球状星団 NGC 7789 の約 700 星に対し、等級とカラーを定めた。 CMD の形態 と多数の暗い星が不在(?)なことから、これが銀河系星団であることが確認 される。3色での光電系列が 60 インチ望遠鏡で 43 星に対して得られた。100 インチ望遠鏡で撮られた写真乾板を測光に用いた。星団は強い黄色巨星枝を持ち、 それは青い側で暗くなり(B-V)o = 0.92 でヘルツシュプラング間隙に至る。間隙 の幅は Δ(B-V) = 0.45 である。主系列は V = 14 まで達し、そこで終端部 に特徴的な急勾配を示す。M3 や M67 と同じように、主系列より明るい光度の 青い星が存在する。 | この青い星は現在の星進化論では説明できない。見かけ m-M = 12.20, E(B-V) = 0.28 から (m-M)o = 11.36, D = 1.87 kpc である。黄色巨星枝は (B-V)o = 1.62 まで達する。このカラーは M2III タイプに相当するが、スペクトルは K4 III であった。NGC 7789 の CMD は他の銀河星団の CMD 系列の中にすっぽり収まる。 この星団はプレセぺやヒアデスより高齢であるが M 67 より若い。 NGC 7789 の 巨星枝は M 1 1 の巨星枝と交差する。これは再び、光度クラス III の星で単一の 質量光度関係が成立しない一例である。 |
NGC 7789 RA(1950) = 23h54m28s, Dec = 56°26.2', l = 83, b = -5.2 は巨大星団である。その見かけは球状星団より銀河星団に似る。 | この星団は高齢であるので重要である。赤色巨星枝勾配は他の銀河星団 NGC 752 と M 67 に近い。そこで、この星団は進化研究プログラムに加えられた。 |
NGC 7789 付近の 43 星の等級とカラーがマウントウィルソン 60 インチ 望遠鏡での2観測シーズンにわたる光電観測で得られた。データはジョンソン 標準測光系に変換された。 | 表1に標準星の測光データを示す。可能なら Kustner 1923 が付けた番号を 使用した。Kustner の測定限界より暗いが光電測光された星には "s" を付けた。 |
![]() 図2.乾板カラーと光電カラーの間のカラー式。残差=光電ー乾板で与えた。 観測 "blue" = 103a-O + G13 と "visual" = 103a-D + GG11 乾板撮影をウィルソン 100 インチ望遠鏡で行った。乾板測定は iris 測光器で行い、中心から 450" 内の約 700 星を測定した。230" 以内の領域では測定の完全性に留意したが、 その外では完全性は考慮していない。 カラー変換 表1の標準星全ての乾板測定等級を使い、表1の光電測光値とのカラー、 等級方程式を作った。カラー範囲は B-V = [0.2, 1.7] である。カラー方程式 に小さな勾配があった。光電標準星の乾板測光値をこの式で補正した値を表2 に示す。残差=(表1の値ー表2の値)を図2と図3に示した。 |
![]() 図3.乾板等級と光電等級の間の等級式。残差=光電ー乾板で与えた。 表3=Kustner 星団星の写真測光 表3には星団星中 Kustner 番号を持つ明るい星のカラー変換を施した写真 測光等級を示す。Kustner 番号を持つ標準星も表2と重複するが並べて載せて ある。標準星以外の星はチャートには番号を振っていない。 表4=Kustner 星より暗い追加星団星の写真測光 表4にはKustner 番号星より暗い約 140 の追加星の写真測光データを載せる。 これらの星は図1のチャートに番号を表示した。 |
2色図 図4は表1の光電データを使った2色図。実線はジョンソン・モルガンの 標準線を E(B-V)=0.28, Av/E(B-V) = 0.73 でずらしたラインである。両者の 一致はよい。 色・等級図 図5は表3と表4からの NGC 7789 色等級図である。最も著しい特徴は、 (1)(B-V,V) = (1.9, 10.52) から (1.2, 13.2) にかけての巨星枝。 (2)(B-V)o = 0.47 から 0.92 にかけてのヘルツシュプラング間隙。 (3)V = 16.3 から 14.0 にかけての主系列ターンオフ。 ブルーストラグラー 上の主要系列から外れる星がある。