Comparisons of a Standard Galaxy Model with Stellar Observations in Five Fields


Bahcall,J.N., Soneira
1984 ApJS 55, 67 - 99




 アブストラクト

 5領域データが二成分モデルでフィットできた 

 銀河系5領域での星のカラー分布と見かけ光度関数を解析した。データは King; Koo, Kron; Kron, McLaughlin; Ratnatunga; Reid, Gilmore; Tritton,Morton; Tyson,Jarvis; Weistrop である。それら全データが指数関数型円盤とドボークルー 楕円体の二成分モデルでよく表現された。

 円盤のパラメター

 観測が銀河系パラメターの決定に用いられた。例えば、矮星円盤のスケール高は 5 < Mv < 13.5 に対し 325±50 pc である。円盤矮星の平均密度の 揺らぎは 15 % 以下である。Wielen が述べた近傍星光度関数の Mv = +7 mag での 窪みは近傍の外にも広がっている。
 楕円体のパラメター 

 データから推定される楕円体のパラメターは、軸比 b/a = 0.80, 近傍での 楕円体密度/円盤密度 = 0.002 である。楕円体フィールド星では水平枝の青い端は 欠けている。

 「厚い円盤」 

Gilmore. Reid 提案の「厚い円盤」は Kron の SA 57, Koo, Kron の SA 68 と合わない。



 1.イントロ 

B-S モデル 

 この論文では最新データの解析から得た銀河系の恒星分布に関する解析結果、 表1に示すような、を示す。使用する簡単なモデルは文献では B-S モデルと 呼ばれている。モデルは指数関数円盤とドボークルー楕円体から成る。光度関数や スケール高は太陽近傍で決めたものを全銀河に適用した。楕円体フィールドと球状 星団は同じ種族と仮定する。

 モデルフィットによるパラメターの調整 

 モデルの予言を観測と比べ、パラメターや関数の許容可能な範囲を決める。 この方法は過去に使用された逆関数を求める不安定な手法とは違う。過去数年間に 我々はモデルに細かい変更、例えば 円盤光度関数の Wielen dip, 楕円体の 扁平率、進化した星の色等級図のスプラインフィット、を加えてきた。

 標準モデル 

 まず驚いたのは、近傍で決めた光度関数や他のパラメターを銀河全体に適用する 簡単なモデルが色々な方向の観測結果をよく説明したことである。このモデルを 「標準モデル」と名付ける。フィットの精度は観測の揺らぎの程度と同じ 20 % である。

 標準モデルのフィット 

 この論文では次の5領域を扱う。

(1)SA 57 NGP 付近 

(2)SA 68 b = -46°, l= 111°

(3)SA 51 b = +21°, 反中心方向 

(4)Aquarius 方向。b = -57°, l= 36°

(5)SGP

標準モデルは上のデータとよく合った。このモデルは、多くのデータをまとめ、 パラメター許容範囲を定め、ある種族の特定の特徴を際立たせ、あるタイプの星 の背景密度が重要な場合の観測の解釈に役立つ。

 比較 

 観測とモデルの比較は常に観測面積あたりの数で行われた。図5−22の縦軸は 観測領域内での等級当たりの数である。円盤に対してはスケール高とスケール長、 光度関数の許容範囲を求めた。楕円体に対しては軸比、太陽位置での密度、 巨星と準巨星の割合、光度関数の明るい端、それに驚くべき結論として水平枝 青端の特性を定めた。「厚い円盤」モデルが SA 57, SA 68 の観測と一致しない ことも示した。

     表1.主な結果のまとめ



 2.銀河モデル 

 2.1.基本要素 

 以前の手法との差 

 スターカウントに関し我々が伝統的手法から離れた点は、他の銀河の密度則 を参考に幾何学形状を仮定したことである。以前の研究ではスターカウントを 恒星成分分布の一般的構造を決めるのに使った。我々の見解では、銀河系の 全体構造は他の銀河と類似していると考え、スターカウントとカラー分布は スケールの大きさ、密度の規格化、光度関数の決定に使用する。赤化の強い 領域は避ける。初期のスターカウントは赤化分布を決めるのに使用された。 伝統的手法の最近の成果はバーゼルグループの Becker 1965, Becker, Steppe 1977 と エディンバラグループの Gilmore, Reid 1983 を見よ。

 密度則 

 標準モデルで使用された密度則は表2に載せた。我々は種族 I 星は指数関数 円盤、種族 II 星はドボークルー楕円体を仮定した。幾何学形状の推定値の鋭敏さ をテストするためパラメター値を変えた一連のモデル計算を行った。 Bahcall, Soneira 1980b では穴開き円盤とハッブル型楕円体についても調べたが、検知できるほどの差は 生じなかった。

  表2.標準モデルの密度パラメター


 Wielen 光度関数 

 図1a にはこの論文で使用した Wielen 1974 の光度関数を載せた。観測データが ない 12.5 < Mv < 16.5 では一定値とした。すると、Mv < 16.5 の星の 総数は 0.13 星 pc-3 となる。 Bahcall, Soneira 1980b, では少し違う解析式を用いた。第3、5章及び Armandroff 1982 にはその両者の 比較がなされている。

 スケール高 

 スケール高に関しては多くの仕事があり、古い円盤種族の主系列星、+5.1 < Mv 、に対しては 325 pc、Mv < +2.3 の若い円盤種族に対しては 90 pc とした。 表2には H(Mv) として載せてある。中間の +3.2 < Mv < +5.1 では 90 pc と 325 pc を直線で近似した。円盤巨星のスケール高は 250 pc とし、 白色矮星のスケール高は古い円盤星と同じ 325 pc と仮定する。スケール高への観 測的制約は第9章で論じる。





  図1a.円盤 Mv < 12.5 には Wielen(1974) の光度関数、Mv > 12.5 は一定値を採用。楕円体光度関数の +3 ≤ Mv ≤ +8 は暗い星のスターカ ウント( Bahcall, Soneira 1980b, Bahcall et al. 1983) から、 +6 ≤ Mv ≤ +11 は高速度星の固有運動 (Schmidt 1975) から決めた。簡単化のため、楕円体にも Wielen 関数を使った。 この関数は Mv = +6 より明るい部分では Bahcall, Soneira 1980b, で使用した解析関数と同じである。"GSF" と記された窪みは付録Aの計算で使用。 
 スケール長 

 楕円体のスケール長は de Vaucouleurs 1977, de Vaucouleurs, Buta 1978 から とった。銀河中心距離は 8 kpc とした。

 敏感度 

 この論文の結果は銀河中心距離の値や楕円体のスケール長にはあまり影響されない。 なぜなら、密度関数が太陽近傍値で規格化されているからである。ところが、 Bahcall, Soneira 1980b1 や Bahcall et al 1983 の結果は楕円体成分の規格値 の値に大きく影響される。

よく理解できない。

比較的明るい星、mV < 19、に対しては、予想されるカラー分布と スターカウントは楕円体成分赤色巨星枝の色等級図に大きく依存する。したがって、 スターカウントをカラーと見かけ等級の関数として表わすことで、

(見かけ色等級図ということ?)

