アブストラクト600個以上の惑星状天体に対し、平均星雲パラメター(?)の仮定に基づいた 測光的方法で、星雲までの距離を定めた。このため、約100個の星雲に対し、 減光係数を計算した。それを銀河系ダストモデルに使用した。このモデルは光学的に 厚い星雲までの距離決定に使われた。光学的に薄く、半径 0.08 pc < R < 0.4 pc の惑星状星雲の空間密度は 太陽付近で 50 kpc-3、銀河系全体の光学的に薄い星雲の総数は、 銀河中心までの距離 = 8 kpc として、 3 × 105 個である。 惑星状星雲の誕生率は白色矮星のそれと一致する。 |
1.イントロ惑星状星雲の測光的距離ここ数年で惑星状星雲までの測光的距離決定理論が収斂してきた。この方法では 惑星状星雲は一次系列をなすと仮定する。星雲の半径と距離は、角半径と Hβ および Hα フラックスから決まる。 減光の決定 本論文では、電波、可視測光から約100の星雲までの減光を決め、銀河内の 星間物質分布に合わせた。その結果、600以上の惑星状星雲までの距離を決める ことができた。ただし、星雲がライマン連続光に対し厚い場合は距離の上限となる。 空間密度 IV節ではそれら厚い星雲を扱う。V節は星雲の分布と空間密度、寿命を論じる。 |
減光 c 二つの c 決定法 最良の減光データは、パッシェンライン対バルマーラインの比か電波フリーフリー 連続光対 Hβラインの比から得られる。理論値は電子温度に対して決められ、その 値からのずれは星間減光に帰せられる。 パッシェンとバルマー線による c の決定 明るい星雲のパッシェンラインの観測は主に O'Dell 1963 により行われた。減光 定数 c は、Hβ 線における対数減光量で、次の式で与えられる。
ここに、(P/B)Oは観測されたパッシェンとバルマーの強度比、(P/B) Cは Baker-Menzel Bタイプモデルでの理論値である。Δ f λは赤化関数のパッシェン線とバルマー線とでの値の差である。 計算では T = 5000K が仮定された。表1の第3列には減光定数Cが載せてある。 電波フリーフリー放射と Hβ線からの c の決定 もっと多くの星雲では、フリーフリー放射を使って、cを求める。フリーフリー の体積放射率 εω は式(2)にある。(省略) 一方、Hβ の体積放射率 ε(Hβ) は 4πε(Hβ) = Ni Ne α(Hβ)hν(Hβ) (3) ここに、 α(Hβ)は Hβ 線の有効再結合係数である。式(2)、(3) から、光学的に薄い電波フリーフリーと Hβ 線のフラックスの比、[Fνdν/ Fc(Hβ)]が式(4)として書ける。
ここにFc(Hβ) は真の(減光を受けない)Hβ のフラックスである。減光定数 c は、
電波観測データと Hβ フラックスデータ フリーフリーの観測には波長 10 cm を標準波長にする。この波長は、光学的 厚さと広い観測可能性との両立から選ばれた。表面輝度の高い星雲の多くが 10 cm では光学的に厚い。しかし、それらの星雲はパッシェン・バルマー線の 観測があるので大丈夫である。 観測の第1ステップは出来るだけ多くの星雲の電波スペクトルを得ることである。 このため、Parek, Kohoutek の惑星状星雲カタログを用いる。表1にはそれに いくつかを追加した。これらを眼視でつないでスペクトルを作り、波長 10 cm でのフラックスを決める。 Hβ フラックスデータもParek, Kohoutek カタログから得た。 電子温度の謎=「水素温度」 理論式(4)の評価には電子温度が必要である。可視域禁制線の観測は 1000 - 1500 K を示唆する。しかし、ここ数年、水素の低励起再結合線の比から決めた 電子温度は禁制線温度の半分くらいになるという結果が出てきている。これらの 「水素温度」が物理的な温度なのか、再結合過程の理解不足によるものか結論 が出ていない。 例として IC 418 を挙げると、バルマー連続光と Hβ との比から 4800 K, 電波連続線から 12,500 K である。O[III] からの温度は後者に近く、禁制線の 理論は信頼度が高いので電子温度としてはこちらが正しいであろう。 | 「水素温度」使用の正当性 しかし、減光の導出に用いるのは再結合線の比である。したがって、減光定数の 式に入れるべきはこの比から導出される「温度」を用いる必要がある。この「温度」 は減光がない時の再結合線の比を正しく表わすのであるから。本論文では 「水素温度」= 5000 K を全ての星雲に適用する。 図1は「水素温度」採用の妥当性を示すものである。上図は「電子温度」5000 K を用いて計算した減光量 c であり、下図は禁制線からの温度を用いて決めた減光量 c1 をプロットした。図中矢印は Arp 1965 の銀河計測から決めた 銀極方向減光量 0.2 等 である。上図は銀極減光量と合致するが、下図は受け入れ 難いほど低い減光量となり、極では負になってしまう。この c1 は 表2に載せてある。 このように、物理的な温度として正しいかどうかは問題であるが、低い「水素 温度」は減光定数を決めるのには使える。バルマー連続と Hβ との比から きまるこの「水素温度」が電波と Hβ の比にも適切かどうかはっきりしない。 しかし、星雲の物理がもっとよく理解されるまでは、この方法を使うしかない。 それに、「禁制線温度」を採用してもその結果の距離への影響は 10 % 程度である。 表1 観測減光の提示 (4), (5)式を使っての c の決定は逐次近似的に行う。Hβ フラックスは表3 に載せた。表1には 10 cm 電波フラックス、c が載せてある。表1の第4列 ウエイトは電波, Hβ フラックスの精度を数字にしたもので2が信頼度高 である。 ![]() 図1 星間吸収 c 対 |csc bII| 「電子温度」= 5000 K を 上の c の計算に用いた。一方、禁制線から導いた温度は下の c1 の計算 に用いた。矢印は銀河観測から導いた銀極での減光量。 ![]() |
Seaton の関係式 惑星状星雲の実半径を求める際の仮定として下の2つを考える: (1)あるマス、温度、フィリングファクター、He/H 比を持つ完全電離プラズマ (2)距離と整合する減光を与えるような星間物質分布 Seaton 1968 は次の関係式を提案した。 R = K S-1/5 (6) ここに、R は 星雲半径(pc)、S は減光補正済み表面輝度(erg cm-2 sec -1) d = 距離(pc), θ = 角半径, F = Hβ フラックス, c = 減光とすると、 F = S R2d-210-c = R-3 d-2(減光) = θ -3d-510-c なので、 log F = -5log d - 3 log θ - c log d = -1.31 -0.2 log F - 0.6 log θ - 0.2 c (7) これは、 log K = 17.18 (cgs unit) の時だが、一般には
ここに、M = 星雲マス、y = N(He)/N(H), α(Hβ) = 有効 Hβ 再結合 係数、ε = フィリングファクター(半径 R の球内で放射物質の占める体積比) である。 K の評価は難しい。 式 (7), (8) は H α フラックスが得られる場合には調節可能となる。 式(8)に入る物理量は独立に得ることができる。Kaler 1970 によると、 ε = 0.65, y = 0.14, 「水素電子温度」= 5000K の時、α(Hβ) = 5.38 × 10-14 である。これらから式(8)を解くと、 M = 0.18 M๏ となる。この値は Seaton の最近の値と近い。 |
