The Color-Magnitude Diagram for the Galactic Cluster NGC 7789


Burbidge, Sandage
1958 ApJ 128, 174 - 184




 アブストラクト 

 球状星団 NGC 7789 の約 700 星に対し、等級とカラーを定めた。 CMD の形態 と多数の暗い星が不在(?)なことから、これが銀河系星団であることが確認 される。3色での光電系列が 60 インチ望遠鏡で 43 星に対して得られた。100 インチ望遠鏡で撮られた写真乾板を測光に用いた。星団は強い黄色巨星枝を持ち、 それは青い側で暗くなり(B-V)o = 0.92 でヘルツシュプラング間隙に至る。間隙 の幅は Δ(B-V) = 0.45 である。主系列は V = 14 まで達し、そこで終端部 に特徴的な急勾配を示す。M3 や M67 と同じように、主系列より明るい光度の 青い星が存在する。  この青い星は現在の星進化論では説明できない。見かけ m-M = 12.20, E(B-V) = 0.28 から (m-M)o = 11.36, D = 1.87 kpc である。黄色巨星枝は (B-V)o = 1.62 まで達する。このカラーは M2III タイプに相当するが、スペクトルは K4 III であった。NGC 7789 の CMD は他の銀河星団の CMD 系列の中にすっぽり収まる。 この星団はプレセぺやヒアデスより高齢であるが M 67 より若い。 NGC 7789 の 巨星枝は M 1 1 の巨星枝と交差する。これは再び、光度クラス III の星で単一の 質量光度関係が成立しない一例である。


 1.イントロダクション 

 NGC 7789 RA(1950) = 23h54m28s, Dec = 56°26.2', l = 83, b = -5.2 は巨大星団である。その見かけは球状星団より銀河星団に似る。  この星団は高齢であるので重要である。赤色巨星枝勾配は他の銀河星団 NGC 752 と M 67 に近い。そこで、この星団は進化研究プログラムに加えられた。



図1.NGC 7789 光電測光標準星と補助星のファインディングチャート。測光 標準星には Kustner 番号が付けられている。Supplementary stars には "s" を付けた。

 2.光電データ 

 NGC 7789 付近の 43 星の等級とカラーがマウントウィルソン 60 インチ 望遠鏡での2観測シーズンにわたる光電観測で得られた。データはジョンソン 標準測光系に変換された。 表1に標準星の測光データを示す。可能なら Kustner 1923 が付けた番号を 使用した。Kustner の測定限界より暗いが光電測光された星には "s" を付けた。


 表1.標準星の光電測光データ 





 表2.カラー変換後の標準星写真測光データ 





 3.写真乾板データ 


図2.乾板カラーと光電カラーの間のカラー式。残差=光電ー乾板で与えた。

 観測 

 "blue" = 103a-O + G13 と "visual" = 103a-D + GG11 乾板撮影をウィルソン 100 インチ望遠鏡で行った。乾板測定は iris 測光器で行い、中心から 450" 内の約 700 星を測定した。230" 以内の領域では測定の完全性に留意したが、 その外では完全性は考慮していない。

 カラー変換 

 表1の標準星全ての乾板測定等級を使い、表1の光電測光値とのカラー、 等級方程式を作った。カラー範囲は B-V = [0.2, 1.7] である。カラー方程式 に小さな勾配があった。光電標準星の乾板測光値をこの式で補正した値を表2 に示す。残差=(表1の値ー表2の値)を図2と図3に示した。

図3.乾板等級と光電等級の間の等級式。残差=光電ー乾板で与えた。

 表3=Kustner 星団星の写真測光 

 表3には星団星中 Kustner 番号を持つ明るい星のカラー変換を施した写真 測光等級を示す。Kustner 番号を持つ標準星も表2と重複するが並べて載せて ある。標準星以外の星はチャートには番号を振っていない。

 表4=Kustner 星より暗い追加星団星の写真測光 

 表4にはKustner 番号星より暗い約 140 の追加星の写真測光データを載せる。 これらの星は図1のチャートに番号を表示した。


 表3.Kustner 番号を持つ明るい星団星(表2重複)の写真測光等級 







 表4."s" 番号を持つ暗い星団星(表2重複)の写真測光等級 





 4.色・等級図 

 2色図 

 図4は表1の光電データを使った2色図。実線はジョンソン・モルガンの 標準線を E(B-V)=0.28, Av/E(B-V) = 0.73 でずらしたラインである。両者の 一致はよい。

