Properties of Two Intergalactic Globular Clusters


Burbidge, Sandage
1958 ApJ 127, 527 - 538




 アブストラクト 

 二つの非常に遠方にある球状星団のデータを与えた。水平枝の平均 Mv 等級 を 0.00 と仮定すると、その一つ 11h 星団 RA(1950)=11h26.6m, Dec(1950) = +29°15' (Pal 4 のこと)  は、距離 120 kpc, 直径 90 pc, 積分等級 Mv = -6.3, M = 1.8 104 Mo, 星総数 4.3 104 である。 もう一つ 10h 星団 RA(1950)=10h03.0m, Dec(1950) = +0°18' (Pal 3 のこと) は、距離 130 kpc, 直径 80 pc, 積分等級 Mv = -5.9, M = 1.1 104 Mo, 星 総数 2.7 104 である。  M3, M13 のように少なくとも星の数では10倍以上大きい星団 と比べると、量星団の直径は異常に大きい。潮汐力が小さいためかもしれない。 もし、過去に銀河中心から 9 kpc 以内に接近したことがないなら、この大きさは 理解できる。両星団が銀河中心に対し放物軌道であると仮定すると現在位置まで に 1Gyr で到達可能である。もし、それらが M31 からの脱出星団とすると、 銀河系の影響を無視して、10 Gyr で到達可能である。


 0.イントロダクション 

 銀河間球状星団の発見 

 銀河間球状星団は 48-インチシュミットで発見されてきた。ハッブルはシュ ミットスカイサーベイが開始される前の 1949 年に、 RA(1950)=11h26.6m, Dec(1950) = +29°15' にその最初の例を発見した。 その後、スカイサーベイが発見した新しい 13 球状星団は Abell 1955 により まとめられた。
 200インチ望遠鏡による観測 

 Abell のリストから最も遠い星団 No.3 と No.4 を200インチ望遠鏡で観 測したのが今回の論文である。それらを 10h 星団、11h 星団と呼ぶ。





図1.NGC 6633 の写真。マクドナルド天文台 Cooke 10インチ望遠鏡による。
(これちょっと変 )





図3.11h 星団の同定チャート。表1にそれらの V, B-V を示す。円の直径= 190"

 1.11h 星団 


図2.11h 星団の擬 CMD= 103a-D 乾板の測光器の読み D を 103a-D と 103 a-O の読みの差に対してプロット。 バツ印=変光星 24 と 44.

 1.1.CMD と距離 

 大きな視直径と低い中心集中度 

 図1 は200インチ 103a-D 乾板 + GG11フィルターでの 11h 星団= Abell No.4 の限界撮像である。 はっきり視別できる内で最も暗い星は V = 22 mag である。星団中最も明るい 星は V = 17.5 である。星団の直径は 150 arcsec に達する。中心集中度の低 さから、この星団は NGC 5053 や NGC 5897 と同じグループに属すると思われ る。集中度クラス= XI か XII である。
(図1は変 )

 図2=擬 CMD 

 きちんとした測光はまだ完成していない。その前に、iris 測光器の較正曲線 が等級に対してかなり線形性がよいことを利用して、仮の CMD をこしらえた。 図2にそれを示す。通常の球状星団 CMD との類似性は明らかである。測光の際に 見つかった二つの変光星はバツ印で示した。

表2.変光星 25 と 44 の等級変化。

 B, V 測光 

 表1には 11h 星団の測光結果を、図3にはそのファインディングチャートを示す。 星団には RR Lyr 星はない。表2には変光星 25 と 44 の等級変化を示す。





表1.11h 星団の星の V, B-V


図4.11h 星団の CMD. 表1の B, V 等級をプロットした。

 図4= CMD 

 図4には表1の B,V 等級からの CMD を示す。

(1)巨星枝の先端は B-V = 1.6 である。

(2)巨星枝勾配は B-V で水平枝を分岐する。それより下の sub-giant branch はほぼ垂直である。

(3)水平枝と巨星枝先端との等級差 ΔV = 3.0.

(4)B-V < 0.4 の水平枝星がない。

(1)−(3)は普通だが、(4)の球状星団は他にない。通常の球状星団は M13, M10, M2, M92, M15, M5, M3 の系列に並ぶ。M13 側は極度に青い RR Lyr に富み、M3 側では青と赤の数比はほぼ等しい。この順序は、巨星枝が次第に 赤くなり、また RR Lyr 星周期が短くなるという系列に反映されていた。

 11h 星団 CMD の特徴 

 水平枝星分布の点では 11h 星団は球状星団系列上 M3 を越えてさらに右に 位置する。しかし、水平枝上分布と RR Lyr 平均周期との相関からは警告が発 せられる。Sandage 1958 による、二つの星団間で水平枝平均等級の差 ΔMv と RR Lyr平均周期の差 ΔlogP の関係を用いると、M3 グループと M92 グループの間では ΔMv = 0.2 mag が予想される。M3 グループの変光星 は暗いと考えられる。すると、11h 星団では Mv = [0.2, 0.5] と考えられる。  Mv = 0.00 を仮定し、観測値 V = 20.5 を加えると、減光を無視して m-M = 20.5, D=125 kpc を得る。これは M31 の m-M = 24.6 の距離の 1/5 である。 もし、水平枝光度が Mv = 0.5 なら、m-M=20.0 D=100 kpc となる。