距離評価 我々はまず式(7)を解いて、減光量が測られている星雲の距離と半径を出す。 それらの結果は表1にまとめられている。計算に用いられたフラックス、角半径は 表3に載せてある。 残念ながら、減光量が分かっている星雲はほんの少しである。したがって我々は 銀河系吸収モデルを作って、距離と吸収を同時に決めることを考える必要がある。 星間物質分布モデル 減光は二つの成分を持つ: 1:Perek 吸収 αp = αc/(1 + m2) 2 (9) ここに、αpは Hβ 減光(等級)、 m2 = (ω/ap)2 + (z/cp)2、 ω と z は銀河系円柱座標である。αc は銀河系中心での 単位質量(体積?)当たりの吸収量であり、ap と cp は調整可能な 定数である。 銀河系内座標が分かっている星雲に対しては、(9)式を積分して星雲までの減光量 が計算できる。この減光量を(7)式に代入すると新しい距離が得られる。この様にして 逐次近似で距離と減光の二つを同時に決められる。 2.渦状腕 色々な、ap と cp の組み合わせで試した結果、渦状腕 成分を加える必要があるという結論に達した。最適のパターンは Mills spiral 1964 で表わされることが分かった。 ω = 0.214 R๏ exp(+0.056θ) (11) |
この渦は Winnberg 1968 の 21 cm マップに良く合う。渦状腕の減光は、 αS = αCS exp(-m S2) (12) ここに、 mS2 = (ξ/0.24)2 + (ζ/0.12)2 (13) ξ, ζ は腕の断面を記述する直交座標である。式(13)中の 0.24, 0.12 は 腕の半値厚、銀河面を縦に 0.2pc, 横に 0.4pc、を表現している。 α CS は腕中心での単位長さ当たり吸収強度で、次のように銀河系全体で一定と した。 αCS (Hβ) = 3.2 mag/kpc, αCS (Hα) = 2.0 mag/kpc 星雲が銀河中心から 5 kpc 以内にいる時は、計算上の理由から渦状腕減光は抑え られる。しかし、その辺りでは減光量が大きすぎて惑星状星雲は見つからないので この手続きには何の影響もない。 減光の数値計算パラメター 計算に用いられた数値は、まず Perek 分布に対し、 ap = 10.8 kpc, R๏ = 10 kpc の時 ap = 8.65 kpc, R๏ = 8 kpc の時 cp = 0.15 kpc αC (Hβ) = 5.48.2 mag/kpc, αC (Hα) = 3.43 mag/kpc これらの値は太陽近傍 Hα 波長で 1 mag/kpc を与える。c の計算は 2.5 c (Hβ) = ∫0 d(αp + αs)ds Hα, Hβ フラックス 最良の場合、Hβ フラックス が光電観測された。多くの場合、写真可視等級 mn を Hβ フラックスに変換する必要がある。O'Dell 1962 によると、 mn = -2.5 log Fβ + 15.55 Abell 1966 は 写真レッド等級 mpr とレッドフラックス Fred の変換を、 mpr = -2.5 log Fred + 14.97 で与えた。Fred には、 Hα と [NII] が含まれる。 |
測定間の変換 これまでに出てきた測定をまとめると Abell(1966) の単位では、 log Fred = -0.4 HA + 2 log θ - 5.384 ここに、HAは、mag/sec2、θ は角半径(秒) Parek(1963) の単位では、 log Fred = -0.4 HP + 2 log θ - 8.54 log F(Hβ) = -0.4 HP + 2 log θ - 9.26 多くの惑星状星雲では距離の推定は Hα と Hβ の両方を用いて行われる。この 場合は相互チェックが可能になり、 Hα を使うことの正当性を確かめることができる。 と言うのは、Hα フラックスからは、[NII] ラインを適当に引かなければならないからだ。 我々は以下の仮定を置いた。 [NII]6584/ Hα = 0.43, [NII]6584/[NII] 6548 = 4.3 この仮定によると、[NII]6548/ Hα = 0.43/4.3 = 0.1 なので、 Fα = (1/1.53) = 0.6536 Fred 距離計算 距離は、二つの仮定、R๏ = 10 kpc と 8 kpc、のそれぞれに対し 計算されたが、Johnson 1968 に従い、 8 kpc の方のみ載せてある。表1の星雲は表3 にもこの方法で求めた値が比較のため載せてある。 この距離決定法は、星雲がライマン連続光に対し光学的に薄い場合のみ、正しい。 