 色・等級図 

 図5は表3と表4からの NGC 7789 色等級図である。最も著しい特徴は、

(1)(B-V,V) = (1.9, 10.52) から (1.2, 13.2) にかけての巨星枝。

(2)(B-V)o = 0.47 から 0.92 にかけてのヘルツシュプラング間隙。

(3)V = 16.3 から 14.0 にかけての主系列ターンオフ。

 ブルーストラグラー 

 上の主要系列から外れる星がある。最も目立つのは、32の星が V = 11.5 付近の B-V = [0.10, 0.35] から V = 13.5 B-V = [0.3, 0.6] にかけて分布 する。この星団が (l, b) = (83, -5.2) と低銀緯なので、ペルセウス腕の フィールドの混入の可能性もある。しかし、それで説明するには多すぎる感じ がするし、最近の固有運動観測からはそれらの内少なくとも 10 個は星団メン バーの可能性が高い。この青い星団星は他の星団にも見られる。 最も顕著な のは M67 で、Sandage 1957 は非常に青い水平枝星として解釈した。しかし、 我々はそれが誤りで、ブルーストラグラーは現在の恒星進化では説明できない 星と考える。

図4.表1の光電データを使った2色図。実線=ジョンソン・モルガンの標準 線を E(B-V)=0.28, Av/E(B-V) = 0.73 でずらしたライン。





図5.NGC 7789 の色等級図。データは表3と表4.




図6.NGC 7789 と他の星団の合成星団色等級図。斜線= NGC 7789.

 5.距離 

 主系列フィット 

 図5と ZAMS (Johnson, Hiltner 1956, Sandage 1957)を E(B-V)=0.28 の 仮定でフィットして、星団距離 m-M = 12.20±0.2 を得る。ただし、 このフィットは難しい。主系列の進化効果があるからである。主系列は V = 14.0 mag で切れるから、進化効果が無視できるのは V = 17.0 より下である。 しかし、NGC 752 の年齢が NGC 7789 と非常に近いので、その主系列を主軸に 暗い方では M67, 明るい方ではプレアディスを補助に使って、フィット用進化 主系列を作成した。こうして、 Av/E(B-V) = 3.0 を仮定して、見かけ値 m-M = 12.20, (m-M)o = 11.36 D = 1.87 kpc を得た。

 図6=他の銀河星団との比較 

 図6には他の銀河星団との比較を示す。NGC 7789 の主系列断絶点はヒアデス、 プレアディスより暗いが、 NGC 752, M67 よりは暗い。ヘルツシュプラング間 隙の幅= 0.45 mag で、 NGC 752 と同じである。興味深いのは NGC 7789 の赤色巨星枝が赤い方まで長く伸びている。NGC 7789 の巨星は Mv=-2.3, (B-V)o=1.62 に達する。
(NGC7789 では Kutner415 が V=10.63, B-V=1.90 で、E(B-V)=0.28, Av=0.84 (m-M)o=11.36 を用いると、(B-V)o=1.62, Mv = 10.63-11.36-0.84=-1.57 で 0.73 mag 足りない。変だな?)
Johnson,Morgan 1953 のスペクトル型・カラー関係からは、B-V=1.62 は M2III に相当する。
 星団に M-型星は存在するか? 

 もしこれが本当なら、この星団は NGC 6940 (Vasilevskis, Rach 1957) を除いて、 M 巨星がある唯一の星団になる。しかし、Burbidge が 60 インチ望遠鏡で行った分光観測によると、これらの星はみな K-型星であった。 具体的には、Kutner 751(K3-4), 415(K4III), 494(K4III), 977(K3III) である。 NGC 7789 が大きい星団であることを考えると、星団周囲を対物プリズムでサー ベイし、 M-型星を探すことは価値のある観測だろう。もし、M-星を含む星団が 十分に多く見つかれば、現在フィールド星に対してオールト (1932) が得たいる K/M = 30 を星団に対して求めて比べることは非常に面白い。

 M 11 と交差 

 NGC 7789 の巨星枝は M 11 と交差している。B-V = [0.8, 1.7], Mv = [+2, -2] の領域は、主系列光度 Mv = [+3, -1] からの様々な進化経路が重なってきて、 そこでの一点に対して単一の質量を割り振ることができない。

 変光星 

 この論文が書かれた後、Weber 1958 は NGC 7789 に変光星を発見した。その 星は Kutner468 であるらしい。我々の測定では (B-V, V) = (1.65, 11.10) である。彼、およびその後の Romano はこの星をセファイドとしたが、巨星枝 にぴたりと載っていることを考えると、また絶対等級が 11.1- 12.2 = -1.1 であることから考えると、不規則変光星かセミレギュラーなのではないか?