楕円体成分の規格化と楕円体成分の色等級図に制限を付ける


  図1b.楕円体の光度関数を比較した。我々が使用した楕円体光度関数は "B&S" と記されている。M3, M13, M92 の光度関数が載せてある。サルピータ(1955) の ゼロ年光度関数も載せた。


 楕円体の光度関数 

 図1a.では我々の適用した楕円体の光度関数を円盤光度関数と比較した。1b 図 では、今度はそれを M3, M13, M92 の光度関数と比べた。サルピータ(1955) の ゼロ年光度関数も載せた。楕円体光度関数には Wielen の窪み (1974、図1a の Mv ≈ 7) を加えた。以前の論文では楕円体光度関数に少し異なる表式 (Bahcall, Someira 1980b の式1)を使っていた。楕円体光度関数は Mv = -3 で 止めた。球状星団にはこれ以上明るい星が無いからである。"GCF" と名付けられた 特徴は標準モデルには含まれない。付録Aで現在のデータでは楕円体光度関数に この特徴が存在するかどうか決めるには十分でないことを論じている。新しいのも 古い楕円体光度関数も球状星団の光度関数とそのかなり大きな分散の範囲内で 一致している。それは Schmidt 1975 の高速度星データとも合致する。以前の 論文では、仮定した光度関数の解析表式は暗い星のスターカウントデータとフィット することを(主に +3 < Mv < +8 の範囲の星)示した。今回の主な目的の 一つは現在得られる明るい星の観測から楕円体光度関数が図1a の滑らかな曲線 と異なる証拠を提供できるかどうかを見ることにある。 

 楕円体用の色等級図 

 楕円体の色等級図は、2かそれ以上のバンドでの中程度の深さ(V, B < 19 ) の観測にとって重要である。図2に我々が用いた色等級図を挿絵として載せた。 正しい楕円体色等級図には多くのメタル量成分が寄与している。図には極端な 例として M92、[Fe/H] = -2.1、 と 47 Tuc、[Fe/H] = -0.6、 を紹介した。M13 は高銀緯星全体に合う例として載せた。


図2.円盤色等級図は Johnson(1965, 1966), Keenan(1963) の主系列に M67 巨星枝(Morgan, Eggleton 1978)を足して作った。


 2.b.観測との以前の比較 

 楕円体成分の改善点 

 上に述べたモデルは Bahcall, Soneira 1980b の SA57 と SA 68 の観測 Kron 1978, 1980 とよく合った。両領域で 19.75 < mV < 22.0 の 等級巾では円盤と楕円体成分は二つのピークとして現れた。しかし、他の方向では カラー分布は違う形で現れる。 Bahcall, Soneira 1980b では楕円体成分は 軸比 = 1、色等級図 M 67 を備えていた。 この論文では改良点として軸比を1から はずし、色等級図を複数の球状星団から構成した。
 水がめ座方向の観測

 銀経で平均したスターカウントは、|b| ≥ 20° の星間吸収が無視できる 所では理論と観測が一致した。モデルは水がめ座方向 b = -51°, l = 36.5° mB < 19 の B - V カラー分布は、適切な色等級図が楕円体成分に 使われた場合にはよく再現された。Tritton, Morton 1982 は楕円成分星が全て 主系列星と仮定すると B-S モデルでは観測と合わないことを指摘した。この論文では もし SA 57, SA 68 から導かれる扁平楕円体を仮定すると水がめ座方向の密度絶対値の 規格化も正しく与えられることを示す。


 2.c.データ精度 


図3a. SA 57 のカラー分布の比較。制約法を Weinstrop 法でやるか、 Faber et al のカラーを使うか? mV = 12 - 16 の明るい 2.7 × 10 3 星に対して。


 系統誤差を評価する良い方法は独立な手法で得た観測を比較することである。 図3a は SA 57 の Weistrop 1972, 1980 の独立なカラーシステムでの観測結果で ある。データ整約は、

(1)見かけ等級にWeistrop 1972 のカラーを適用。

(2)再較正した見かけスターカウントに Faber et al 1976 のカラー

の二つの方法で行われた。図3a での等級巾は mV = 12 - 16 である。 図には特徴のカラーが約 0.1 等ずれたことと、あるカラービンあたりの星の数が 25 % 程度変動したことが示されている。

図3b.SA 57 Weistrop 1972 と King の観測の比較


 SA 57 Weistrop 1972 と King の観測の比較 

 図3bは SA 57 Weistrop 1972 と King の観測の比較をしめした。King のデータ には B - V = 1.4 付近に特徴が見られるが、 Weistrop の方にはないことに注意せよ。 このピークは原データでは僅かに 11 星に過ぎない。King のデータは V = 18 までで 総数 58 星しかないのに対し、Weistrop は 6900 星という違いがある。このように明るい 見かけ等級と標準的カラー B - V でさえ、大きな不定性が存在する。



図3c. Javis と Tyson による隣り合った 2 領域のスターカウントの比較。 エラーバーはポアソン統計。


 隣り合った 2 領域のスターカウントの比較 

図3c は Javis と Tyson による隣り合った 2 領域のスターカウントの比較である。 数度しか離れていないがカウント数は倍くらい異なる。モデルが予測する差は 2 % である。同じ現象がもっと高銀緯でも見られる。 の二つの方法で行われた。図3a での等級巾は mV = 12 - 16 である。 図には特徴のカラーが約 0.1 等ずれたことと、あるカラービンあたりの星の数が 25 % 程度変動したことが示されている。

図3d.SA 68 カラー分布の比較。一つは Kron 1978, 1980 データ。もう一つは Koo, Kron 1982 の改良されたデータ。(J+F)/2 = 19.95 - 22.15 間のカラー


 SA 68 カラー分布の比較 

 図3d.は SA 68 カラー分布の比較である。一つは Kron 1978, 1980 データ。 もう一つはKoo, Kron 1982 の改良されたデータで、(J+F)/2 = 19.95 - 22.15 間のカラーを図示した。図を見ると、全体としてカラー 0.2 等のシフトが観察さ れ、ビンあたりの数で 50 % の増減が見られる。

 カウントの違いの許容範囲 

 上の比較はモデル間の差を区別するにはかなり大きな違いがデータとの間に存在 する必要があることを示している。ラフな見積もりでは、ある特徴がカラーで 0.2 等違っていても受け入れるし、ビンあたりの数が 25 % までなら許すべきである。 NGPに対しての異なる研究毎の異なるスターカウントの結果に基づき、我々はナンバー カウントの誤差が 20 % までは受け入れる。観測の情報をあまり減らさずに、安全を 図るため、計算と観測の比較は観測リミットの 1 等明るい所までにする。



 2.d.楕円体の軸比と規格化 

 軸比の決定を b = 90° と 270° から行う 

 楕円体軸比は l = 90° と 270° 面内の領域にある楕円体成分星の数を 比べて決める。もし、軸比 = 1 なら、この面内の楕円体星は与えられた等級とカ ラーでは銀緯に依らず一定である。Bahcall, Soneira 1980 では、Kron 1978, 1980 の SA 57 と SA 68 のスターカウントが用いられた。M 67 の色等級図を仮定して 導いた軸比は 0.85 であった。ここでは色等級図に M13, M92, 47 Tuc の色等級図 を用いて解析を繰り返すことにする。

 SA 57 と SA 68 の間での楕円体星の比 

 Kron データでは楕円体と円盤の星の分離はカラーで行われる。J - F < 1.35 の星はほぼ全て楕円体星である。SA 57 と SA 68 の間でのそのような青い星の比は 1.09 である。カラーシフトが最大 0.2 ある可能性も考えると 1.09-0.17 +0.14 と見積もれる。

 モデル計算の値 

 表3にはモデル計算で出したその比が載っている。最良フィットは軸比 0.80 で 得られる。比の不定性は軸比 0.75 から 1.0 に対応する。表3の計算では Mv = 7 付近で楕円体光度関数に起きると Wielen 1974 が主張する窪みがある場合とない場合 の双方を計算した。表には J - F = 1.15, 1.35, 1.55 のそれぞれの値より青い 星全部に対する比の値が載せられている。表3の値はそれぞれの領域に対する最良 フィット、SA 57 では M13, SA 68 では 47 Tuc を用いて計算した。ただし、表の値 は用いた色等級図にはそれほど依存しない。

