我々は LMC 星団の積分 UBV 測光の数をこれまでの約 4 倍, 全部で 624 個 に増やした。二色図上の星団分布には SWB タイプ IV 付近にギャップが存在 する。ギャップの巾は 0.1 等である。ギャップの縁付近に存在する星団の ターンオフ年齢は赤色巨星相変化の年齢と一致する。 | このカラージャンプはヘリウムフラッシュを経験する星が初めて登場する 事に起因する。その結果明るく数の多い赤色巨星枝が形成される現象に対応する。 おまけとして、 Hodge7 = SL735 は古典的な球状星団であることが判った。 |
RGB 相転移 Renzini, Buzzoni 1986 は SPP 積分 SED に急激な変化が起きる時期がある と主張し、それを RGB phase transition と名付けた。この転移はヘリウムフ ラッシュが縮退核で起きる時期に相当する。この時期以降の星団には強くて、 明るい赤色巨星枝が伴う。 van den Bergh 二色図 van den Bergh (1981) は 147 LMC 星団の UBV 測光データを集め、二色図を作った。そこには、ヘリ ウムフラッシュギャップは認められないが、サンプル数の問題かも知れない。 しかし彼は赤い星団と青い星団の中間にギャップを認めた。Renzini, Buzzoni 1986 はそれがヘリウムフラッシュギャップと関係するかも知れないと考えた。 |
NGC 1987 しかし、Buonanno et al 1988 は NGC 1987 の色等級図からこの可能性を否定 した。この星団は赤色巨星枝を発達させた最も若い星団である。彼らは画像から 赤色巨星のみを抜き出し、その積分カラーを計算した。その結果、 RGB 相転移は B-V カラーに約 0.1 等のジャンプを与えることが判った。しかし、 van den Bergh (1981) が発見したギャップは 0.3 等の巾を有していた。 このレター=ギャップの検出 このレターでは、星団数を大幅に増やして、積分二色図上にヘリウムフラッ シュギャップを発見したことを報告する。 |
観測 観測は 1989 年 12 月、1990 年 11 月、1991 年 1 月に CTIO ローウェル 0.6 m 望遠鏡で、 1990 年 2, 12 月にアルゼンチン CASLEO 2.14 m 望遠鏡で 行われた。測光観測手順は通常の広がった天体に対するものであり、 van den Bergh (1981) と同じである。 |
カタログ 表1にはギャップの赤縁、青縁近くにある星団の名前、アパーチャ、V, U-B, B-V を与えた。アパーチャに付けた T(CTIO), C(CASLEO) は望遠鏡を示す。 表2には SWB タイプ VII Searle, Wilkinson, Bagnuolo (1980) の星団の観測を示す。また van den Bergh (1981) の測光結果も添字 "V" で示した。 拡大カタログ 後に示す図では、 624 星団のカタログを利用した。 |
表1a.ギャップ青縁付近の星団 ![]() |
表1b.ギャップ赤縁付近の星団 ![]() 表2.Hodge7 = SWB VII クラス星団 ![]() |
![]() 図1a.議論に適当なカラー幅での UBV 二色図。ギャップをはっきりさせる ためのデータ点のみ。 |
![]() 図1b.左図と同じだが、 SWB タイプ区分けを付けた。名前 の付いた星団は議論に現れる。 |
図1= UBV 二色図 図1に二色図を示す。図2には SWB の鉤形状も見える。これは SWB VII の 古くて低メタル星団が原因である。SWB VII と SWB IV/V の中間は星団数が 不足している。古典的球状星団 NGC 1466, Hodge11(=SL868), NGC 2257 には 図1b で名前を付けた。 Hodge 7 は古典的球状星団か? Hodge 7 もその位置から古典的球状星団ではないかと疑われる。その観測は CTIO, CASLEO で数晩行われた。この星団に RR Lyr が無いかを探ること、およ び深い撮像からターンオフを検出することは重要である。 ギャップ ギャップは (U-B, B-V) = (0.19, 0.47) を中心として、斜めに傾いて存在 する。巾は両方のカラーで 0.1 等である。このギャップは SWB IV 帯の中央 にあり、Renzini, Buzzoni 1986 の予想と合っている。そこで、 IV 群を IVA と IVB に分けた。表1a と 1b にそれらを示す。それらは将来 CMD により、 RGB の発達を調べる良い対象である。特に、 NGC 1697, NGC 1861, NGC 1789 は明るいに拘わらずまだ CMD 研究が無い。 |
Mateo 1988 サンプル Mateo 1988 は LMC 北東方向外側の星団 31 個の測光を行った。彼のサンプ ルは主に赤く、今回議論する領域をカバーしている。彼の星団はどれもギャップ には存在せず、サンプル自体にもギャップが見える。勿論揺らぎは大きいが。 ターンオフ年齢 NGC 1868 (0.5±0.2 Gyr), NGC 2249 (0.55±0.15 Gyr), NGC 1987 (0.7±0.3 Gyr), NGC 2209 (0.84±0.2 Gyr) の ターンオフ年齢が幾つかの研究の平均値として求められる。図1b 上の位置 と年齢は理論予測、 RGB 相変移が 0.6 Gyr で起きる、に良く合う。この シナリオでは NGC 1868 はまだ拡張 RGB を持たず、 NGC 2249 は開始期、 NGC 1987 と NGC 2209 は拡張が終了している。これは Buonanno et al 1988 の CMD に基づく結論と一致する。 混同していけない 今回議論したギャップは van den Bergh (1981), Renzini, Buzzoni 1986 の B-V 分布のギャップと混同してはいけない。しかし、 それが B-V 分布のへこみにある程度寄与していることは確かである。 |
我々は LMC 星団の UBV 測光数を 624 に増やした。その結果、二色図上に ギャップが存在することが判った。それは SWB クラス IV 区間の中にある。 このギャップは Renzini, Buzzoni 1986, Sweigert, Greggio, Renzini 1990 が予言した RGB 相転移に伴うカラージャンプに対応する。 | このカラージャンプが縮退核でのヘリウムフラッシュに伴うものであるとの 結論は Buonanno et al 1988 の CMD 研究とも合致する。また、付加的だが、 Hodge7 は古典的球状星団かも知れない。 |