Mapping of the Extinction in Giant Molecular Clouds Using Optical Star Counts


Cambresy
1999 AA 345, 965 - 976




 アブストラクト

 USNO 精密測定器による可視光データにウェーブレット分解とアダプティブ グリッドを応用した星計数から導いた分子雲の減光マップを示す。減光分布から 総質量と最高減光度を導いた。等減光線内部の質量と減光量との関係は雲同士で 類似していることが分かった。これから、減光最大値を 5.7 - 25.5 mag の間で 外挿できた。質量の約半分は可視減光が 1 以下の層に存在していることが分か った。大きな領域 (∼ 250 deg2) に星計数を応用するのは 分子雲質量を求めるには、強力で、かなり直接的な方法である。この手法を 全天に適用して新しい分子雲を発見でき、実際この論文では Lupus 複合体で 第4の 104 Mo 雲の発見に成功した。

 1.イントロ 

初期の星計数法 
 星計数法は Wolf 1923 が提案し、シュミット乾板に応用されてきた。 この方法は、等級分布を減光領域と非減光領域とで比べるものである。空間 分解能を上げるため、 Bok 1956 は測光限界までの数、N(m < mlim)を求める方法を提案した。この方法では1等級毎の星数 よりずっと多くなるので、測定区画を小さくできる。  Gregorio Hetem et al 1988 は Bok 法を用いて、南天のいくつかの雲の 減光マップを作った。Andreazza, Vilas-Boas 1996 は南の冠座と狼座の 暗黒雲の減光マップを得た。星計数は 30 倍顕微鏡による眼視測定で行われた。

 最近のデジタル星計数法 
 デジタルデータにより、自動計数法が開発された。Cambresy et al 1997 は DENIS データを用いてカメレオン座 I 雲の減光を測定した。

 論文の目的 
 この論文では、USNO-PMM によりデジタル化したデータを用いて巨大分子雲 の減光マップを作ることである。



 2.星計数 

 2.1.星計数の原理 

 古いやり方 
 星計数は局部星密度の比較に基づいている。古典的星計数の欠点は 格子状の区画を必要とすることである。小さ過ぎると減光が強い時 空区画が生じる。逆に大きすぎると空間分解能が下がる。

 新しいやり方(1)区画 
 新しいやり方では区画の中の星数が一定になるように大きさを区画 毎に調整する。実際には区画内の星数を 20 として、ウェイブレット 分解によるノイズの濾過を行った。方法の詳細な記述は Cambresy 1998 ASSL 230 p157- にある。本論文では 24 巨大分子雲をこの方法で調べた。 係数とフィルタリングは完全に自動化されている。オリオンだけでも 250 deg2 という広さなので、背景星密度の銀緯変化を補正 した。

 新しいやり方(2)表式 
 減光は次の式で求まる。
Aλ = 1 log ( Dref(b) )
a D


ここに、Aλ = 減光、D = 背景星密度、Dref = 参照区域の星密度( b による)= Do e-α|b|、a は、
a = log(Dref) - cst.
mλ


ここに、mλ = 波長 λ における等級である。 log(Dref) = log(Do) - α|b|log(e)
 減光マップの作成 
 USNO-PMM により PSSS と ESO 乾板をデジタル化した。マップ上の黒丸は 4 等より明るい星である。

 2.2.明るい星の影響 

 明るい星は周りに大きな円盤を作り、暗い星の検出を妨げる。また、アン タレスのように周りに星雲があるとやはり暗い星の検出を妨げる。反射星雲 は形が不規則で補正が難しい。B 乾板より星雲が暗い R 乾板を使用すると 改善される。

 2.3.不定性 

図.


 3.減光マップから導かれる性質 

 3.1.分子雲物質のフラクタルな分布 

 フラクタル 
 フラクタル=拡大縮小で変わらない は分子雲の性質である。雲の フラクタル次元は初め雨の降る雲の境界に見出され、火星の雲でも見つかった。 星間雲もフラクタル構造が見出されたが、 Blitz,Williams 1997 は 0.25 - 0.5 pc でそれが破れることを示した。一般にフラクタル性には 下限巣スケールが存在するのでこれは当然である。

 フラクタル構造と質量 
 雲のフラクタル次元 = D のとき、半径 L の球内の質量 M は M ∝ LD の関係がある。図10には牡牛座暗黒雲における等減光線内部 の質量と減光量の関係を示す。図の関係は Av ≤ 5.5 で線形である。減光 がもっと大きくなると質量が追い付かなくなるが、これは星係数では減光を 過少に評価するためであろう。

 以下かなり省略。 



図10.牡牛座暗黒雲で、等減光線内部の質量と減光量の関係。 annotation の数字は内部領域の面積(平方度)

表1.暗黒雲の性質。距離は文献から。質量は回帰線、 log M(Av) = log(MTot) + a × Av から決めた。 Avmax は星計数からの最高値。Avex は 上の式の外挿値である。最後の列は勾配 a である。



 4.個々の暗黒雲へのリマーク 

 4.1.帆座(Vela)とウミヘビ座(Serpens) 

 帆座とウミヘビ座では log[M(Av)] と Av の間に線形関係が存在しない。 外挿値は存在しないが、しかし、下限は直接に、帆座で 5.7 104 Mo、牡牛座で 1.1 105 Mo と求まる。線形関係が存在 しないのはなぜか分からない。


