Stellar Population in the Fields Surrounding the LMC Clusters NGC 2154 and NGC 1898 


Chiosi, Baume, Carraro, Costa, Vallenari
2012 MN 426, 1884 - 1892




 アブストラクト 

 二つの LMC 中間年齢星団 NGC 1898 と NGC 2154 周辺フィールドの星形成史 を調べた。また、NGC 1898 と周辺の小星団の年齢も与えた。NGC 2154 自体は Baume et al の研究があるので触れない。星団年齢は掃除済の CMD に等時線 をフィットして求めた。  星団の星種族ははっきりと二つに分かれた。NGC 2154 は平均年齢 1.7 Gyr で 巾 1 Gyr の継続した星形成を伴っている。他の星団は年齢 100 - 200 Myr で あった。近接領域の星形成史は "downhill-simple”アルゴリズム で求めた。 どちらの星形成史も 200, 400, 800 Myr, 1.6 Gyr, 8 Gyr に大きな星形成を 起こしている。これらは LMC-SMC, LMC - Milky Way 力学相互作用によるのだろう。





図1.上枠 (b), (c) : DSS-2 20'x 20'赤画像に重ねた 8.5'x8.5' 観測領域。 下: LMC 画像上の観測領域。

 2.観測とデータ処理 


表1.NGC 1898 の観測ログ


図2.(a):DAOPHOT B エラー。(b):DAOPHOT (B-R) エラー。 (c):F1 と F2 の狭い重なりでの測定B等級差。(d):同じく R 差。

 

表2.NGC 2154 と NGC 1898 領域での完全度テスト結果。


表3.ZVAR コードに使用した LMC の年齢・メタル量関係。

 


 3.星形成史を出す方法 

 (1)Bertelli の ZVAR コード 

 Bertelli の ZVAR コードは Girardi et al 2000 の進化トラックを用いて、 合成星種族を作成する。必要なパラメタ―の入力には年齢ーメタル量関係が 必要である。我々は Pagel, Tautvaisiene (1998) を使用した。表3にそれを示す。適用した初期質量関数は Kroupa 2002 の ものである。これは M > 0.5 Mo では指数 x = 2.3 のべき乗則、0..8 - 0.5 Mo で x = 1.3 である。  数Myr から 10 Gyr に至る各時間区分毎に 12000 星の星種族を作った。星の 分布は観測完全度の限界にまで IMF に従っている。

 (2)CMDに適用するグリッド  

 CMDに適用するグリッド、図3,4はその例、は最も重要な進化段階を 強めるように作る。各種族毎にターンオフが分解されるように質量分解を調整する。 一方、準巨星とレッドクランプでは質量分解は粗くする。
 (3)星形成史の決定  

 合成種族とグリッドを作った後は、星形成史の決定に取り掛かる。 ここで重要なのは測光エラーと完全度補正である。赤化補正も必要。 Westerlund 1997 に従って、E(B-V) = 0.08、(m-M)o = 18.5 を採用した。 全体の種族はサブ種族に係数を掛けて足して得られる。係数の決定には Nelder, Mead 1965 の dowanhill simplex 法による最適化を用いた。 N = サブ種族の数として、N-次元空間内での出発点で χ2 を計算する。そして何点かの計算で勾配を数値的に求め(多分最速降下法?) で極小値を探す。詳細は Chiosi,Vallenari 2007 を見よ。



