Gravity Modes as a Way to Distunguish between Hydrogen- and Helium-Burning Red Giants Stars


Bedding + 33
2011 Nature 471, 608 - 611




 アブストラクト 

 ケプラーにより数百の赤色巨星に対して1年以上の高精度測光観測を行った。 その結果、それらに重力モード振動の周期間間隔の測定ができた。多くの星で は、その双極モード周期がほぼ等間隔に並んでいた。  それらの星は二つの集団にはっきりと分かれた。周期間隔が約 50 秒の星は 水素殻燃焼星で 100 - 300 秒の星は、ヘリウムも燃やしている。


  

 ミックスモード 

 赤色巨星の振動は、太陽と似て、表面付近の対流により励起される。その 振動スペクトルも太陽に似て、特徴的な櫛の歯状の動径および非動径振動 モードを示す。巨星外層と中心核との間の非常に大きな密度差のため、赤色巨 星は振動の立場からは二つの共鳴空洞から成ると看做せる。 赤色巨星の外層では振動は音波圧力モード (p-モード)、核 では浮力が駆動力となる重力モード(g-モード)が支配的である。 理論では、 l=0 ではg-モードは存在しないが、 l ≥ 1 ではミックスモードがみっしり と存在すると予想されている。
  p-優勢ミックスモード 

  ミックスモードの大部分では中心核部の方が外層よりも振幅が大きく、我々は それを g-優勢ミックスモードと呼ぶ。純粋の g-モードと似て、それらは近似 的には等間隔周期でならび、その周期間隔平均値 ΔP は赤色巨星中心核 の探索子として貴重である。核の慣性が大きいため恒星表面での振幅は非常に 小さく、実際上観測不能である。しかし、外層と中心核の二つの空洞の間の共 鳴効果のために、 g-優勢ミックスモードの幾つかは外層での振幅が大きくな り、p-モード的となる。このような p-優勢ミックスモードは g-優勢ミックス モードよりも慣性が小さく、振幅が大きくなって観測可能となる。





図1.赤色巨星におけるミックスモードと交差回避。 (a) 1.5 Mo 水素殻燃焼赤色巨星モデルの振動数進化。破線=動径振動(l = 0). 実線=双極モード(l = 1). (b) 図a 縦線上で、隣り合う l = 1 モード間の周期間隔。 g-優勢ミックス モードの周期間隔 ΔPg は図から 75 s である。 (c) 同じモデルで、l=1 モードのエシェル図。ここでは、 (d) KIC 6928997 の観測エシェル図。 g-モードの 周期間隔は ΔPg = 77.1 s であることが分かる。一方、観測された モード間隔は ΔPobs = 55 s である。

 図1(a) = 振動数進化 

 図1(a) には 1.5 Mo 水素殻燃焼赤色巨星モデルの振動数進化を示す。破線 =動径振動(l = 0) で外層が膨張するにつれ振動数が下がって行く.それらは 純粋の p-モードで等振動数間隔 Δν で並ぶ。実線=もっと混んで並 ぶ双極モード(l = 1). g-優勢ミックスモードは進化と共に中心核が収縮して いくと周波数が増加し、等周期で並ぶ。実線の負勾配部分は p-優勢ミックス モードである。

 図1(b) = 隣接モードとの間隔 

 図1(b) には l = 1 モードの隣接モードとの間隔を図1の縦線で指示した モデルについて示した。窪みは間隔が狭まる p-優勢ミックスモードに当たる。 g-優勢ミックスモードの周期間隔 ΔPg は右端部分の包括線から得られ る筈だが、直接観測は出来ない。というのは p-優勢ミックスモード部分しか 観測できないからである。各 p-モード部順位毎に数モードしか観測可能でしか ない。そしてそれらの間の隣接周期間隔 ΔPobs は g-優勢ミックスモードの間隔の 1/2 にまで下がる。
 図1(c) = エシェル図 

 図1(c) は図1をエシェルフォーマットで示した。そこでは振動スペクトル を周期 75.2 s で合同のあまりを取った。通常のエシェル図では横軸が周波数 だがこの図では周期になっている点が違う。