 軸比の推定値 

 結局軸比は 0.80-0.05+0.20 と結論する。この結果は 銀河中心付近の RR Lyr 星から Oort, Plaut 1975 が出した軸比 b/a = 0.8 - 1.0 とよく一致する。Fall 1981 はバルジ写真の測定から b/a &asymp: 0.8 を得た。 我々がスターカウントから上に得た値は銀河中心距離 ∼ 10 kpc 付近の形 である。一方 Oort, Plaut や Fall の結果はずっと小さい距離での形である。我々は 銀河中心距離 2 - 10 kpc の間で楕円体成分の形が大きく変わる証拠はないと結論する。

勿論この頃棒状バルジの事は知られていなかった。

Frenk, White 1982 は球状星団の分布から似た結論に達していて、彼らは軸比 = 0.85±0.13 という結果を出している。Boroson 1981 は 8 個の渦状銀河について 0.6 < b/a < 0.9 という結果を得ている。この論文では今後軸比 0.8 を採用する。


  表3.(SA 57 星) / (SA 68 星) の楕円体軸比による変化


 楕円体成分の規格化 

 SA 57 と SA 68 のベストフィットモデルを使うと太陽近傍での楕円体 成分の星の数が求まる。表2にある密度則をつかい、

     n(4<Mv<8) = 2.65×10-5 pc-3

を得る。

図1a を見ると、楕円体成分の星数比としては Mv = 4 - 8 を 1 とした時、 Mv = 8 -12 が 3, Mv = 12 -16.5 が 5 くらい。だから、 表2で 規格化から太陽付近の楕円体成分星(Mv>16.5)が 2.6×10-4 pc-3 を使うなら上の数になる。それでいいのかな?逆みたい。
この規格化の不確実さは少なくとも 25 % はある。 n(4<Mv<8) から、太陽付近 での楕円成分の総数は

     n(Mv<16) = 3×10-4 pc-3

となる。観測的に到達できない範囲の星が数密度に大きく寄与している可能性は否定 できない。この楕円体成分の数は円盤数密度の 1/500 である。



 3.北銀極 


図4a. NGP 方向の各成分からの寄与。円盤と楕円体の巨星、準巨星の寄与も示され ている。計算には標準 B&S モデルが使われた。


 3.a. 一般論 

 標準モデルの予想スターカウント 

 標準モデルが予想する銀極方向の微分スターカウントを図4a に示す。図中には 円盤と楕円体からの寄与を分けて示した。円盤は mV = 15 mag より 明るい部分で卓越し、楕円体は mV = 18 mag より暗い所で支配的と なる。楕円体星で mV = 18 mag より明るい星は殆ど巨星と準巨星と 考えられる。円盤巨星はで mV = 9 mag より明るい星でのみ重要である。

  Luyten と Wielen の光度関数の比較

 Upgren, Armandroff 1981 は Luyten 1968 が固有運動データから決めた円盤 光度関数と Wielen 1975 が Gliese 1969 カタログから得た光度関数との

図4b. WIelen 光度関数と解析表示光度関数によるモデルスターカウントの比較。 差が最大になるのは mV≈16.5 のあたりで約 20 % である。


差の 重要性を強調した。二つの差は Upgren, Armandroff 1981 の図1にはっきりと 示されている。 Upgren, Armandroff によるサンプルの完全性に関する丁寧な 再評価は 可視絶対等級 6 - 9 mag の間で Wielen の低い光度関数の方を 支持している。

 微分スターカウントの比較 

 図4b では Wielen 1974 光度関数と解析的に表示された Luyten 1969 光度関数 に基づく微分スターカウントを比較している。二つの関数は最も明るい星で同じ値 になるよう規格化されている。Wielen の窪みによる最も大きな差が現れるのは mV ≈ 16.5 付近で起き、差の大きさは約 20 % である。楕円体 光度関数の窪みによる差の最大値は mV ≈ 23 付近で起き、差の 大きさは約 15 % である。




  図4c. NGP 方向の微分星計数(mag-1 deg-2). log 表示。 実線は標準モデルの予測。


 銀極方向の星計数 

 図4cと4dは北銀極方向で現在得られる全ての微分星計数データを標準モデルと 比較したものである。 Reid, Gilmore 1982 の南銀極データも付け加えた。観測 星計数は mV = 4 - 22 にかけて 5 桁の変化を示し、モデルもそれを よく予測している。


  図4d. 4cと同じだが実数表示。




図4dでは mV = 15 - 22 の間を拡大して表示している。モデルは  Javis - Tyson データより上を通っているが、データ不定性 ∼ 30 % 以内 である。従って、銀極方向ではモデルと観測が 5 桁に渡って一致していると言える。



 3.b.SA 57 Kron データ(北銀極付近暗い星)とのカラー分布の比較 


 図5a.Kron の SA 57 (北銀極付近) 観測とのカラー分布の比較。サンプルは (J+F)/2 = 19.95 - 22.15 の暗い星。縦軸は、星数 /(0.3 deg2)。計算 カラー分布は標準偏差 0.1 等の分散をかけてある。図5a と b では、楕円成分には M 13 の色等級図を使ってカラー分布を計算した。


 楕円体と円盤成分の性質 

 図5a では Kron の SA 57 (北銀極付近 b = 86° l = 65° ) 観測の カラー分布を標準モデルと比較した。サンプルは (J+F)/2 = 19.95 - 22.15 の 暗い星で総数は 482 個である。モデルは標準偏差 0.1 等で均してある。これは この先全てに共通する。図では楕円体と円盤成分を分離して示した。

 図5b. 5aと同じだがヒストグラム表示。




楕円体の巨星 と準巨星成分も分離して示した。円盤の巨星、準巨星はこの等級帯では無視できる ほど少ない。この等級では楕円体と円盤ははっきり分かれている。これが 2d 節で 楕円体の扁平率を調べるのに使われたのである。この等級では 1/4 の星が巨星か 準巨星である。

 図5bでは5aと同じだがヒストグラム表示にした。SA 68 での同じ (J+F)/2 等級区間 19.95 - 22.15 でのカラー分布が図3dに示されている。



図5c.モデル計算の楕円体成分に 47 Tuc 色等級図を使用した比較。


 楕円体色等級図に低メタル・高メタル星団を使用したら 

 図5cでは 47 Tuc 色等級図が楕円体成分のカラー分布計算に使われた。高メタル なモデルの性質は観測より赤いカラー分布となって現れている。一方図5dでは低 メタル球状星団 M 92 が使われており、今度は観測より青くなった。

図5d.モデル計算の楕円体成分に M 92 色等級図を使用した比較。


 こうして、図1a で仮定した光度関数を使った場合には 北銀極付近での Kron データは, 中間メタル量球状星団 M13 の色等級図が、高メタル星団 47 Tuc や低 メタル星団 M 92 よりよいフィットを与えることが判った。



 3.c.SA 57 (北銀極)Weistrop データ V ≤ 16 明るい星のカラー比較 



図6a.SA 57 (北銀極)方向、Weistrop による明るい星計数との比較。


 Weistrop のデータテープから 13.5 deg2 領域での彼女の等級と カラーを, Faber et al 1976 の測光標準星を用いて、図6の等級に直した。これは V < 16 という明るい等級域で 2900 個の星を含む。


