新CCD+スリットレス分光設計案その1。
先日の打ち合わせに沿いまして、ANIR可視カメラでの
スリットレス分光について初期検討をしてみました。
案は A〜C の 3種あります。資料を添付します。
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光路図 |
なお、スポットダイアグラムの計算条件は下の通りです。
・視野位置:□6.6arcmin の視野内で、下SpotDiagram計算位置 に
示した通りの 9箇所の画角について計算してある。
・波長 :波長 0.55〜0.90μm を縦に並べて図示してある。
・縮尺 :各々のスポットは 150μm(3.9 arcsec)の矩形内でプロット。
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案A〜C に共通のスポットダイアグラム計算位置 |
3種の案は下のようになっています。
[案A]
最も改修が簡単な(安上がりな)案。
平行平板に透過型グレーティングレプリカを生成したものを、
現状のフィルターホイールに組み込む。
(フィルターホイールに空きがないような気もしますが…)
0.55〜0.90μm は CCD上で 約 800μmに分散され、
波長分解能は λ/Δλ〜約100 @ 2pix sampling 。
しかし収差が typical には 3〜4pix 程度(0.6〜0.8arcsec相当)に
なっているので、有効な波長分解能は 50〜70 程度になると思われる。
(視野位置や波長により収差がさらに大きいことに注意)
回折効率(理論値)は 案A-回折効率デモ.pdf の通りで、550nm が
ピークのため、長波長ほど効率が低下し、λ900nm では 60% 程度になる。
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案A のスポットダイアグラム |
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案A のおおよその回折効率 |
[案B]
次いで簡単な案。
グリズムは通常の 2.3°頂角=ブレーズ角のものを
コリメート光束中に挿入する。
よってグリズム挿入機構が必要になる。
0.55〜0.90μm は CCD上で 約 1300μmに分散され、
波長分解能は λ/Δλ〜約170 @ 2pix sampling 。
しかし収差が typical には 3〜4pix 程度(0.6〜0.8arcsec相当)
なので、それを考慮すると有効波長分解能は 80〜120 程度になると
思われる。
(視野位置や波長により収差がさらに大きいことに注意)
回折効率は 案A に比べて 10% ほど長波長側にシフトし、
λ600nm でピークとなり、λ900nm で 70% 程度。
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案B のスポットダイアグラム |
[案C]
カメラレンズも新しくする案。
グリズムの仕様や分散、回折効率などは 案B と同じ。
ただし、視野の広い範囲で収差が良好なので、それを考慮すると
有効波長分解能はほぼ全域で 120 程度(場所によりもう少し良好)
になると思われる。
なおカメラレンズは、新しくするもののコストパフォーマンス重視で、
BK7材相当ガラスを主にした 2枚玉構成。
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案C のスポットダイアグラム |
なお、グリズムレプリカは Newport (Richardson) の中から
使えそうな特性のものを選んであります。
また、いずれの案にも共通の点として、オーダーソート用の
バンドパスが必要になりますが、それはグリズムのレプリカでない面に
コーティングを施すのが簡単ではないかと考えます。
この場合のバンドパスコート付のグリズムの価格は、おおよそは
200万円くらいになりそうです。
詳しくはもう少し使用を固めてから算出したいと思います。
進め方としては、波長分解能と回折効率で 案A v.s. 案B を判断し、
あとは予算次第で 案C まで取り組むか否かを考えていくことに
なると思います。
このメールへの返事
●CCDカメラの変更に伴って、7.4um/pix から 13um/pixに
変更になります。(pixel scale 0.21arcsec/pix => 0.37arcsec/pix)
できれば、そのピクセルスケールを少なくとも0.3arcsec/pixくらいにまでは
戻したいと思っています。
で、一点質問なのですが、
・案(A)or(B)のカメラレンズ系をいじって、スケールを変えることはどれくらい
お金と全体設計に影響があるでしょう?
●あと、案(A)はなかなか難しいかもしれません。
可視フィルターホイールは
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kibans/anir/pictures/081111opticalfilter/P1000791.JPG
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kibans/anir/pictures/081111opticalfilter/P1000794.JPG
にあるように、厚さ数ミリのものしか収納できず、しかも出っ張りが許されません。
なので、案(B)あたりが現実的ではないかと思われます
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