ugr カラーのみから青色水平枝星を選別する ハローが矮小銀河の破砕でできたなら、ハローの星種族にその構造が残っている はずである。それを調べるため、SDSS を用い、ハローでの青色水平枝星と主系列 ターンオフ星の比を調べた。ugr カラーのみから青色水平枝星を選別する方法を 開発し、 g < 18 の 9000 候補を選び出した。その 70 % が青色水平枝星である。 青色水平枝星と主系列ターンオフ星の比 全天の 1/4 にあたる区域で青色水平枝星と主系列ターンオフ星の比をマップにした。 ハロー内に比の大きな変動が見出された。以前に見出された星流では比が周囲とはっきり 異なる。これはそこでの年齢・メタル量が異なることを示唆する。 |
比の特徴 ハローのある個所、低銀緯構造、では青色水平枝星がほとんど存在しない。ところが 別の構造では青色水平枝星に富んでいる。サジタリウス潮汐星流に沿って比の変化が 見られる。これは母銀河内の種族勾配を表していると考えられる。これらの発見は ハロー成長に重要である。 |
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図1. 球状星団 NGC 5024 における青色水平枝星。(下)全体の色等級図。 (上)水平枝星に富んだ領域の拡大図。-0.5 < g-r < 0.0, 0.8 < u-g < 1.6 という基準で選んだ青色水平枝星候補を十字で 示した。その中でも我々の方法で青色水平枝星確率が 50 % 以上という 判定を下した星は菱形で囲った。 |
2.1.カラーで青色水平枝星を選別する。良く知られていることだが、ugr カラーで青色水平枝星を選ぶ際の問題は、 ブルーストラグラーの混入が青色水平枝星を圧倒してしまうことである。 Bellazzini et al 2006 はこれを "blue plume" と呼ぶ。Xue et al 2008 の g ≤ 19.5 分光サンプルの中で -0.5 < g-r < 0.0, 0.8 < u-g < 1.6 という基準で選んだサンプルでは、ブルーストラグラー対 青色水平枝星の比が >3:1 であった。分光データを併用すると、青色水平枝星がもっと含まれている個所を選べる。 図2の赤線領域は、 -0.2 < g-r < -0.06, 0.98 < u-g < 1.28, ([u-g-0.98]/0.215)2 + ([g-r+0.06]/0.27)2 > 1 である。 図2.分光観測で同定されたサンプルを用いた青色水平枝星の選別。 青点= Xue et al 2008 で青色水平枝星と分類。等高線は 青色水平枝星である確率が 10 %, 30 %, 50 % のライン。 赤線= 50 % ラインの近似表現。緑線= Sirko et al 2004 の区画。 |
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2.2.カラー選択サンプルの完全度と混入g < 18 サンプルg < 18 サンプルはこの論文の焦点である。分光観測データを訓練サンプル として使い、その完全度と混入を調べた。50 % 等高線内部で分光観測を行った 星を使い、この選択域の星の 67 - 74 % は青色水平枝星であることが分かった。 さらに、この選択域内に青色水平枝星の 60 % が含まれることも分かった。 もっと暗いサンプルでは? 暗い星の誤差を知るため、繰り返し観測が行われたストライプ 82 データを用いた。 その結果得られた g ∼ 19, 20 での測光誤差を g < 18 星分光サンプルに適用 して、もしそれらが g= 19, 20 であった場合に結果がどうなるかを調べた。 捕捉率=選択カラー領域内に青色水平枝星全体の何%が含まれるか、 混入率=選択から領域内の星の何%が混入星か、とする。g < 18 星では、 (捕捉率、混入率)= (60%, 25%) であった。測光誤差の増大の結果、g = 19 では (捕捉率、混入率)= (40%, 40%)、g = 20 では (捕捉率、混入率)= (20%, 50%) となることがわかった。つまり、g = 19 では 粗い選択法の-0.5 < g-r < 0.0, 0.8 < u-g < 1.6 という基準に比べ 混入率 60 % よりは改善されているが、 g = 20 になると殆ど改善が見られない 結果となった。 2.4.主系列ターンオフ星の選択と青色水平枝星との比較Bell et al 2008 に倣って、赤化補正後に、0.2 < g-r < 0.4, 18 < r < 22 の基準で、430 万の主系列ターンオフ星を選び出した。この基準は Bell et al 2008 の図1で最も濃い部分を選んだものである。球状星団やモデル との比較から、この範囲で選ぶサンプルは絶対等級の平均が Mr = 4.5, rms σmag,MSTO = 0.9 である。原理的にはこの選択は星種族の 場所による変動の影響を受けるが、ハローターンオフの青端が一定であることは、 この効果がそう大きくないことを示唆する。図3は (RA,Dec) = (204°, 5°) 方向、半径 4° コーン、サジタリ ウス星流方向の色等級図を示す。g < 18 の明るいターンオフ星は高メタルの 厚い円盤星で g-r ∼ 0.4 である。ハローのターンオフ星は g > 18, 0.2 < g-r < 0.4 を占める。青色水平枝星は図2の方法で二色図上の 位置から選ばれ、図3の十字線で示される。青色水平枝星の固有等級のばらつき は小さいので、青色水平枝星の密度超過は m-M=16.5, 18.3 にはっきりと見える。 それに対応するターンオフ星の密度超過は約 4 等暗いはずだが、確認できない。 これはターンオフ星の光度の散らばりが大きいためであろう。 |
![]() 図3.(RA,Dec) = (204°, 5°) 方向、半径 4° コーン、サジタリ ウス星流方向の色等級図。十字=図2二色図上の位置で選ばれた青色水平枝星。 (上)青色水平枝星候補の距離分布。二つの密度超過が見える。遠い方の超過、 m-M=18.3 はサジタリウス潮汐星流の一部。注意するが、ブルーストラグラー はもっと広い固有等級巾を持つので、その混入の効果はもっと幅広の特徴を 生み出すはずである。密度超過の等級巾が狭いのは、選ばれた青色水平枝星 候補の純度が高いことを意味する。 |