最も目立つのは、32の星が V = 11.5 付近の B-V = [0.10, 0.35] から V = 13.5 B-V = [0.3, 0.6] にかけて分布 する。この星団が (l, b) = (83, -5.2) と低銀緯なので、ペルセウス腕の フィールドの混入の可能性もある。しかし、それで説明するには多すぎる感じ がするし、最近の固有運動観測からはそれらの内少なくとも 10 個は星団メン バーの可能性が高い。この青い星団星は他の星団にも見られる。 最も顕著な のは M67 で、Sandage 1957 は非常に青い水平枝星として解釈した。しかし、 我々はそれが誤りで、ブルーストラグラーは現在の恒星進化では説明できない 星と考える。 |
![]() 図4.表1の光電データを使った2色図。実線=ジョンソン・モルガンの標準 線を E(B-V)=0.28, Av/E(B-V) = 0.73 でずらしたライン。 |
主系列フィット 図5と ZAMS (Johnson, Hiltner 1956, Sandage 1957)を E(B-V)=0.28 の 仮定でフィットして、星団距離 m-M = 12.20±0.2 を得る。ただし、 このフィットは難しい。主系列の進化効果があるからである。主系列は V = 14.0 mag で切れるから、進化効果が無視できるのは V = 17.0 より下である。 しかし、NGC 752 の年齢が NGC 7789 と非常に近いので、その主系列を主軸に 暗い方では M67, 明るい方ではプレアディスを補助に使って、フィット用進化 主系列を作成した。こうして、 Av/E(B-V) = 3.0 を仮定して、見かけ値 m-M = 12.20, (m-M)o = 11.36 D = 1.87 kpc を得た。 図6=他の銀河星団との比較 図6には他の銀河星団との比較を示す。NGC 7789 の主系列断絶点はヒアデス、 プレアディスより暗いが、 NGC 752, M67 よりは暗い。ヘルツシュプラング間 隙の幅= 0.45 mag で、 NGC 752 と同じである。興味深いのは NGC 7789 の赤色巨星枝が赤い方まで長く伸びている。NGC 7789 の巨星は Mv=-2.3, (B-V)o=1.62 に達する。 (NGC7789 では Kutner415 が V=10.63, B-V=1.90 で、E(B-V)=0.28, Av=0.84 (m-M)o=11.36 を用いると、(B-V)o=1.62, Mv = 10.63-11.36-0.84=-1.57 で 0.73 mag 足りない。変だな?) Johnson,Morgan 1953 のスペクトル型・カラー関係からは、B-V=1.62 は M2III に相当する。 |
星団に M-型星は存在するか? もしこれが本当なら、この星団は NGC 6940 (Vasilevskis, Rach 1957) を除いて、 M 巨星がある唯一の星団になる。しかし、Burbidge が 60 インチ望遠鏡で行った分光観測によると、これらの星はみな K-型星であった。 具体的には、Kutner 751(K3-4), 415(K4III), 494(K4III), 977(K3III) である。 NGC 7789 が大きい星団であることを考えると、星団周囲を対物プリズムでサー ベイし、 M-型星を探すことは価値のある観測だろう。もし、M-星を含む星団が 十分に多く見つかれば、現在フィールド星に対してオールト (1932) が得たいる K/M = 30 を星団に対して求めて比べることは非常に面白い。 M 11 と交差 NGC 7789 の巨星枝は M 11 と交差している。B-V = [0.8, 1.7], Mv = [+2, -2] の領域は、主系列光度 Mv = [+3, -1] からの様々な進化経路が重なってきて、 そこでの一点に対して単一の質量を割り振ることができない。 変光星 この論文が書かれた後、Weber 1958 は NGC 7789 に変光星を発見した。その 星は Kutner468 であるらしい。我々の測定では (B-V, V) = (1.65, 11.10) である。彼、およびその後の Romano はこの星をセファイドとしたが、巨星枝 にぴたりと載っていることを考えると、また絶対等級が 11.1- 12.2 = -1.1 であることから考えると、不規則変光星かセミレギュラーなのではないか? |