた潮汐と思われる特徴まで 拡がっていることも注目される。HI の分布は古い種族に較べると東側に寄って いる。HI で明るく、若い種族の分布にも現れている SMC ウイングは古い種族 には全く出て来ない。


図5.SMC クラス A.
   等高線は 20, 30, 45, 60, 75, 100, 125, 200, 250 /0.04平方度



図7.SMC クラス C. 等高線は 50, 60, 75, 100, 125, 150, 200, 225 /0.04平方度


 4.結論 


 クラス分け 

 DCMC カタログから抽出した星を、CMD の領域で分けて、分布図を作った。 3つの年齢グループの分布図は全く異なる。若い種族は不規則な分布と渦状腕、 潮汐の特徴を持つ。若い種族の分布は星団、アソシエーション、HIIR, HI と 重なる。古い種族はスムーズで規則的な形を示す。

 LMC の特徴 

 LMC バーが円盤中心から著しくずれていることは LMC 重力ポテンシャルが
ダークマターによって支配されていることを示唆する。はっきり見える南側 渦状腕は SMC との潮汐作用の結果生じたものであろう。北側の2本の渦状腕 の性質ははっきりしない。

 SMC の特徴 

 SMC の AGN, RGB 分布に見られる二つのピークは目立つ特徴である。それらが HI 分布とずれているのも特徴の一つである。二つのピークは異なる平均 年齢を示す。若い種族が示す、比較的微かな東ー西構造(ウイングを含んで)は 多分潮汐効果の現れであろう。