OH Maser Emission in the THOR Survey of the Northern Milky Way


Beuther, Walsh, Wang, + 13
2019 AA 628, 90 - 109




 アブストラクト 

 THOR = The HI/OH/Recombination line survey of the inner Milky way は VLA による OH の基底状態全てのメーザーライン 2Π3/2 (J=3/2) 1612(F=1-2), 1665(F=1-1), 1667(F=2-2), 1720(F=2-1) MHz のサーベイ l = [14.3, 66.8], b = [-1.25, 1.25] である。空間分解能は 12.5" - 19", 波長分解能は 1.5 km/s, rms 感度は 10 mJy/チャネルである。  807 点から 1585 輝線を検出した。 51 % は双角性で晩期星起源である。その 間隔は 22 - 38 km/s であった。20 % は星形成域起源である。1720 MHz 天体 53 個のうち 21 個は SNR, 17 個は SFR 起源である。13CO, クラスII CH3OH, H2O サーベイ天体との比較も行った。


 1.イントロダクション 

 過去の観測 

 過去のメーザーサーベイは最初主に IRAS 源に対して個々にアンテナを向け る方法で行われてきた。Sevenster et al (1997a,b, 2001) は ATCA = Australian Telescope Compact Array と VLA = Very Large Array を用いて OH 1612 MHz 無バイアスサーベイを行った。一方、Dawson et al 2014, Qiao et al 2016 は パークス望遠鏡で OH の4遷移全てを南天で観測した。
 今回の観測 

 従って、北天の OH 4遷移サーベイでパークス観測を補完して全天サーベイに することが重要である。これまでの観測では、 1612 MHz ラインは晩期型星、 1665, 1667 MHz メインラインは SFG, 1720 MHz は SNR に多く見つかっている。



表1.THOR メーザーカタログの例。完全な表は CDS で得られる。

 2.THOR 観測 

 THOR サーベイは l = [14.35, 67.25], b = [-1.25, 1.25] を VLA で観測 する。装置トラブルにより、 l = [14.35, 29.25], [31.5, 37.9], [47.1, 51.2] の 1667 MHz 観測は欠けている。観測カタログの例を上に、下に示す。

表2.随伴点源の数


 図1.OH メーザー点の位置。背景= 1.4 GHz 連続電波分布。 








図1.丸= 1612 MHz. 四角=1665 MHz. ひし形=1667 MHz. 十字=1720 MHz.

 3.結果 

 3.1.同定と完全性 

 3.2.メーザーカタログと性質 

 スポット数 

 カタログには 1585 メーザースポットが載っている。その中には Walsh et al 2016 によるパイロットサーベイの結果も含まれる。周波数ごとのスポット数は 1612 MHz で 1080, 1665 MHz で 307, 1667 MHz で 145, 1720 MHz で 53 である。 図1にそれらの位置を示す。

 サイト数 

 各スポット点の間隔が 1" 以内の場合、メーザーサイトとしてまとめられる。 1585 スポットは 807 サイトにまとめられた。

 GLIMPSE 画像 

 各メーザーサイトに対し、GLIMPSE 8 μm 画像を、無い場合は WISE 画像 を与えた。

 ヴェン図分類 

 図3に 807 サイトのヴェン図を与えた。サイト中最も多いのは 1612 MHz だけ のもので 66 % を占める。4遷移全てを含むのは3サイトで、内二つ G43.165-0.028 と G43.166+0.012 は 非常に明るい HIIR 複合体 W49 に含まれ、残り一つ G45.466+0.045 は HIIR G45.47+0.05 の一部である。

図3.807 メーザーサイトでの 4 周波数検出に対するヴェン図。

 メーザー源の性質 

 このように、各メーザーラインには好みの天体型があるが、 OH メーザー だけから天体の分類を行うことは無理である。




図2.OH スペクトルと 8 μm 画像との例。

 4.議論 

 4.1.電波源の重なり 

 A. 連続電波分布 

 まず、図1を見ると、フリーフリーまたはシンクロトロンを表す連続電波分布 ピークとメーザー源の分布に相関はあまりない。

 B. 中間赤外画像 

 双角スペクトルで中間赤外点源と一致したメーザーサイトは晩期型巨星に 分類した。

 C. シンバッド 

 Simbad で 10" 以内のマッチングが取れた星はさらに晩期型星の同定を増した。 それらはカタログでは "Sim" とマークされた。
 d. メタノール 

 クラス II メタノールメーザー源と一致する OH メーザーサイトは星形成域 に分類した。

 90 サイトは未確認 

 こうして、716/807 メーザーサイトが分類された。415 サイトは双角性で晩 期型巨星である。57 サイトは怪しい双角性でこれも晩期型巨星にした。 Simbad で位置が重なったのは 57 サイトである。164 サイトは星形成域である。 21 サイトはおそらく SNR だろう。3 サイトは PN, 1個がパルサーに随伴して いる。90 サイトは未確認のままである。

 GRS = Galactic Ring Survey 

 図4には GRS による 13CO l-v 図上に OH メーザーの位置を ライン毎に重ねた。1612 MHz メーザーの分布が一様なのに対し、他の3つは 13CO との対応が良い。これは二つの天体群の年齢差を表している。


 図4. 13CO l-v 図上の OH メーザー源位置。 


図4.カラー線= Reid, Dame, Menten, Brunthaler (2016) の渦状腕モデル。

 4.2.1612 MHz 双角 OH の間隔 

 図5を見ると、速度間隔は大部分が 22 - 38 km/s にある。

 4.3.1720 MHz メーザーの随伴天体 

 SNR と SFR 

 1720 MHz の 21 天体は SNRs に付随するが、 17 は SFRs に見つかった。 残りは所属不明、一つは PN に見つかった。

 環境差 

 上の2クラスは環境に差がある。SNR では密度 n〜104 cm-3 でおそらく C-ショックから出ているが、 SFRs からのメーザーはもっと濃い n〜106 - 7 cm-3 と強い RIR 放射、それに強い視線 速度勾配が要る。で、この議論の締めくくりが、"These different regomes reflect that our survey reveals significant number of 1720 MHz mazers towards SNRsas well as SFRs." と言うのは笑わせるが、大いに参考にもなる。

図5.1612 MHz ピーク間隔のヒストグラム。  


 4.4.文献探索 


図6.1612 MHz メーザーピークフラックス密度。Sevebster et al 2001 サーベ イと THOR サーベイとの比較。

 4.4.1.以前の VLA 1612 MHz サーベイ 

Sevenster et al 2001 サーベイは l < 45° をカバーし、その感度は rms = 25 mJy である。彼らの検出した 1080 個のメーザースポットの中で、 THOR サーベイと 10" 基準で重なるのは 166 個であった。したがって、 THOR 天体の殆どは新検出である。図6には二つの検出サンプルの強度を比較した。 平均フラックスピーク強度の比を取ると、THOR/Sevenster = 1.9 である。 これはおそらく彼らのチャンネル当たり速度巾が大きいためであろう。

図7.1665 MHz メーザーピークフラックス密度。Casewell et al 2013 サーベ イと THOR サーベイとの比較。

 4.4.2.パークス 1665/1667 MHz サーベイ 

 Caswell サーベイは l < 41° をカバーしている。 こちらのスペクトル文可能は 0.1 km/s で THOR の 1.5 km/s よりずっと 狭い。恐らくこのために図7では Caswell ピーク値が THOR より遥かに 大きくなっている。


 7.結論 

 沢山見つけた。