A Main Sequence Luminosity Function for LMC


Butcher, H.
1977 ApJ 216, 372 - 380




 アブストラクト

 LMC フィールドの Mv = 0 から +4 までの主系列光度関数を導いた。混んだ 領域での測光テクニックを述べる。系統エラーについても論じる。最終的に 得られた光度関数は太陽近傍でのそれと似ているが、1等明るい点で傾きが 変化する。自然な解釈は LMC では大きな星形成が 3 - 5 × Gyr 昔 に開始されたというものである。これは銀河系ではそれが 10 Gyr であった ことに対応する。この解釈は LMC データから太陽近傍での サルピータ 初期光度関数を回復することを許す。

 1.イントロ 

 サルピータの光度関数 
 サルピータ 1955 は太陽近傍主系列光度関数が最も古い星団のターンオフの 絶対等級付近で折れ曲がっている事を見出した。彼は初期光度関数と星形成史 に簡単な仮定をおくことで観測が説明される事を示した。それによると、 太陽近傍の星形成は 10 Gyr 前に突然開始され、その後ほぼ一定の星形成率 が保たれてきた。
その後の研究 
 Sandage, Schmidt らによる追究でもこの大きな絵は大体良い事になった。 現在もこのシナリオに深刻に矛盾する観測結果はない。

 マゼラン雲 
 マゼラン雲の主系列星ではどうだろうか? 10 Gyr のターンオフは Mv ∼ +4 で、観測的に到達可能であり、一方星形成史は銀河系と大きく異なって いる。また、 LMC と SMC とでも異なっているらしい。

 論文の目標 
 この論文では LMC フィールドで主系列光度関数を求め、さらにサルピータ 初期光度関数による解析を行う。結果は幾分予想外であった。観測の困難さは 混んだ領域で測光を行うことにある。



 II.観測 

 観測領域 
 観測領域は二つで、一つはバーの 4° 北 NGC 1866 の付近である。 ここは以前 Walker 1974 が研究した。ここで、カラーと等級の標準系列を 作る。もう一つは NGC 1866 の 18' 南を適当に選んだ。ここは 95" 平方である。

 観測 
 観測は CTIO 4m+写真乾板で行った。乾板はPDS でデジタル化した。

 III.データ整約 

 a.測光 

 写真測光はプロファイルフィットにより測光された。

 b.エラー 


図1.NGC 1866 付近の星による写真測光等級 V127 と光電測光 等級 Vw の比較。 写真測光値 は変換式により V 等級に変えられた。

 c.HR 図 



 ターンオフ 
 図3に示すのは 48" 四方領域の H-R 図である。(m-M)LMC = 18.6、 E(B-V) = 0.07 を採用した。0.1 Gyr の主系列星が見える。V = 22.5 付近で B-V が広がるのはエラーのためである。この為、最も古いターンオフを確定する のは困難である。しかし、主系列星に対する後主系列星(準巨星+巨星)の数 の比は Mv=+3 で 0.15 程度である。したがって主系列光度関数には大きな 影響はおよばさない。

 前景星 
 また前景星の効果も小さい。

 
 最後に V = 23.0 に引いた破線はカットオフラインでそれより暗い部分は 意味がないと考える。

 

図3.HR-図。


 VI.光度関数 


 VIa. 主系列の分離 

 B-V で 0.6 等離れたら準巨星 
 図3を見ると V = 21.3 (Mv=2.5) までは巨星枝がはっきりと分離している。 それより暗くなるとかなり勝手な分離法が必要になる。ゼロ年主系列ラインから B-V で 0.6 等離れたら準巨星と看做す事にする。これに基づき、V = 21.3 から 23.0 までで 5 星が非主系列星として除去された。
( 図3を見ると甘過ぎる基準のような?)


 追加 
 V = 19 付近の主系列星が明らかに少ない。これを補うため、もっと大きな 95" 四方領域から V ≤ 20.8 (Mv≤2.0) の星を選び基データに加えた。

 VIb.不完全性補正 

 明るい星の周りで暗い星が見えなくなる。この不完全性は V = 21.0 で 3%、 V = 22.0 で 13%, V = 23.0 で 31% である。
 コンフュージョンの効果は人工星で調べた。

 VIc.光度関数 


 光度関数 
 最終的な主系列光度関数は表1に示した。ただし、 Mv = 0, +1, +2 は 4倍領域からのデータに基づいている。図4には図示した。

 光度関数の折れ曲がり 
 特に著しい特徴は Mv = +3 での折れ曲がりである。
 


 


 

表1.光度関数



図4.光度関数。&fi; = 1 等巾、48" 四方の星の数。黒点= 0.1 等での ランニングミーン。



 VId.太陽近傍との比較 

 折れ曲がり等級の差 
 図6には Schmidt 1959 による太陽近傍光度関数と比較した。両者の 折れ曲がり等級間には1等の開きがある。M67 のターンオフ二―の位置を 見ると、 LMC の折れ曲がりは 3 - 5 Gyr に相当する。これは LMC で 星形成が開始したのは 3 - 5 Gyr 昔であることを意味するのだろうか?


図6.LMC 主系列と太陽近傍主系列の光度関数。古い星団 M67 (5 Gyr)と 47 Tuc(10 Gyr) のターンオフ二―(Knee)ターンオフポイントと違う。

 VIe.太陽近傍初期光度関数の回復 

 異なる年齢での初期光度関数の回復実験 
 サルピータが太陽近傍に対して行ったのとおなじ計算を LMC に対し、ただし 年齢を色々にして、初期光度関数を観測に合うように決めてみた。結果を図7に 示す。 3 Gyr の時に銀河系のと同じ形になることが判る。これは前の節での 解釈にサポートを与えるものである。

 Searl, Sergent, Bagnuola の UBV
 Searl, Sergent, Bagnuola は銀河のカラーを研究した。彼らの理論カラーを LMC に 適用すると 5 Gyr となる。

 



図7.初期光度関数。G = 太陽近傍。年齢 10 Gyr 仮定。10 = LMC 年齢 10 Gyr 仮定, 3 = LMC 年齢 3 Gyr 仮定, 1 = LMC 年齢 1 Gyr仮定。


 V.コメント 


 別解釈 
 選んだ領域が特殊だったかも知れない。初期光度関数が同じである 理由はない。メタル量効果。エラーによる。等々、別の解釈は色々考えられる。

距離 
 クランプ星のピーク光度は V = 19.3 ±0.1 である。

図8.巨星の光度関数。