ウィルソン山 100 インチ鏡クーデ分光器による、 β Ori,
α Cyg, α Ori, α Sco, α1 Her, β
Peg, ε Peg の D1, D2 スペクトルは系統的に
正常なラインより負速度にずれている。幾つかの星の D 線は非対称で、二つの
成分を示唆する。その片方が正常速度であろう。 H, K 線も D 線と同じ現象を示し、M 型星の場合には H と K の間にある Al の2本も同様であった。それらの線の平均のズレは -5 km/s であった。 | これ等の星は太陽に近く、星間吸収は考えにくい。少なくとも M 型星では、 ゆっくりと膨張する外層という仮説が尤もらしい。 β Ori と α Cyg の場合は星間ラインの効果が大きいだろう。 γ Cyg では Fe ライン は Fe、Ti イオンより大きな負速度を示す。 CeII はさらに大きな負速度を 持つ。同様の現象は α CMa と α Cyg でも見られた。それらの 結果は縦方向の対流が異なるレベルのラインに影響を与えるという仮説が それらに合う。 |
吸収線が分離成分 吸収線が分離成分を持つ例は良く知られている。 H, K, D 線の それは通常星間吸収線に帰せられてきた。また連星の分離線は主星と 伴星の異なる視線速度を表していると考えられる。 |
Me 型星の輝線 しかし、Me 型長周期変光星に見られる、明るい水素線と正常吸収線の大きな 速度差は別の性質を有し、おそらく大気に由来するものであろう。強い 縦方向の対流が説明としては尤もらしい。 この論文では、いくつかの明るい星の Na I, Ca II, Al I, Si II ライン を調べる。 |
β Ori, α Cyg, ε Peg といくつかの M 型星で D1, D2 スペクトルが測られた。表1にその結果を示す。 第5列が正常ラインからの、第6、7列がナトリウム線からの視線速度である。 | 幾つかの星 α Sco, α1 Her, β Peg, ε Peg では ラインの形に著しい非対称が認められる。それは正常ラインに 第2のブルーシフトしたラインが重なったためらしい。 α Ori, α Cyg もある程度の非対称が存在するが弱いので、全巾 のみを測った。 |
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表2= H, K 線と SiII ライン 表2には、β Ori, α Cyg, α Ori, β Peg の紫外ス ペクトルによる視線速度測定を示す。 ズレのまとめ 表3には、表題のライン速度ー正常ライン速度、を示す。比較の結果は、 (1)ナトリウムラインは系統的にずれていて、M 型星ではその大きさは 5 km/s に達する。β Ori, α Cyg ではさらに大きいだろう。 (2) H, K 線のシフトは D 線と大体一致する。 (3)β Ori の Si II ラインは D 線と同じ方向のズレを示すようだ。 しかし、その値は多分小さい。 (4)λ3944, 3961 の Al I ラインのズレは H, K 線とほぼ等しい。 (5)正常ラインと較べたズレは例外なく負である。 (表3を見ると、正の値もある。どういう意味か? ) 星間吸収線は原因ではない まず、星が近すぎる。それにズレが全て負である。銀河の微分回転を考慮して 計算すると、星間吸収とするとズレは + 1.6 km/s から -0.3 km/s 程度だが、 観測は -4 から -6 km/s を与えている。 ![]() 表3.表題のライン速度ー正常ライン速度。 |
![]() 表2.H, K 線, Si II 線の視線速度。 |
Mg 星は流出大気 M 巨星のズレの説明にはガス流出が考えられる。そのような大気膨張は新星 で見られ、 ウオルフライエ星や早期型輝線星でも想定されている。Al I, Na I, Ca II の吸収線のズレが同じくらいであることからそれらが同じあたりに 居ることを予想させる。 β Ori と α Cyg は別説明 β Ori の D 線は弱くて細く、星間吸収線と形が似る。一方、α Cyg の D 線は複雑で明らかに恒星成分を持つ。流出と星間吸収の複合かも。 γ Cyg γ Cyg の場合は興味深い。表4に観測結果を示す。それらは対流の効果を表している 可能性がある。このあと、色々議論があるが略。 |
![]() 表4.γ Cyg の視線速度 |