図6b.SA 57 (北銀極)方向、明るい星(mV = 0 - 16 mag)のカラー 分布と中メタル聖断M 13 を入れた標準モデルの比較。


図5a には微分星計数を比較した。観測とモデルの一致は良い。図5b−fではカラー 分布を比べた。明るい方, V = 0 - 12 では楕円体色等級図に M 13 を使っても、 M 92 を使っても一致はよい。暗い方、V = 12 - 16 では 低メタル星団 M 92 を使った方が 少し良い。




図6c.SA 57 (北銀極)方向、(mV = 0 - 12 mag)星のカラー 分布と中メタル聖断M 13 を入れた標準モデルの比較。


図6d.SA 57 (北銀極)方向、(mV = 12 - 16 mag)星のカラー 分布と中メタル星団 M 13 を入れた標準モデルの比較。




図6e.SA 57 (北銀極)方向、(mV = 0 - 12 mag)星のカラー 分布と低メタル星団 M 92 を入れた標準モデルの比較。


図6f.SA 57 (北銀極)方向、(mV = 12 - 16 mag)星のカラー 分布と低メタル星団 M 92 を入れた標準モデルの比較。



 3.King のデータ V ≤ 18 との比較 



図7a. SA57 King の星計測と標準モデルとの比較


 図7は SA 57 0.1 deg2 の King の観測結果を比べた。等級もカラーの 分布も良く合っている。暗い星のデータはノイズが高いのでカラー分布には使わなかった。


図7b. SA57 King の星計測と標準モデルとのカラー比較



 4.SA 68: b = -46°, l = 111° 

 4.a. SA 68: Koo, Kron の (J+F)/2 = 19.95 - 22.15 データ 


図8a.SA 68 (b = -46°, l = 111°) 暗い星、(J+F)/2 = 19.95 - 22.15 の Koo, Kro 1982 カラー分布と高メタル星団 47 Tuc を入れた標準モデルの比較。


 図8a, b は SA 68 b = -46°, l = 111° 領域の (J+F)/2 = 19.95 - 22.15 623 星の暗い星カラー分布を高メタル星団 47 Tuc (図5a)と低メタル星団 M 92 (図5b) の楕円体色等級図を使って計算した分布と比較したものである。一致は良い。

図8b.SA 68 (b = -46°, l = 111°) 暗い星、(J+F)/2 = 19.95 - 22.15 の Koo, Kro 1982 カラー分布と低メタル星団 M 92 を入れた標準モデルの比較。


 下の図8cは中メタル星団 M 13 を使ったモデルの成分を分解して示した。楕円体の 巨星と準巨星は J - F = 0.5 でピークに達し、そこでは全体の 25 % を占めている。 このサンプルでは巨星はあまり重要でなく、暗い主系列星が支配的である。図4dは 古い Kron データとの比較である。



図8c.SA 68 (b = -46°, l = 111°) 暗い星、(J+F)/2 = 19.95 - 22.15 の Koo, Kro 1982 カラー分布と中メタル星団 M 13 を入れた標準モデルの比較。

図8d.SA 68 (b = -46°, l = 111°) 暗い星、(J+F)/2 = 19.95 - 22.15 の 古い Kron 1978, 1980 カラー分布と高メタル星団 47 Tuc を入れた標準モデル(図8a と同じ)の比較。


 4.b. SA 68: King mV < 19.5 データ 


図9a.SA 68 (b = -46°, l = 111°) King データと標準モデルの 星計測の比較。


 図9a は SA 68 b = -46°, l = 111° 0.1 deg2 領域の King による mV < 19.5 623 星の星計数分布を標準モデルと 比べた。サンプルが小さいので揺らぎが大きいが一致は良い。SA 57 の図4a と 同じく、SA 68 でも mV < 9 mag では円盤巨星が、 mV < 18 mag では楕円体巨星が重要になる。


図9b.SA 68 (b = -46°, l = 111°) King の カラー分布を 高メタル星団 47 Tuc を入れた標準モデルの各成分寄与分解して比較。


 図9b、図9cはカラー B - V の分布を高メタル星団 47 Tuc を入れた標準 モデルの結果と比べた。一致は良い。図9dでは中メタル星団 M 13 を使って比較 したが、一致は少し悪くなった。ピークが観測より 0.1 等青くなったのである。しかし それでも許容範囲と言える。King と Koo-Kron データは明るさの点で相補的であり、 合わせて完全なデータセットとなる。




図9c.SA 68 (b = -46°, l = 111°) King カラー分布と高メタル星団 47 Tuc を入れた標準モデルの比較。


図9d.SA 68 (b = -46°, l = 111°) King カラー分布と中メタル星団 M 13 を入れた標準モデルの比較。



 5.SA 51: b = 21°, l = 189° 反中心方向 



図10a. SA 51 b = 21°, l = 189° King データに対する Wielen 光度関数のでのフィット。


 反中心方向。円盤の検討に良い。 

 SA 51 b = 21°, l = 189° が特に興味深いのはそれが反中心方向に 位置するからである。しかも銀緯が低い。従って楕円体成分の重みは低い。SA 51 はこの様なわけで円盤星のモデルに対するよいテストになるであろう。Chiu 1980b はこの King データを解析して、楕円体の寄与が予想外に大きいという結果を 導いた。Chiu の方法に関しては Bahcall et al 1983 で疑問を呈した。

 Wielen 光度関数は良く合う結果を与える

 King の星計数は図 10a で Wielen(1974), 図 10 b で Luyten 1968 の光度関数 を組み込んだ標準モデルと比較されている。 Wielen の光度関数が素晴らしい一致 を与えることが判る。Luyten の場合は特に暗い等級付近でやや不満足な結果と なった。


図10b. SA 51 b = 21°, l = 189° King データに対する Luyten 光度関数のでのフィット。


 カラー分布も Wielen 関数を支持する 

 King が観測したカラー分布は、図 10c で Wielen(1974), 図 10 d で Luyten 1968 の光度関数を組み込んだ標準モデルと比較されている。 mV ≤ 19.5 の星の総数は 468 個である。明らかに、B - V = 1 付近、または Mv = 7 付近でへこみがある Wielen 関数がデータから示唆されることが判る。

 光度関数の窪み  

 結論として、King のデータは星計数でもカラー分布でも、光度関数にへこみが あることの証拠を差し出した。これは Wielen 1974 が言いだし、最近では Upgren, Armandroff 1981 が論じている。図 10 は太陽から 0.6 kpc あたりで その特徴が見えることを示している。




図10c. SA 51 b = 21°, l = 189° King カラーデータに対する Wielen 光度関数のでのフィット。


図10d. SA 51 b = 21°, l = 189° King カラーデータに対する Luyten 光度関数のでのフィット。





図11a. SA 51 b = 21°, l = 189° King カラーデータに対する Wielen 光度関数での標準モデルフィット。各星成分の寄与。楕円体の寄与が小さい。


 B-V=0.5, 1.3 の構造は本当か? 