もし、光学的に厚いと星雲の一部はライマン連続光で照らされない。すると仮定した より小さい質量を仮定した質量と看做してしまい、その結果星雲の距離を大きく 見積もってしまう。 光学的に薄い星雲半径の範囲 Seaton によると、星雲が膨張していくにつれ、密度が下がり光学的に薄くなる。しかし、 時間が経過し、もっと膨張すると星が暗くなって行き星雲は再び光学的に厚くなる。 したがって、星雲が光学的に薄いのは、 R0 ≤ R ≤ R1 の間だけである。Seaton 1966 は、R0 = 0.06 pc, R1 = 0.6 pc であることを発見した。現在の距離スケールは当時より 1.5 倍小さいことを考慮すると、 R0 = 0.04 pc, R1 = 0.4 pc である。 |
光学的に薄い半径の下限 R0
Seaton によると、光学的に厚い星雲の半径をそれが薄いと仮定して得た値は
2R0 を越えない。したがって、表3で半径が 0.08 pc と 0.4 pc の
間にある星雲の距離と半径の信頼度は高い。 R0 の正当性に関しては図2が興味深い。光学的に厚い星雲では Δc が正になるはずだが、R = 0.04 pc で鋭い落ち込みがありそれ以下の データ点がない。また、R = 0.04 - 0.08 pc の間に Δc 大の星雲が集中している。 これらは、R0 = 0.04 pc と考えると自然に理解できる。 光学的に厚い星雲の状況はやや複雑である。それらの天体は距離を過大に見積もり、 その結果減光も大きく評価している。しかし、距離が $sim; 10-0.2c と なるので、正しい減光が採用された時よりは影響が緩和される。 図2に示した Δc の値は R0 < R < 2R0 の星雲が光学的 に薄いか、厚いかを決めるのに使える。もし、Δc ≈ 0 であるなら、 星雲は多分光学的に薄い。 R0 に関して、表3を調べると、 R < R0 となっている のは、13天体しかない。それらはフラックスの測定ミスである可能性が強い。 図3には、半径 R > 2R0 の星雲について、表1からとった観測減光を 表3からの計算減光に対してプロットした。両者の一致は驚くほどである。 似たような関係は図4にも見られる。ここでは、 R < 2R0 の星雲を 扱っている。従って、光学的に厚い星雲も混じっている。その場合、距離が遠くなり過 ぎる。そのために、図4の点は 45 ° 線の右側に分散している。 系統誤差のチェックは図5で行われた。この図では Δc を銀経 l に対して プロットした。図の白丸は |b| < 10°, 四角は 10° < |b| < 40° の天体である。40° 以上になると Δc が小さすぎて意味を 成さない。図を見ると幾分か系統的な傾向があるようにも見えるが、判断できるほど データ点の数が多くない。 NGC 6369 と NGC 2438 の2天体は他と離れているので注意が必要である。両者は 共に光学的に薄く見える。電波観測は 0.1.f.u.以下でエラーが大きい可能性が ある。 ここに提示した星間吸収モデルは銀極で 0.25 mag の減光を与え、これは図1と 合致する。 モデルの問題点 おそらく本論文で使用した距離決定法の最大の問題点は、全ての星雲が同一である と仮定した点にあろう。Kaler 1970 は He/H 比が星雲間で大きく異なることを示して いる。また、写真を見るだけでフィリングファクターが星雲毎に大きく変動すること も分かる。また、星雲質量が広い巾に渡っていることもかなり確かである。その上 電子温度の問題もある。 式(8)のKには、質量、He/H 比、フィリングファクター、電子温度が含まれて いることに注意せよ。個々の星雲質量を決めるのは最良の場合でも困難であるから、 他の観測可能なパラメターに観測値を入れるのは適切とは言えない。いずれにせよ、 それらの量は K の中に低次の指数で入っていて変動の影響は小さい。 ![]() 図3.0.08 pc < R < 0.4 pc の光学的に薄い星雲に対する、観測減光と 表3から計算された減光度との比較。 |