図1.B 乾板から求めた帆座減光マップ。(J2000座標)

 4.2.竜骨座(Carina) 

 log[M(Av)] と Av の勾配は異常で、外挿値 82 mag は信用できない。おそらく 反射星雲の光が原因であろう。


図2.B 乾板から求めた竜骨座(Carina)減光マップ。(J2000座標)



図13.R 乾板から求めたウミヘビ座減光マップ。(J2000座標)


 4.3.はえ座(Musca) - カメレオン座(Chamaeleon) 

 Chamaeleon I は既に DENIS J バンドで減光マップ(Cambresy et al 1997) が 求まっている。その時の Avmax = 10 mag であった。今回 B 乾板からは Avmax = 5.2 mag であった。この差は当然である。 重要なことは B 乾板の外挿値が 12.9 で J 減光から求めた値と近いことである。 Chamaeleon II でも Avmax = 10 mag であり、外挿値 = 12.3 であった。コアの減光を調べるのは赤外データが明らかに必要である。

 減光マップは IRAS 100 μm マップとよく似ている。この領域には ダストを特別に加熱するような大質量星がなく、減光と遠赤外の相関を 研究するのに適している。



図3.R 乾板から決めた、はえ座(Musca) 暗黒雲の減光マップ。



図5.B 乾板から決めた、カメレオン座(Chamaeleon) 暗黒雲の減光マップ。





図4.R 乾板から決めた、石炭袋(Coalsack) 暗黒雲の減光マップ。

 4.4.石炭袋(Coalsack) とさそり座(Scorpion) 

 石炭袋(Coalsack) 
 石炭袋(Coalsack)の縁には南十字星 (α, δ) = (12h26m36s, -63°05'57") がある。この雲はダストの溶け合いで従って(?)距離 が決めにくい。ここでは 150 pc とした。 Avmax = 6.6 mag, 外挿値 = 6.3 mag である。 Nyman et al 1989 は CO サーベイ から、この領域を4つに分けた。領域 I, II は北側、 α Crux の 近くで、減光マップと CO の相関はよい。減光が見られない領域 III は 乾板スキャンの誤りのためかも知れない。同じく領域 IV もミスかも知れない。
 さそり座暗黒雲 
 さそり座暗黒雲は ρ Ophiuchus 暗黒雲の近くにある。距離は ρ Ophiuchus と同じ 120 pc として、雲質量を求めた。 Avmax = 6.4 mag, 外挿値 = 7.0 mag である。



図9.R 乾板から求めた、さそり座暗黒雲減光マップと ρ Ophiuchus


 4.5.南の冠座 (Corona Australis) 

 Andreazza-Boas 1996 は星計数を用いて、南の冠座 (Corona Australis) 減光マップを作った。我々の方法はそれと非常によく似ている。ただし、 彼らは一定の大きさの区画を用いたので、減光の強いところでは二つの星の 平均距離が区画サイズより大きくなり、暗黒雲コアをよく調べられなかった。 中心部に我々が4つのコアを見出したところで彼らは平坦な領域を得た。



図6.B 乾板から決めた、南の冠座 (Corona Australis) 暗黒雲の減光マップ。


 4.6.IC 5146 

 Lada et al 1994 は IC 5146 の CO 観測を行った。東側の二つのコア の内、減光マップには一つしか現れなかった。これは明るい星雲 Lynds 424 の光で星計数が妨げられたからであろう。  Lada et al 1994 はまた、 H-K カラー超過から減光マップを導いた。 H-K カラーはスペクトル型に対しあまり変化しないので、減光を導く のに便利である。



図7.R 乾板から求めた、IC 5146 減光マップ


 4.7.狼座 (Lupus) 

 ヒッパルコスの距離決定の結果、狼座暗黒雲は最も近い星形成域になった。 Schwartz 1977 はこの暗黒雲を4つに分けたが、立原他 1996 が第5成分を 発見した。この論文は第6成分の発見を報告する。  


 


 
 


 


 



図.B 乾板から決めた、狼座 (Lupus) 暗黒雲の減光マップ。


 4.8.ρ Ophiuchus 暗黒雲 

 ρ Ophiuchus 暗黒雲は図9として前の方に載せた。加熱星 の位置とダスト温度分布から3次元分布を作れる可能性がある。  


 


 

 4.9.オリオン 暗黒雲 

 Maddalena et al 1986 は CO マップを示した。



図11.R 乾板から求めた、オリオン、一角獣 I.バラ星雲、一角獣 II 減光マップ


 4.10.牡牛座 

 大西他 1996 は C18O 観測から 40個のコアを同定した。 それらは全て減光マップににも現れていた。この領域もカメレオンと同様 強い恒星輻射を受けない。このため、CO, FIR, 星計数の比較に便利な 個所である。



図12.R 乾板から求めた、牡牛座 減光マップ


 5.結論 

 背景星の仮定 
 我々は「全ての星は背景星である」という仮定を立てる。この仮定から のエラーは容易に評価できる。式1は以下のように書ける。
Aλ = 1 log ( S ) + cste(Dref)
a nb


ここに、S = 表面積、nb = 星の数である。もし星の 50 % が前景星だったら 全て背景とした場合に比べ ΔAλ = (1/a)log 2 の 差が生ずる。幸い、今回調べた雲は近傍にあり、減光の強いところ以外では この差は小さい。