  図1(d) = エシェル図 

 周期がほぼ等間隔の l = 1 モードは赤色巨星 KIC 6928997 で最初に発見さ れた。ケプラーでの観測は最初の13か月間 29.4 分おきに継続された。図1 (d) はそのエシェル図である。余りの配置が垂直に並ぶ値として、我々は真の g-モードの周期間隔を ΔPg = 77.1 s とした。 一方、観測されたモード間隔は ΔPobs = 55 s である。このようにして、 g--優勢ミックスモードは観測できないのであるが、その ΔPg を 推測できるのである。





図2.ケプラーが観測した二つの赤色巨星の振動パワースペクトルと、エシェル 図。上: KIC 6779699. 下:KIC 4902641. 左:パワースペクトル。右: エシェル図。 l = 1 モードの間隔の差から、KIC 6779699 は赤色巨星枝上で 水素殻燃焼を行っている。一方、KIC 4902641 は中心核でヘリウム燃焼も行って いることが判る。

 二つの赤色巨星 

 図2では二つの赤色巨星の観測を較べた。それらの p-モード間隔は Δ ν = 8 μHz でほぼ等しいが、 l = 1 周期間隔は大きく異なる。l = 1 の 各集団で最も外側のピークが最も鋭い。それらは g-優先モードに最も近接して いる振動である。エシェル図から決めた ΔPg はファクター2異なる。 これは二つの星の内部構造が異なることを意味している。
( 二つの ΔPg の比が2にあま りに近い。夫々で作ったエシェル図を見てみたい気がする。というか Pg 決定 誤差は?倍音ってのはないのか?)


 高い S/N 必要 

 エシェル図から ΔPg を推定できる星は多くない。なぜなら、l = 1 モード各集団で 3 - 4 モードは観測される必要があるからである。それには 高い S/N 比が要求される。
 平均周期間隔 ΔPobs  

 そこで、我々はl=1 モードの平均周期間隔 ΔPobs を パワースペクトルのパワースペクトルを取ることにより推定した。この方法 では、パワースペクトルは第一に周波数でなく周期で表現される。そして、 次に l = 1 モードのパワーがない部分ではゼロに設定する。このパワースペ クトルのパワースペクトルを計算し、最も強い周期間隔を探す。観測からはっきり 決まった例では ΔPg ≈ (1.3-1.6)ΔPobs であった。

 他の二つの方法 

 ΔPobs を決める方法は他にもあり、

(1)単純に隣り合った l = 1 のピークの間隔を測る。

(2)時系列データのオートコリレイションをとる。


 ΔPobs が分離パラメター 

 観測された 400 星の周期間隔を図3a に示す。明らかに二つの異なる集団が 存在する。モデル計算との比較から、それらが青丸=水素殻燃焼星と赤、オレンジ 菱形=ヘリウム燃焼星に対応することが判る。ΔPobs が 二種類の星を分離する極めて信頼できるパラメターであることが判る。それは 二つのグループの核密度の差を反映している。

 第2レッドクランプ 

 質量の大きい星では縮退核が形成されずにヘリウム燃焼が開始される。その場合 はヘリウム燃焼開始時の核質量が様々で、その光度も一定でない。これ等の 星は図3c でオレンジ色で示される。図3a では明らかにコンパクトにまとまった 赤菱形のレッドクランプグループと広がったオレンジ色の第2レッドクランプ とに分かれる。




図3.ケプラーで観測した赤色巨星の asteroseismic 図。横軸 Δν は p-モードの大きな周波数間隔(図1の破線間隔)。 (a) 縦軸は観測された周期間隔。
( 多分、前節のパワースペクトルの パワースペクトル法で決めた間隔?これが実際にはキーらしい。)
青丸=水素殻燃焼星(143星)。赤(193星)と オレンジ(61星)はヘリウム燃焼星。色分けは (c) による。実線=ASTEC モデルによる水素殻燃焼星の平均観測可能周期間隔の予想。黒星=ヘリウム 燃焼星モデルの周期間隔。2.4 Mo モデル=ヘリウムフラッシュなしでヘリウム 燃焼開始。
(b) ε = p-モード櫛の歯パターンの絶対周波数を特徴づける。 水素燃焼星とヘリウム燃焼星の間に系統的な差がある。灰色線菱形=周期間隔 の測定が信頼できない 391 星。それらの多くは S/N は十分だが構造が見えない。 (c) 縦軸= νmax0.75 は光度に依存しない。この 図上の位置からレッドクランプ星と判断されたものを赤菱型で示す。第2レッド クランプと考えられる星はオレンジ。実線=モデル。