 図11a は SA 51 mV < 19.5 の King カラーデータに対する 標準モデルでの各星成分の寄与を示す。楕円体成分は非常に小さいことが判る。 しかし、図には B - V = 0.5, 1.3 の所に鋭い構造が見える。これはモデルには なかったものである。どちらも両隣りにはなく、 ∼ 2σ 揺らぎに相当 する。われわれはこの様な鋭い構造はモデルで説明することはできない。 したがって、それらは統計的揺らぎであると考える。この問題はより大きな領域 での観測により確認されるべきである。

 星間吸収の影響は小さい

 これまでの議論では Chiu 1980 に従って、0.2 等の吸収を仮定してきた。 この仮定の重要性を見るため、 mV < 17 の 158 星に対する カラー分布を計算した。計算と観測の比較は図 11b 吸収ありと、図 11c 吸収なし で示した。どちらの場合もあまり結果に差はなく、良く一致している。図11d では 同様の比較を mV < 19.5 に対して吸収なしで行った。吸収による 変化が小さいことは図10c と比較すると明らかである。


図11b. SA 51 b = 21°, l = 189° mV < 17 の King データに対する 星間吸収0.2 等でのフィット。


 赤く暗い星は星間吸収の影響を受ける 

 星間吸収を入れたモデル計算の結果はどちらもあまり変わらなかった。しかし、 これは興味ある事実を浮かび上がらせた。赤い星は青い星よりも星間吸収の影響 を受けるのである。その理由は我々のサンプルが等級リミットであるためである。 青い星の大部分は等級限界より明るいので 0.2 等の星間吸収では影響を受けない。 一方、赤い星は固有光度が低く、多くが限界等級近くにいる。星間吸収は赤く暗い 星の幾つかを限界等級の下に押しやるのである。

 SA 51 から判ったこと  

 King の観測から得た結論は、

(1)Wielen 関数は Luyten よりいい。

(2)楕円体成分はこの方向では極めて小さい




図11c. SA 51 b = 21°, l = 189° mV < 17 の King カラーデータに対する 星間吸収なしでのフィット。


図11d. SA 51 b = 21°, l = 189° mV < 19.5 の King カラーデータに対する星間吸収=0でのフィット。




 6.水がめ座方向: b = -51.°1, l = 36.°5  


図12a.水がめ座での Tritton-Morton の 399 星計数の比較。


 水がめ座の観測 

 水がめ座の低星間減光領域 0.31 deg2 が Morton, Tritton により B = 20 mag まで測られた。サンプルは B = 19 までは完全と思われる。そこまでに 399 個の星がある。水がめ座は銀経が小さく、銀緯が高いので、楕円体成分が円盤 成分に優越すると思われる。

 V < 18 の楕円体星の殆どが巨星か準巨星 である

 図 12a は Tritton, Morton 1983 の星計数を標準モデルと比べたものである。 少ないサンプル数を考えると一致は満足できる。モデルの予測では V < 18 の 楕円体星の殆どが巨星か準巨星である。

 カラー分布は 47 Tuc で合う 

 図 12 b,12 c では高メタル星団 47 Tuc 色等級図に使ってカラー分布を比べた。 一致はよい。12 b では各星成分の寄与を示している。B - V < 1.0 では楕円体成分が円盤 成分より重要であることが判る。楕円体星サンプルの 85 % が巨星か超巨星である。

図12b.V ≤ 19 星のカラー分布。モデルは高メタル星団 47 Tuc の 色等級図を入れた標準モデル。


 M 13 では合わない 

 図 12 d は楕円体色等級図に中間メタル星団 M 13 を使った時のカラー比較で 一致はやや悪い。 モデル予測は 0.15 等青い方にずれ、 47 Tuc を使った時ほどは 良く合わない。

 新しい標準モデルで一致が改善された 

 Tritton-Morton データの今回の解析は Bahcall et al 1983 の時と違い 楕円体の形を扁平にし、Wielen 光度関数を採用したため一致が良好になった。 しかし、前論文の結果は今回も同じである。

 メタル勾配の存在 

 ここで得られた新しい結果は、Kron 1978, 1980 の SA 57 データ、Koo, Kron 1982 の SA 68 データから出した楕円体の規格化が水がめ座データにもよく 合っていると判明したことである。25 % という許容範囲内での一致は 12 c 図に 良く表れている。高メタル星団 47 Tuc の方が良く合ったのは他の銀河でも見られる メタル勾配の存在と合致する。メタル量は明らかに銀河系中心方向で高く なっている。



図12c.b と同じ。ヒストグラム表示。

図12d.中メタル星団 M 13 を用いたモデルフィット。



 7.南銀極 

 7.a. Gilmore-Reid データ 

 Reid, Gilmore は楕円体星を主系列星と考えた 

 Reid,Gilmore 1982 の南銀極 IRG データは数多くの星を含んでいた。 しかし、彼らの V - IRG カラーを B&S モデルで使われる B - V カラー に変換するためには多くの不確かな仮説が必要であった。 Reid,Gilmore 1982 と Gilmore,Reid 1983 で推奨された変換によって彼らのデータが B&S モデルとよく 一致することが確認された。Gilmore,Reid 1983 は B&S モデルを使って彼らのデータ を解析する際に全ての星が主系列星と仮定していた。ところが実際には彼らのデータが 覆うカラーと等級の範囲では、楕円体成分の殆どは主系列から離れた星からなってい るのである。これは、 Ratnatunga 1982 が南銀極方向の星を巨星と矮星に分けた結果とも合致している。

 7.a. i). 観測 

 Reid,Gilmore 1982 のカラー変換 

 Reid,Gilmore 1982 は南銀極付近の 18.24 deg2 の写真サーベイを 行った。主なデータは可視バンド、IIaD+GG495、と I バンド、IVN+RG715 である。 この先このIバンドを IRG と呼ぶ。等級較正は初め、光電測光標準星 を用いて B, V バンドで行われた。かれらは主系列星で成立する タイトな (Cousins) V - I 対 B - V 関係を用いて、B, V 等級しかない星の I 等級 を定めた。

 B&S モデルを V, IRG バンドで表現する 

 我々は、Reid, Gilmore 1982 の処方に従って、B&S モデルの B, V 等級を彼らの V, IRG バンドへ変換した。不幸なことに、この変換を実行するための 観測データが十分には得られなかった。詳細部分は省く。Reid, Gilmore 1982 データは IRG < 17.0 で 11,324 星を含む。





 図 13 a. Reid, Gilmore 1982 南銀極星計数と B&S 標準モデル。

 7.a. ii). 計算と観測の対比 

 標準モデルは良く合う 

 図13 a は星計数の観測値とモデル値の比較である。B&S モデルのパラメターは 標準値に固定した。一致は良い。計数に寄与する楕円体星の殆どは主系列から離れ た星である。ここでは M 13 を採用した。M 92 や 47 Tuc を使った計算も行った が数 % の違いしか出なかった。図 13 b - f はカラー分布の比較である。やはり 一致は良い。ここでは、M 13, M 92 を使ったフィットの方が M 92 より良い。 図 13 b,c は M13, d,e は M92, f は 47 Tuc を使用している。モデルカラーには σ = 0.15 の分散をかけた。

 図 13 b. Reid, Gilmore 1982 南銀極カラー分布と B&S 標準モデル予測。M 13 使用。


 主系列から進化した星の重要性 

 図 13 のどれも主系列から進化した星の重要性を示している。図 13 b, d を見ると それは V - IRG = 0.6 付近で著しい。Gilmore, Reid 1983 は彼らの観測を 我々のモデルと比較するい際に、絶対等級の 1 等あたりの星の数を使用した。その際に  「全ての星が主系列にある」 と仮定して、彼らは観測とモデルには「重大な違い」 があると宣言した。彼らの比較は 15 ≥ V ≥ 17 でなされた。



 図 13 c. Reid, Gilmore 1982 南銀極カラー分布と B&S 標準モデル予測。M 13 使用。


 図 13 e. Reid, Gilmore 1982 南銀極カラー分布と B&S 標準モデル予測。M 92 使用。

 図 13 d. Reid, Gilmore 1982 南銀極カラー分布と B&S 標準モデル予測。M 92 使用。


 図 13 f. Reid, Gilmore 1982 南銀極カラー分布と B&S 標準モデル予測。47 Tuc 使用


 7.b. Retnatunga の予備結果 

 低分散分光による巨星と矮星の区別 

Ratnatunga 1982 は SA 141 b = -86°, l = 246° の 2.8 deg2 で 13 < V < 16, 0.9 < B - V < 1.4 のすべての星の低分散分光 を行った。彼は Bok, Basinski 1964 の測光を利用した。5100 A 付近の MgH と Mg b 帯が巨星と矮星の区別に使われた。 Clark, McClure 1979 を見よ。Ratnatunga の結果は表4に載っている。標準モデルでこの等級帯で 予想される星の数も表に載せてあるが一致は良い。

 10 kpc より遠方の星 

 10 kpc より遠方の星の数も計算して表4に載せた。Ratnatunga が観測した そのような遠方の巨星の数もモデルと一致している。これらの星は Mv < 0.0 の明るさを持つに違いない。

 Mv = 4 のカットオフはあるか? 