 1.2.光度関数 

 星団の性質 

 表3には等級別の星数を示す。φ(Mv) は半径 95 arcsec 内の [Mv-0.1, mv+0.1] 区間内の星の数である。星団 11h の半径 95 arcsec 内にあり、 Mv < 1.1 の星は 123 個である。図5には φ(Mv) ヒストグラムを示す。 図5には M3 の光度関数を規格化してしめす。M3 と同じ光度関数を仮定すると 11h 星団の積分絶対等級は m-M=20.5 の場合、Mv = -6.35 となる。11hは 球状星団の中では最も暗いグループに属する。また、 M/L = 1 を仮定すると、 M = 1.8 104 Mo, 星総数は = 4.3 104 である。

van den Bergh の乱暴な研究  

  van den Bergh (1956)はパロマースカイサーベイの写真から M67, M3 の既 知星を選んで像径を測り、較正曲線を作成した。彼はそれを用いて 11h 星団の 等級測定を行った。これは、 M67, M3, 11h 星団乾板の露出、現像、時期が同 じでないことを考えると、乱暴な方法である。にも拘らず、彼の得た値は上と そこそこ近い。その上、彼はこの星団の特異な性質に注意を促した最初の研究者 である。

表3.11h 星団の光度関数。


図5.11h 星団の光度関数。実線= M3 光度関数を 0.072 倍した。


表4.11h 星団の性質。



図6.10h 星団の 200 インチ 103a-O+WG2 写真。円直径= 168 arcsec.

 2.10h 星団 


図7.10h 星団の 200 インチ写真。103a-O + ショット WG2. 円は直径 168 arcsec.

 星団画像 

 10h 星団=Abell No.3 はRA(1950)=10h03.0m, Dec(1950) = +00°18' にある。測光基準が SA 57 だけなので、この天体のデータは 11h 星団ほど 正確でない。図6はパローマー200インチで撮った 103a-D+GG11 画像であ る。図7には擬CMDを示す。予備的な較正は表5に示す。

 10h 星団擬CMDの特徴 

(1)巨星枝の先端が V=17.8, B-V=1.6 にある。

(2)準巨星と水平枝の分岐が V=20.6, B-V=0.9 で起きる。

(3)水平枝の平均等級は V = 20.6.

巨星枝先端と水平枝との等級差は従って、ΔV = 2.8 mag である。これら の数値は 10h 星団が典型的な球状星団 CMD を有することを示す。この星団は 11h 星団より正常で、水平枝は青い方へ伸びている。銀河系減光を無視すると m-M = 20.6 となる。

 変光星 

 変光星は一つだけ見つかっている。それは図6に同定され、図7ではバツ印 で示した。これはほぼ確実に RR Lyr 星であるが周期と変光曲線は測られていない。

 星団光度 

 Mv = 1.1, V=21.7 より明るい星の数は図7の円内に 76 星である。この範囲 内に 11h 星団と同じ光度関数 φ(Mv) を仮定すると、星団積分等級として Mv = -5.9 を得る。CI = 0.50 を仮定すると Mpg = -5.42 となり、10h 星団 は最も暗い星団グループに属する。表6にまとめを示す。

表5.図7の予備的較正。




表6.10h 星団の性質。


 3.議論 

 3.1.大きさ 

 潮汐半径 

 表4,6を見ると、両星団が通常のハロー星団に比べ以上に大きい直径を持 つことが分かる。von Hoerner 1957 は質量 M の銀河系中心から R の位置で の潮汐力が、質量 m の星団の引力と釣り合う星団半径 r を計算して、 次の式を得た。

     r = R (m/2M)1/3

 潮汐力の導入は球状星団に関するいくつかの現象を説明する。 (1)銀河中心半径が大きくなると星団半径も増加する。

(2)銀河中心付近の球状星団半径は非常に小さい。

 M = 7 1010 Mo として, 両星団の m と r から R を計算すると、 R = 9 kpc となる。過去にこれより近くまで接近していたら、現在の星団半 径はずっと小さかったろう。

 星団膨張 

 しかし、遠方に移動して r が大きくなると、星 団が膨張して現在の大きな直径になったのではないかという疑問が起きる であろう。しかし、その場合は中心部の収縮が必要である。 10h, 11h 星団共に 空間分布は平坦で、強い中心集中は見当たらない。したがって、星団膨張は起 きなかったと結論される。

 3.2.飛行時間 

 R = 9 kpc から脱出速度で現在の R = 125 kpc まで 1.1 Gyr 掛かる。その時の 速度は 70 km/s である。この距離での銀河回転速度は 15 Gyr になる。 M31 から脱出速度で両星団がそこまで来たとすると、その飛行時間は 10 Gyr となる。

 3.3.平均密度 

 10h, 11h 星団のような暗い天体は検知しにくい。したがって、そのような 天体が全空間を満たしている可能性もある。その時の平均密度はどのくらい になるだろう?そこで、仮に Abell リストを基に、半径 125 kpc の球内に そのような天体が平均 20 個あるとしてみよう。すると平均密度は 3 10-33 g/cm3 となる。これは無視できるほど小さい。