The Space Distribution of the OB Stars in Carina


Abraham
1970 AJ 75, 703 - 717




 アブストラクト 

 新しい Hβ ライン強度とスペクトル分類から、カリーナにある 436 の OB 星までの距離を決めた。銀河系中心からから見ての OB 星の分布には 鋭い縁が存在することが判った。OB 星の帯は Rg < 3 kpc までは銀河面に 貼りついている。この距離までは OB星 の平均 |z| = 38.1 pc である  。Rg > 4 kpc で OB- 帯は銀河面から下方向に 2° - 3° の角度で逸れ始めその傾向は Rg = 10 kpc まで持続する。この折れ曲がりは HI 21 cm 観測で見出された折れ曲が りと類似の現象である。


 1.イントロダクション 

 カリーナ領域の利点 

 Bok et al 1970 のレビューはこの領域に若い種族1星が多く、かつ 減光が弱いために数 kpc まで見通せるという利点を兼ね備えている事を述べ ている。そのため、カリーナ領域は種族1星の研究をするのに絶好の場所で ある。

 OB-星 

 OB-星は明るいばかりか、セファイドやウォルフライエ星より数が何倍も多 い。個々の星の特殊性は分からないが、全体の位置分布は調べられる。Hoffleit (1956), Feinstein 1969 はこの領域の OB-星分布を調べたが、数が不足して いる。
 対物プリズムサーベイ 

 そこで、Graham, Lynga 1965 は対物プリズムサーベイを行い、より暗 く、従って遠方の OB 星を探した。このサーベイには 454 星がリストされた。 それらは m = 8.5 - 11.5 で η Carinae の周り 75 deg2 の 範囲に広がる。混み合いのため幾つかの散開星団の星はサーベイから外された。 54 星は The 1966, Wray 1967 カタログに Hα 輝線を持ち、 Be 星 として載っている。それらの同定と共にサーベイ星の等級とカラーは Graham 1968a が発表した。Wakraven, Walraven 1960 5色測光がそれらの 星に対して実施された。しかし、絶対等級を出すための較正は未だなので 補助データとして用いる。


 2.Hβ 測光と分光データ 

 Graham, Lynga 対物プリズムサーベイ星に対する Hβ 測光が 1968, 1969 年にセロトロロで行われた。 36 インチと 16 インチ望遠鏡が用いら れた。一方 78 星のスペクトルも撮った。

 3.絶対等級 

 観測した Hβ 指数から絶対等級を導いた。Hβ 強度と絶対等級の 間の強い相関は、簡単であるが確実な絶対等級の導出を助ける。Hβ 線の 両側で対称的なフィルターを用いることで、Hβ 指数は赤化の影響を受け ず、強い減光を受ける領域での観測に好適である。ただし、問題はこの方法が Hβ 輝線の星に使えないことである。  この他にも HeII ラインの混入その他いろいろな問題がある。高温になると Hβ 法は使えなくなる。O9 より早期では Blaauw の方法が用いられる。


 4.星間減光の補正 

 (U-B) と (B-V) から OB-星の色超過を計算する。Be-星の紫外カラーは バルマー線と連続光で汚染されていて、Morgan,Harris 1956 の方法で処理 する。赤化線の勾配 E(B-U)/E(V-B) = 0.63 を仮定する。固有カラー関係 を Walravem 1964 から採り、Hβ 指数を併用して、異なる光度グループ 毎に異なる固有カラー関係を使用する。  Be 星の色超過はスペクトルクラス、 赤化の殆どなく、輝線を持たない B-型星の (V-B) カラーから決める。 使用した固有カラーは B0 Ve:-0.105, B1 Ve:-0.090, B2 Ve:-0.080, B3 Ve :-0.070 である。


 5.個々の星の距離 

 こうして、減光と絶対等級とから個々星の距離を決めた。その結果を 表1に示す。個々星の5色測光のデータは Graham 1968a に発表済みである。 距離エラーの最大の原因は絶対等級の不定性である。特に 5 kpc より遠く では距離を大きく見積もる傾向がある。したがって、今回のデータは 特に 5 kpc より遠方では OB-星の分布に関し限られた情報しか与えないと 看做すべきである。しかし、観測される距離指標分布が銀経と共に大きく 変化するので、意味ある補正は不可能である。図1にサンプル全体に対する 距離指数の分布を示す。DM = 12.3 に鋭いピークが見える。これは η Carinae 星雲に付随する OB アソシエイション内の多数の OB-星による。 しかし、全体としては星の距離は広い範囲に広がっている。特に近距離 と遠距離にある星の数が多いことは、この分布を一定距離に集中する 星と距離推定エラーで説明することが難しいことを示している。