![]() 図2.Δc = 表3で計算された減光度と表1の観測減光度の差。 横軸 R は |b| < 10° の星雲の表3半径。 ![]() 図4 半径 R < 0.08 pc の星雲について、観測減光量と計算減光量の比較。 光学的に厚い星雲が混ざってきて、点の分散は図3より悪い。 ![]() 図5.Δc = 計算減光 - 観測減光 を銀経 l に対しプロットした。 |
電子温度 「水素温度」の使用は直截にはKに影響を及ぼさない。と言うのは、不定性が 他のパラメターの形ですでに吸収されているからである。電子温度を 5000 K から 12,000 K に上げると、式(7)から減光量を 0.19 下げる。これは Seaton(1968) の 式(6)によると、距離を 10% 下げる。この量はKの不定性以下である。 他の方法で求めた距離との比較 光学的に薄い星雲に対しては、本論文の方法でかなり良い距離の値が得られることは 表4を見ると分かる。そこには表1の距離と他の方法で得られた距離が比較してある。 表の2天体は分光的距離、4天体は画像の膨張率と視線速度の比(Liller, Welther, Liller 1966)から求めた距離、最後の4つは Lutz のD論から採った、観測減光量と 星の現行量ー距離プロットから出した距離である。 2天体以外では一致は満足のいくものである。Seaton (1968) の K 法は大変よいこと が分かる。 Perek, Kohoutek 1967 が出した距離を以前に求められた距離と較べると面白い ことが分かる。半径とフラックスに微かな周辺部まで含んだ星雲全体の値を使っても、 中心部の明るい部分のみを使っても計算される距離には無関係なようである。 多くの場合、星雲までの距離は複数の方法で測られている。我々は距離を信頼度に 応じて並べた。電光測光された星雲は信頼度が高い。一般には様々な手法で決められた 距離の一致は良好である。 | ![]() 表3の距離と半径に関し、非常に重要な点は角半径が1秒以下の星雲が含まれている ことである。この値は通常は上限値であり、したがって距離、実半径は下限である。 しかし、問題はさらに複雑で、もし星雲が光学的に厚ければ距離は上限値ということに なる!したがってこの様な場合には数値の扱いには注意が必要である。 |
図6には光学的に薄い星雲の分布を銀河面上に投影した。また、図7にはZ軸と
太陽ー銀河中心軸からなる面への投影を R๏ = 8 kpc を仮定して
プロットした。
4.ダスト距離これまで、惑星状星を同一の性質を持つ天体として距離を決めてきた。何度も指摘 してきた通り、ライマン連続光に対し光学的に厚いと距離を大きく見積もりすぎる。![]() 図6 銀河面上の光学的に薄い惑星状星雲の分布。太陽は(-8kpc, 0kpc) に位置する。 |
光学的に薄い星雲では、観測減光と計算減光との一致が良好であった。そこで、
やり方を反転して、(1)銀河系ダスト減光モデルと(2)観測減光とによって
光学的に厚い星雲までの距離を計算する。用いる式は(9)−(13)である。この
方法は、|b| < 1-° で Δc が正の天体に限定する。高銀緯の星雲は
明らかにダスト層の外側にあり、距離と吸収は独立になるのでこの方法は使えない。 この方法で求めた「ダスト距離」は表1の第(7)、(8)列に載せた。エラー はファクター2くらいあるが、それでも厚い星雲に対する距離の精度を大幅に上げた と言える。この方法は電波データが増加するとさらに有用になるであろう。 ![]() 図7 X-Z 面への惑星状星雲の投影。太陽は(-8 kpc, 0 kpc) |
この論文では出来るだけ多くの惑星状星雲の距離を求めることを主眼とした。選択
効果があるので、統計的扱いは困難である。厳密な処理は後の論文に書く。ここ
ではラフな結果を述べる。中心的な問題は光学的に薄い星雲、つまり 0.08 pc <
R < 0.4 pc の局所密度である。R0 < R < 2R0 の