図3.NGC 2154 付近のフィールド CMD.グリッドを重ねた。  

図4.NGC 1898 付近のフィールド CMD.グリッドを重ねた。  


 4.フィールド星形成史 

 4.1.NGC 2154 フィールド星形成史 


図5.NGC 2154 フィールド星形成史  

図6.NGC 2154 星形成史  



図7.NGC 2154 周辺フィールドの観測とモデル CMD

 4.2.NGC 1898 フィールド星形成史 


図8.NGC 1898 フィールド星形成史  



図9.NGC 1898 周辺フィールドの観測とモデル CMD

 5.NGC 1898 周辺の小星団の星形成史 

 NGC 2154 フィールド 

 図5,6から NGC 2154 フィールドの星形成は 100 - 200 Myr, 400 Myr, 1 - 2 Gyr, 6 Gyr, 10 Gyr に起きている。Olsen 1999 はバー領域の6か所 を調べて、 1 Gyr, 5 Gyr, 10 Gyr 超えの星形成を見出した。この星形成爆発 はおそらく、200 Myr 前の SMC - LMC 接近、1.5 Gyr 前の MCs - MW 接近 の結果であろう。ただし、これは固有運動の決定精度に大きく依存する シナリオである。もう一つ、LMC の星団形成率にある有名な 3 - 10 Gyr の ギャップはこの領域には当てはまらない。これは Olsen 1999 と同じである。

 NGC 2154 

 NGC 2154 の年齢 1.7 Gyr (Baume 2007) は周辺フィールドの星形成ピーク 1 - 2 Gyr の内部にある。Subramaniam 2004 は星団形成率とフィールド星 形成率は 30 - 100 Myr では反相関し、300 Myr の先では相関すると述べたが、 NGC 2154 領域の結果はそれと一致する。

 NGC 1898 フィールド 

 NGC 1898 はバーの SW 縁にある。込み具合と天候のため観測精度は NGC 2154 より悪い。図8に示したように、NGC 1898 フィールドの星形成は 200, 400, 800 Myr で起き、NGC 2154 と似る。
NGC 2154 ほど確かでないが 6 Gyr にも 小さなピーク(本当には思えない)がある。2, 8 Gyr のピークがある。 星形成はより均質で、 1 Gyr 以下の星に較べ、1 Gyr 以上の星の割合が NGC 2154 付近よりずっと高い。実際、若い星種族で較べると、 NGC 1898 領域は NGC 2154 領域の2倍であるが、古い種族ではそれが10倍になる。 これは Olsen 1999 の結論とも一致する。

 NGC 1898 領域の小さな星団 

 NGC 1898 領域には小さな星団が幾つか見られる。星団からの統計的フィールド星 除去の方法は Vallenari et al 1992 と Gallart et al 2003 に詳しい。図11に NGC 1898 と周辺星団の7つに対してのその手続きを示す。色等級図上方、 B < 19 を Marigo et al 2008 のモデル等時線と比較して、表4の年齢を 定めた。図1に示す NGC 1898 周辺星団の全てに [Fe/H] = -0.30 を適用した。
 NGC 1898 周辺星団の年齢は 100 - 200 Myr に集中している。ただし、フィールド 星に較べ星団だけが特別にこの年齢帯での星形成を代表しているわけではない。 若い星の形成が領域全体で起き、星団の場所にのみ集中したわけではないことを 意味するのであろう。(論理がよく分からない。)測光深度の関係でより古い 種族の形成ははっきり分からないので、ここでは最も新しい星形成活動の検出 をしたと考える。



図10.NGC 1898 及び周辺星団 HS 203, BDSL 1096, BSDL 1089 のフィールド星 混入除去。左:星団領域の CMD. 中:対応する比較領域。右:除去作業後。 破線=Marigo et al 2008 等時線のフィット。図中に星団パラメタ―を記す。




図11.BDSL 1104, BSDL 1112, BSDL 1117, BSDL 1130 のフィールド星 混入除去。左:星団領域の CMD. 中:対応する比較領域。右:除去作業後。 破線=Marigo et al 2008 等時線のフィット。図中に星団パラメタ―を記す。

 6.結論 

 星団年齢 

 NGC 2154 星団の平均年齢は 1.7 Gyr で、星形成が 1 Gyr の長さに亘って 続いたことを示唆する。(Bauem 2007). 他の星団は 100 - 200 Myr の年齢を 持つ。
 フィールド年齢 

 NGC 2145 フィールドでは、 200, 400, 800 Myr に星形成活動の高まりが 見られた。 NGC 1898 フィールドでは 1, 6, 8 Gyr で 1 - 6 Gyr の間にはっきり したギャップが見られる。 これらは 200 Myr 前の LMC - SMC 近接と, 1.5 Gyr 前の MCs - MW 近接に関係するらしい。