図1.表1の距離指数の分布。  


 6.OB-星の銀経区間毎の分布 


表2.カリーナ OB 星分布の縁線。

 分布の縁線 

 図2は、横軸(銀経)ー縦軸(距離)面上の OB 星の分布を示す。 この図の著しい特徴は OB 星の分布に実線=鋭い縁が存在し、その向こう 側には OB-星が殆ど見当たらないことである。D < 2 kpc では星は l = 282 - 292 の観測域全体に広がって分布する。距離が遠くなると、 星は l 大の方向に集まり出す。例えば、l < 285 では D > 5 kpc の 星は一つも無い。 一つか二つの例外を除くと、星は鋭い縁線の内側に 固まっているように見える。この縁線は図2に実線で描いた。グラフを 極座標表示すると、この縁線は l = 287° 線と平行に引かれている ことが分かる。最も明るい星の分布は、この縁線が D = 10 kpc まで 伸びることを示す。縁線までの距離は表2にまとめた。

 吸収のせい? 

 この縁が吸収の効果で生じたとは考えにくいが、チェックのために 星を光度で3グループ、(i) M < -5, (ii) M > -3.5, (iii) M = [-3.5, -5], に分けた。吸収効果なら、明るいグループの縁線は遠方に 引かれる筈である。しかし、どのグループも同じ縁線を示した。非常に 濃くてどの明るさの星もそこでブロックする壁が存在すればこの現象は 生じ得るが、現在最も単純な解釈は縁で実際に OB-星が消えるということ だろう。

図2.横軸(銀経)ー縦軸(距離)面上の OB 星の分布。
   実線=OB 星の分布に生じている鋭い縁。


 距離が不正確でも鋭い縁線? 

 OB 星の距離が近似的な正確さしか有しないのになぜ縁線がそれほど鋭く定 義できるのだろう? これは縁線が視線方向となす角度が小さいためらしい。 銀経、銀緯が正確であれば、正確な距離はあまり重要でない。
(この理屈はあんまり良く分からない。 )


 腕の縁? 

 距離ー銀経分布からは太陽は OB-星縁線の内側に位置する。しかし、 Feinstein の研究に依れば、カリーナ方向 1 kpc 以内には OB-星は殆ど 存在しない。したがって、縁線はくるりと廻って、我々と遠方星の間、1 - 2 kpp 付近に入り込んで来ているらしい。縁線を非常に若い渦状腕種族の境界 と考えるなら、Bok (1956) が報告した、晩期 G-型から早期 A-型の星が 距離 1 kpc 付近に密集していることは興味深い。このやや古い種族の星 はもっと若い種族の外側に位置する。これは Lin, Shu 1969 が密度波 構造で予言した通りである。





図3.銀河面からの光度と太陽からの距離の関係。銀経2度区分毎に プロット。各図の実線=平均高度曲線。

 7.銀河面と垂直な方向の OB-星分布。 

 z分布の特徴 

 表1には個々星の銀河面高度 z が載っている。図3には、 OB-星を 銀経2度区分に分けて、z - d プロットした。図に共通な特徴は、

(i) d = 3 kpc までは星は銀河面に貼りついている。 d < 3 lpc の 226 星に対し |z| 平均は 38.1 pc である。

(ii) その先で d > 4 kpc で OB-星層は下向きに曲がり始める。

 曲り 

 d > 4 kpc で OB-層が曲がる現象は l = [284, 292] のどの銀経区間にも 見られる。これは HI に見られる曲りと同じ現象である。表3にはこの関係 を示す。

表3.OB 星の曲り。太陽からの距離 d と銀河面高度 z の関係。


 8.各銀経区間の特徴 

 9.セファイドとウォルフライエ星との比較 

 図4にセファイドと WR-星の高度分布を示す。データ数が少ないが 同じような折れ曲がりが見える。もっと多くのデータでこの傾向を 調べるべきである。

図4.太陽距離 d と 銀河面高度 z の関係。バツ= W-R 星。黒点=セファイド。 距離は Smith, Fernie から採った。実線= OB 星の平均曲線.  


 表1.Hβ 測光、絶対等級、距離