Probing the LMC Cloud Age Gap at Intermediate Cluster Masses


Balbinot, Santiago, Kerber, Barbuy, Dias
2010 MN 404, 1625 - 1632




 アブストラクト 

 LMC 星団の著しい特徴は 3 - 10 Gyr に大きな年齢ギャップが生じている ことである。しかし、この特徴はフィールド星には見当たらない。積分カラー が中間年齢単純星種族と一致する比較的貧弱で緩い星団が存在する3つの フィールドで BVI 撮像を行った。観測には SOAR = Southern Telescope for Astrophysical Research に搭載した SOI = Optical Imager を使用した。 そこにある、6個の星団、内5個は M < 104 Mo、を調べた。  PSF測光の限界等級は V = 23 であった。CMD を作り、フィールド星 混入効果の除去には、3次元カラー・等級空間内でフィールド星に対する 超過分として星団星を掬い上げた。このために統計的な CMD 比較法を 開発し、差し引きが有効で、単純星種族の CMD が得られた。我々のサンプル 中で中間年齢候補が 1 - 2 Gyr と最高齢であった。残りの星団は 100 - 200 Myr であった。我々の解析は、サンプルとした低質量星団の どれも年齢ギャップには属しないことを示した。


 2.データ 


表1.観測ログ  

図1.星団の 50'x50' V-画像。(a) KMK 88-38, (b) KMK 88-39, (c) OGLE-LMC0531, (d) OGLE-LMC0523, (e) NGC 1876, (f) OGLE-LMC0214  





図3.ショート+ロングの複合 CMD. 天体は LMC0531, KMK88-38, NGC1787. 左=(V,B-V)、右=(V, V-I). バツ=ショート測光。点=ロング測光。 上直線=サチュレイション。下直線=検出限界。

 3.解析 


図2.OGLE-LMS 0531 I, V, B バンドの残差=m(ロング)-m(ショート)  

 Kerber et al 2002 の統計的フィールド星除去法は、星団種族は CMD上でフィールド星種族の上に乗った密度超過として現れるという 事実に基づいている。そこで、まず CMDを区間に分割し、それぞれで、 星数をフィールド星と較べる。そこでは星数の揺らぎがエラーを生む。
 カラーをもう一つ加えるとこの作業の精度が上がる。本研究では カラー・等級図でなく、カラー・カラー・等級空間(CCMS)を用いる。
空間内の各星の位置は3次元ガウシャン分布で置き換えられる。分布の 巾は測光エラーである。星団の半径の典型値は 20 arcsec で SOAR/SOI 視野の 1/60 である。一般には星団の密度はあまりに低く、これより 組織的な方法はない。手順は、

(i) CCMSを等級 0.01 mag, カラー 0.005 等の区間に分ける。

(ii) 各区間で全ての星のガウス分布による寄与を計算する。

(iii) 結果得られる総カウントを規格化する。

(iv) 各区間毎にフィールド星の数を引く。

(v) 区間の合併で CCMS を粗い分割の区間に直す。

(vi) この3次元 CCMS 区間を通常の2次元 CMD に投影する。

人工 CMD の作成には Kerber et al 2002 が開発したソフトを用いた。 このアルゴリズムは現実的な測光エラーと連星比 50 % を取り込んでいる。 図4の実験では log t = 9.1, Z = 0.010 等時線から 50 星を選択して、 ランダムに選んだ(フィールド?)画像中に埋め込まれた。こうして、 人工 SSP とフィールド星に生じるストカスティックな効果を取り入れた。 こうして作った15の実験画像に上述の処理を施した結果の8例を図4 に示す。埋め込まれた人工星はバツ印で示されている。フィールド星に 対する平均強度は 17 % であった。このモデルのパラメタ―は我々の サンプル星団中最も古いものに相当する。よって、フィールド星除去の 性能がよく分かる。

 図5には log t = 8.4, Z = 0.010 等時線から 30 星を選んだ実験から 8例を示す。この場合の平均コントラストは 11 % であった。

 このアルゴリズムは CCMS 空間内で挿入 SSP による密度超過部を回復する ことに成功した。主系列ターンオフとレッドクランプ位置の双方がフィールド 星除去後の図4画面上で同定された。図5では若い SSP に付随する伸長した 主系列が確認されなかったのは1例のみであった。更に問題となるのは 除去した後にフィールド星の赤色巨星枝や準巨星枝の残余が見える場合 である。そのために年齢決定が怪しくなる。

 しかし、カラーを加えたことで上述のあいまいさは大きく減少した。 更に、実験の多くの場合には入力した SSP を CMD 上の超過として 認識できた。



図4.中間年齢 SSP 50 星モデルを使った実験からの (V, V-I) CMD。 実線=適用した t = 1.25 Gyr, Z = 0.5 Zo 等時線。バツ=人工星。 フィールド星を除去した残りの星数は、カラー 0.2 等、等級 0.5 等区間 の灰色の濃淡で示す。  


図5.若い SSP 30 星モデルを使った実験からの (V, V-I) CMD。 実線=適用した t = 0.25 Gyr, Z = 0.5 Zo 等時線。バツ=人工星。 フィールド星を除去した残りの星数は、カラー 0.2 等、等級 0.5 等区間 の灰色の濃淡で示す。  



 3.3.パラメタ―決定 


図6.左上:OGLE-LMC0531 の (V, B-V) CMD. 右上:OGLE-LMC0531 の (V, V-I) CMD. 図中の数字は等時線パラメタ―。
左下:OGLE-LMC0523 の (V, B-V) CMD. 右上:OGLE-LMC0523 の (V, V-I) CMD. 図中の数字は等時線パラメタ―。フィールド星除去後の 星密度が灰色区画で示されている。区画の大きさは等級で 0.55 mag., カラーで 0.3 mag. である。上図の破線は 3 Gyr, 太陽メタルのターンオフ。
 


表2.CMD 解析の結果。  

図7.図6と同じ。上:KMK88-38. 下:KMK88-39.  


図8.図6と同じ。NGC 1878。区画の大きさは等級で 0.50 mag., カラーで 0.25 mag. である。