 Gilmore, Reid 1983 は楕円体光度関数は Mv = 4 で鋭く切断されると主張した。 しかし、Ratnanunga 1982 が発見した多数の巨星の存在は彼らの全ての見える星は 主系列星であるという仮定が間違っていることを示している。

 この章の結論 

 我々はこの様に、南銀極方向の楕円体星の色等級図は M 13 と 47 Tuc の 合わさった色等級図で近似できると結論する。M13 の重みが圧倒的であるが。


図 14 a. 15 ≤ IRG ≤ 17 での南銀極カラー分布。

表4. Rectnunga 1982 による 2.8 deg2 0.9 < B - V < 1.4 の成分毎の星の数

図 14 b. IRG ≤ 15 での南銀極カラー分布。



 8.楕円体光度関数 

 8.a. 光度関数は Mv < +4 で急落するか? 

 丸め光度関数によるフィット実験 

 Gilmore, Reid 1983 は楕円体光度関数が Mv = +4 より明るい側で急落すると 主張した。彼らは全ての星が主系列にあるとしてデータを解析した。ここでは この仮説を検討する。図 15 a は 2.d で議論した King の 北銀極データである。 フィット曲線は楕円体光度関数を Mv = -6, +2, +3, +4 の明るい方でゼロとした 時の解である。図5 b は類似の比較を Tritton, Morton 1983 に対して行ったもの である。

 他の領域にもカットの証拠はない 

 図15を見ると楕円体光度関数は Mv = +4 まで、多分 +3 まで拡がっていることは 明らかである。我々が検討した銀河系 5 領域で Mv = +4 でカットされている証拠 はない。



図 15 a. 北銀極 King カラーデータを丸め光度関数でフィットしたら。M13 色等級図 使用。サンプルは V < 18
 巨星の数を合わせるにはカットは幾つまで可能か?

 Mv = +4 カットを否定する最も明白な証拠は Ratnatunga 1982 が 光度関数が少なくとも Mv = -2.5 まで伸びている B&S モデルの予言と同じ数の 巨星を確認したことである。我々は、もし光度関数がある値でカットされたら 巨星の期待値が幾つになるかを再計算した。その結果、 Ratnatunga の結果と一致 するには楕円体光度関数は少なくとも Mv = ;1 までは伸びている必要があること が判った。

 Mv = +4 カットでの巨星数 

 Gilmore, Reid の主張するカットでは巨星の数が足りなくなる。どんな球状星団 光度関数を使っても一桁下がる。例えば、巨星数が最も多くなる 47 Tuc 色等級図 を使っても Mv = +4 カットで計算すると巨星の期待値は 0.4 となる。これは 観測値 17 よりずっと小さい。




図 15 b. Tritton, Morton 1983 水がめ座データに対する類似のフィット。 47 Tuc 色等級図を使用。データは B < 19


 8. b. 水平枝の青い端 

 水平枝青端の星の数の比較 

 表5には B - V < 0.2 の水平枝青端の星の数を観測対モデルで比較したもの である。観測は水がめ座、 SA 57, SGP 領域で、計算は M3, M13, M92, 47 Tuc の 色等級図を使用した4つの場合について行った。光度関数には Simoda,Kimura 1968, Hartwick 1970, DaCosta 1982 を用い、 M3, M13, M92 では 水平枝が現れる等級帯 の星の半数が水平枝青端にいると仮定した。47 Tuc では 0.5 < Mv < 1.5 の星の 10 % が水平枝青端とした。

 47 Tuc 色等級図がよい一致を与える 

 M3, M13, M92 を使った場合、水がめ座、両銀極では計算値が一桁観測値の上に 来る。そこでは 47 Tuc 色等級図がよい一致を与える。

表5.B - V ≤ 0.2 水平枝青端





図 16 a. SA 57 カラー分布。モデルスケール高 = 400 pc



図 16 c. SA 68 カラー分布。モデルスケール高 = 400 pc


図 16 b. SA 57 カラー分布。モデルスケール高 = 300 pc



図 16 d. SA 68 カラー分布。モデルスケール高 = 300 pc


 9.円盤のスケール高とスケール長 

 9.a. 円盤のスケール高 

 双峰カラー分布 

 論じた5領域のカラー分布は中間等級帯で双峰分布を示す。初めてこれを指摘 したのが Bahcall, Soneira 1980b, である。明るい等級ではどの方向も円盤星しか見えない。両方が見えるのは 高銀緯領域である。双峰分布は SA 57, SA 68 で見えるが 水がめ座、 SA 51 では見えない。双峰性の条件は、 Bahcall, Soneira 1980b, と Bahcall, Soneira 1983 in Proc. Vancouver Conf. 100, p209 で論じられている。

 スケール高の結果 

この双頭分布は楕円体成分から円盤成分を分離して研究することを許す。 ここでは 5 ≤ Mv ≤ 13.5 の範囲の星のスケール高を調べる。表6ではその 結果をまとめた。第1行にはその星域でスケール光に効く等級が載せてある。第2 行にはフィットから得られたスケール高の限界値が、第3列は星域が載せてある。 浮確定星は 1σ リミットに対応している。つまり、 星数にして 25 % の 不一致となる値である。最後の列は観測者である。

 スケール高の範囲 

 図16と図17には観測カラー分布をスケール高の上限と下限のそれぞれで フィットしてある。読者は最適フィットの 325 pc 時の図と自ら比較して見られよ。 以上の結果から円盤内暗い星に対するスケール高は

     Hdisk = 350 ±50 pc   5 < Mv < 13.5

と結論する。

 体積密度の揺らぎ 

 ある方向で計算される円盤星の数は体積密度、これは一定と仮定した、スケー ル高の掛け算に比例する。図16,17、表6を見ると4方向での平均体積 密度の揺らぎはそう大きくないことが判る。

 意味が判らない。

表6.円盤矮星のスケール高 




スケール高が 325 pc で一定と仮定して、揺らぎは
 ndisk = 1 ±0.15,    5 ≤ Mv ≤ 13.5
 nsolar vicinity


揺らぎの限界は典型的には距離 0.5 kpc に相当する。

 巨星のスケール高 

 McLaughlin 1983 の星計数データは Mv = +4 から +9 では巨星の スケール高に最良の制限を加える。上と類似の計算から

     Hdisk = 250 ±100 pc   -1 < Mv < 3

と結論する。




図 17 a. SA 51 カラー分布。モデルスケール高 = 400 pc



図 17 c. SGP カラー分布。モデルスケール高 = 400pc


図 17 b. SA 51 カラー分布。モデルスケール高 = 300 pc



図 17 d. SGP カラー分布。モデルスケール高 = 300pc



 9.a. 円盤のスケール長 

 h の範囲 

 星計数の計算積分の中には

     integrand ∝ exp[ - (R cosb cosl / h)]