天体は捨てた。すると、 1.半径分布 太陽からの距離に対しその距離内の星雲数を 1 kpc 以内でプロットすると、 図8のようになる。半径 R = 0.08 - 0.4 pc の星雲は光学的に薄いと仮定し、 さらに等速膨張に対して期待される各半径枠内で均等な分布は、選択効果により 阻害されていると考える。 図8の横軸は R =R/0.08pc である。図の点線は Seaton 1966 の主張、 N( R ) = N(5) 1 ≤ R ≤ 5 N( R ) = N(5)(5/ R )19/6 R > 5 R = 5 は R1 に対応する。 ここで強調したいのは、もし R > R1 の星雲が光学的に薄くても、 それらを統計的な処理には用いるわけにはいかない。なぜなら、表面輝度が下がると 検出率が下がってそれが実際に図8の R > R1 で起きていることだから である。選択効果を補正すると、太陽から 1 kpc 以内の惑星状星雲の数は 52 である。 すると、局所密度は、 DL = 52/(4π/3) = 12.4 kpc-3 半径 0.5 kpc の星雲数24からは局所密度 = 46 kpc-3 が得られる。 星雲が太陽の周りを球対称には分布していないことを考えると、後の値の方が正当 である。厚み 0.5 kpc × 2 = 1 kpc でも厚すぎる。 ![]() 図8 太陽から 1 kpc 以内の惑星状星雲の半径分布。点線は R > 0.08 pc の星雲が R > 0.4 pc で光学的に厚いという仮定でのモデル分布。 |
2.Z方向分布 太陽から半径 1 kpc の円柱内で光学的に薄い星雲のZ分布を以下のように定めた。
これは局所密度 DL = 196/&pi = 62.4 kpc-3 に対応する。 3.Allen 1954 の解析 Allen は明るい20天体を解析した。図9には log N 対 mn がプロット されている。図には明らかな折れ曲がりが見られる。Allen は平均絶対等級 Mo を 仮定して得た局所密度 Do と、単位体積当たりの可視放射光を最大にする絶対光度 M1 から導いた密度 D1 を出した。Do = 300 kpc-3, D1 = 58 kpc-3 であった。 D1 は我々が出した 値に近い。 ![]() 図9 mn より明るい惑星状星雲の数(総数=20) |
4.銀河系全体での分布 Perek 1962 は銀河系分布関数として次の形を考えた。 D = DC exp( - m ) (14) ここに、 m2 = (ω/aD)2 + (Z/cD)2 (15) で、(12), (13) 式と同じ m である。 DC は銀河中心での密度である。 銀河系全体での惑星状星雲総数 三つのパラメター、 DC、aD、cD をフィットする ため、太陽を中心にZ方向を軸とする立体角 Ω の円帽上で(14)式を積分する。
R๏ = 8 kpc と 10 kpc の二つに対して、(14)式をフィット した結果を表5に示す。銀河系内の惑星状星雲総数は、Perek 1962 により、 N = 8 π aD2 cD DC で与えられ、表5に載せてある。 惑星状星雲の誕生率と死亡率 惑星状星雲の誕生率と死亡率を知るには、その局所密度 DL が必要である。 今までの値は皆似たり寄ったりなので、 DL = 50 kpc-3 とする。 この値を半径 0.08 - 0.4 pc の間で均等に分配すると、単位半径当たり数密度として、 N(R) = 50 / 3.2 × 10-4 = 1.6 × 105 kpc-4 |
![]() 膨張速度 V = 20 km/s = 2 × 10-8 kpc/yr を仮定すると誕生率は、 &ki;PN = V N(R) = 3.2 × 10-3 kpc-3 yr-1 Weidemann 1968 によると、白色矮星の誕生率は、 &ki;WD = (1.6 - 5) × 10-3 kpc-3 yr-1 で、大部分の白色矮星が惑星状星雲の段階を経て誕生するという見方と合致する。 最後に、銀河全体での惑星状星雲の誕生率を求めると、 dN/dt = 8 π a2 c &ki;C = 8 π a2 (cD/aD) &ki;PN exp (10/1.4) = 42 /yr ここに、 &ki;C は銀河系中心での誕生率である。 |