という形で入っている。ここに R は太陽からの距離である。h に下限 を設けることは常に可能である。なぜなら、h を小さくすると上の 指数の絶対値をいくらでも大きくできるからである。しかし、現在のデータ では標準値 3.5 kpc を使う時指数の値はそう大きくない。したがって、 h をそれより大きくしても結果には大きな変化が無い。
 観測との比較 

 われわれは SA 51 (反中心方向)と水がめ座(第1象限)方向で円盤星の予想値 を計算した。25 % 誤差を許容すると、King の SA 51 データは 2.5 kpc ≤ h を意味することがわかった。 Tritton, Morton の水がめ座データはそれほどきつい 制約はかけない、銀緯が高いので、 2 kpc ≤ h であった。 それ以上の役に立つ上限値は得られなかった

 スケール長に関する結論 

 スケール長 h は、2.5 kpc ≤ h である。この結果は類似ハッブルタイプの 他の銀河での値と一致する。



 10.Gilmore-Reid の「厚い円盤」モデル 


図 18 a. 南銀極 Reid, Gilmore 1982 星計数と「厚い」円盤モデルとの比較


 Gilmore, Reid 1983 は全て主系列星という仮定に基づく 

 Gilmore, Reid 1983 は種族 II 星の厚い円盤モデルを提案した。モデルの証拠は 彼らの論文の図 6a, 6b にある。彼らの星数対距離図は2成分指数関数でよく フィットされる。Gilmore, Reid が提出した証拠は観測された星が全て主系列星である という仮定に基づいている。彼らの図 6 に用いられた距離は主系列星の色ー等級関係 を観測カラーに適用して得られたものである。

 厚い円盤モデルをこうテストする 

 我々のテストは3段階に分かれる。

(1)Gilmore, Reid 1983 の計算を繰り返し、中くらいの等級でSGP データを再現 することを確認する。

(2)SA 57 Kron 1978, 1980 と SA 68 Koo,Kron 1982 のもっと暗いデータに彼らの モデルを適用する。暗い星では一致が悪いことを示す。

(3)最後に我々のモデルで主系列だけと仮定すると彼らと同じような結果になる ことを示す。

図 18 b. カラー分布の比較。


 Gilmore, Reid 1983 の再現 

 Gilmore, Reid 1983 の複合円盤モデルは二つの成分からなる。

(1)スケール高 ∼ 350 pc の円盤

(2)スケール高 ∼ 1450 pc の厚い円盤

この2成分の比は彼らの図 6 a で 2 本の直線が交差する点から推定される。厚い 円盤の規格値は太陽位置で ∼ 2.5 % である。Gilmore 1983 に従い、厚い円盤 に Wielen 1974 の光度関数を適用した。ただし、それを Mv = +4 でカットして用 いる。このカットオフは見かけ等級の明るいところで青い星を余り多く産み出さない ために必要とされた。

 「厚いモデル」は SGP の浅いデータをよく再現する 

 図 18 a はこのモデルがデータを非常によく再現することを示す。図 18 b は 厚い円盤がカラー分布もよく表現することを示す。



図 19 a. SA 57 Kron 1978, 1980 と「厚い円盤」モデルの星計数比較。

 SA 57, 68 の深いデータは「厚い円盤」モデルと合わない 

 しかし、 SA 57, SA 68 との比較は合わない。「厚い円盤」モデルは J - F = 0.7 ピークを再現出来なかった。この不一致は厚い円盤成分にメタル量勾配を含める とさらに悪化する。
楕円体成分は含まれているのか?

図 19 b. SA 68 Koo,Kron 1982 と「厚い円盤」モデルの星計数比較。


なぜならば、そうすると J - F がさらに ∼ 0.2 mag 青い方にずれるからである。 これは厚い円盤星を二つの星の間にある谷間中央の方に引き寄せる結果になる。 中間スケール高の種族に関する議論は Bahcall 1983 ApJ 265, 730 を見よ。



図 20 a. 標準 B&S モデルで星が全て主系列にあるとした時の比較。データ点は 楕円体に M 13 色等級図を使用。上の線は準矮星にメタル量シフトを仮定した。 下の線はメタル量シフトなしの場合。絶対等級 4 と 5 の間。


 Gilmore, Reid モデルの再現 

 図 20 a, b は Gilmore, Reid がどのように彼らのデータを再現したかを示す。 我々は標準モデルを計算し、IRG に変換した。彼らに従い、次に 彼らの主系列色―等級関係を用いて個々の星の距離を算出した。結果は図20 に示されている。直線は Gilmore, Reid 1983 から取った。

図 20 b. 標準 B&S モデルで星が全て主系列にあるとした時の比較。データ点は 楕円体に M 13 色等級図を使用。上の線は準矮星にメタル量シフトを仮定した。 下の線はメタル量シフトなしの場合。絶対等級 5 と 6 の間。直線は標準円盤 と厚い円盤を示すように Gilmore, Reid が引いた。


 「厚い円盤」の矮星の正体は楕円体巨星 

 図の2本の直線は我々のモデルで仮に全ての星が主系列にあるとした時の 結果である。この擬密度を見ると準矮星には中間メタルシフトがよさそうである。 つまり、われわれの標準モデルを「適切に」誤訳すると、Gilmore, Reid が 示唆する密度分布が導かれる。「厚い円盤」は誤解により人工的に導かれた 産物である。 10 kpc 程度の距離にある楕円体巨星が「厚い円盤」の 1.5 kpc 距離にあるとされた矮星の正体である。



 11.まとめと議論 

 主な結果は簡単な標準モデルが、5領域の星計数とカラー分布を全て十分によく フィットすることである。個別には、

 (1)不確定さ 

 図3や 2.c 節で議論したように、使いなれた B, V バンドで比較的明るい等級 を扱ってさえかなりの不定性が伴う。それは、汎用性の低いバンドではさらに大きい だろう。我々はモデルパラメターでカラーシフト 0.2 等、規格化で 25 % までを 許容することにした。現在のデータを考えて、全部のパラメターを動かして全てに 合う解を探す事はしなかった。各ケース毎に計算結果と観測データを示したから読者 自ら我々が設定した不確実度の範囲が適当かどうかを判断してほしい。

 同じ領域の同じ等級帯を複数のグループが独立に観測、解析することが極めて 望ましい。

 (2)円盤スケール高とスケール長 

 円盤矮星のスケール高は SA 57, SA 68, SA 51, SGP の観測から決まった。 Wielen の円盤光度関数がどの領域でも成立すると仮定して、我々は全ての領域に 適合する解として 5 ≤ Mv ≤ 13 に対し 350±50 pc を得た。同じ データから、 5 ≤ Mv ≤ 13 での数密度は太陽近傍の密度と ±15 % の精度で等しい。

 意味が判らない。視線に沿って密度一定? 

 円盤巨星のスケール高は決めにくい。McLaughlin 1983 のデータを使い、巨星 スケール高を 250 ±100 pc と決めた。円盤スケール長は 2.5 kpc 以上である。

 (3)光度関数に窪みがある 

 Wielen 1974 と Upgren, Armandroff 1981 は近傍星の光度関数には Mv = 7, すなわち B - V = 1 付近に窪みが存在することを示した。図 1a を見よ。SA 51 領域のより 遠方の星に対し King が行った星計数とカラー分布にも窪みの証拠が見つかった。その 結果は図10に載っており、第5章で論じられている。

(4)楕円体の軸比 

 銀河中心から 10 kpc の所での楕円体軸比は、太陽から銀河中心方向に垂直 な面での星計数データを使って決められる。面内の3領域データがあれば、 我々は楕円体の規格化と軸比の二つを決められる。
 我々は2領域 SA 57 と SA 68 を使って軸比を求めた。我々の結論は b/a = 0.80 -0.05+0.20 である。この結果はもっと近距離で Oort, Plaut 1975, Fall 1981 により得られた値とよく一致する。また、球状星団 システムに対する Frenk, White 1981 の値とも合う。軸比が距離により変化する 証拠はない。

 楕円体の規格化は 2d 節で与えられた。それは Wielen 1974 が決めた近傍星 数密度の 1/500 である。

 (5)メタル量勾配 

 データにはメタル量勾配を示唆する証拠がある。楕円体成分への寄与が最大になる 距離が Bahcall 1983 に述べてある。それによると、SA 57 (10.5 kpc), SA 68 (11.5 kpc), SA 51 (13.5 kpc), 水がめ座 (7.7 kpc), SGP (10.5 kpc) である。銀河中心距離が最小となる水がめ座では 47 Tuc 色等級図が最良フィット を与えた。中間銀河中心距離の SA 57 では M 13 がよかった。これは他の銀河で 見られる銀河中心距離と共にメタル量が低下する現象に合致する。

 (6)楕円体巨星の存在 

 中間等級 V < 18 の楕円体星の殆どは巨星か準巨星である。これは球状星団 色等級図を使用したための結果である。カラー分布の計算は球状星団の色等級図 がくねくねしているためにとても厄介である。この曲線はスプラインで近似して カラー分布を出すのに使うべきである。この作業を飛ばすと正しい解が得られない。

Ratnatunga 1982 の分光サーベイは多数の楕円体巨星を確認した。Gilmore, Reid 1983 が仮定した、Mv = +4 で光度関数が急落する現象の証拠は見出せなかった。

 (7)楕円体星には水平枝青端がない 

 SA 57, 水がめ座、SGP の観測から、楕円体フィールド星には水平枝青端の星が欠けて いることが判った。もしも、楕円体フィールド星が M3, M13, M92 と似た水平枝を有して いるならば、 B - V < 0.2 の青い星が観測されているよりは少なくとも10倍は 見つかるはずである。この結果は表5にまとめてある。観測は楕円体フィールド星が 47 Tuc 的な色等級図を持つという仮説に合致する。


 (8)「厚い円盤」モデルは間違えている 

 「厚い円盤」モデルは SA 57, SA 68 の深いデータと合わない。「厚い円盤」が 予言するカラー分布は観測双峰分布の中間の谷にピークを示す。B&S 標準モデルは Reid, Gilmore 1982 の等級分布もカラー分布も共によく合う。Gilmore, Reid が 標準モデルは観測に合わないと言っていたのは、彼らが「全ての星は主系列」という 誤った仮定を立てていたからである。

 (9)球状星団光度関数の特徴 

 現在のデータでは、図 1a に見られる球状星団光度関数の特徴が楕円体にも 存在するかどうかを決めることは難しい。等級 16 から 18 での高精度の測光観測 がその正否を確かめるであろう。


 (10)垂直な方向での K 巨星の分布 

 銀河面に垂直な方向での K 巨星の分布は付録Bで論じている。標準モデルで 予言する密度は Oort 1960 の 2 kpc 高までのデータとよく一致する。Gilmore 1983 は彼の二重指数関数分布でフィットを行った。標準モデルでも同じような フィットが得られているがそこには「厚い円盤」は入っていない。

 (11)クエーサ   銀河モデルと暗い星計数の一致が良いので暗い等級におけるクエーサの数密度に 制限をつける。この論文では [J+F]/2 < 22.15 での暗い星の領域の J - F < 0.35 での白色矮星とクエーサの数は ≤ 75 個である。


 付録A 球状星団光度関数 Mv = +1 - +4 の特徴 


図 21 a. 銀極方向の星計数。実線は標準モデルに GCF を含めた。点線は含めない。 対数スケール表示。

 球状星団光度関数 Mv = +1 - +4 の特徴は "GCF" と呼ばれる。問題はこの特徴が 楕円体フィールド成分の光度関数にもあるかどうかである。図 21 a と b は銀極 方向で、観測星計数と標準モデルを比較したもので、実線は GCF を含めたもの、 点線は GCF 無しのモデルである。

図 21 b. 銀極方向の星計数。実線は標準モデルに GCF を含めた。点線は含めない。 実数スケール表示。



二つのモデル計算の差は最大で 30 % である。これは異なる観測間での分散と大体 同じ大きさである。


 図 22 は SA 68 と SA 68 で GCF を入れた計算である。GCF を入れない計算 図 5b, 8a と比べるとあまり差がない。一方、水がめ座で GCF を入れた計算は入れない場合 よりフィットが少し改善された。


図 22 a. SA 57 の星計数と GCF を含めた標準モデルとの比較。図 5b と同じ 


図 22 c. 水がめ座の星計数と GCF を含めた標準モデルとの比較。図 12a と同じ。


図 22 e. SGP の星計数とGCF を含めた標準モデルとの比較。図 14a と同じ。



 Reid, Gilomore のカラー分布は GCF 無しの方がよくフィットする。

以上の結果から、我々は現在のデータでは GCF が楕円体光度関数に存在するかどうか を決めることは出来ないと判断する。

図 22 b. SA 68 の星計数とGCF を含めた標準モデルとの比較。図 8a と同じ。


図 22 d. 水がめ座 の星計数とGCF を含めた標準モデルとの比較。図 12c と同じ。


図 22 f. SGP の星計数と GCF を含めた標準モデルとの比較。図 14b と同じ。



V = 16 - 18 等付近での B - V 分布は GCF 存在に敏感な領域である。 図 23 a - d では北銀極のカラー分布を GCF ありとなしとで計算モデルを 比べた。


図 23 a. 北銀極での GCF の比較。V = 16 - 17 mag. GCF あり。 


図 23 c. 北銀極での GCF の比較。V = 17 - 18 mag. GCF あり。



将来の広領域 B, V = 16 - 18 観測が銀極領域でなされると GCF の程度がはっきりする だろう。


図 23 b. 北銀極での GCF の比較。V = 16 - 17 mag. GCF なし。 


図 23 d. 北銀極での GCF の比較。V = 17 - 18 mag. GCF なし。 



 付録 B: K巨星の垂直分布 

 有名な論文で Oort 1960 は 円盤垂直方向の K 巨星分布を調べた。図 24 には Oort の結果と標準モデルの予想を並べた。モデル計算では Keenan 1963 に従い K 巨星の絶対等級として -0.3 ≤ Mv ≤ +0.2 を採用した。この等級巾は結果に そう大きくは影響しない。

 モデル曲線が 900 pc の先で緩やかになるのは楕円体成分星の影響である。 1.2 kpc の先では楕円体成分が半分以上を占める。観測と予想は 2 kpc までは良く合う。 2 kpc の先ではモデルは Oort が示す値を上まわる。これがモデルの欠陥か観測の誤りかは 明確でない。低メタル K 巨星の分類は Oort が依存した HD や BSD のような低分散 分光では難しいことが知られている。

 Gilmore 1983 は Oort が報告した K 巨星の密度分布は「厚い円盤」の存在を 示していると論じた。標準モデルと Oort データの密度分布は Gilmore の二成分 円盤に良く合う。それらも図 24 に示した。大事なことは「厚い円盤」モデルで フィットされた標準モデルには「厚い円盤」が仮定されていないことである。



図 24. 円盤垂直方向の K 巨星分布。実線は Oort 1960 から。白丸は標準 モデル。破線の二直線は Gilmore 1983 より。大きいスケール高の直線が 「厚い円盤」に対応する。