光赤天連SPICAタスクフォース 2008年2月25日 10:00-16:45 参加者 市川 中川 かたざ 塩谷 和田 松原 土井 河野 今西 川良 野田 泉浦 齋藤 左近 高木 大坪 大薮 (書記)(参加場所 宇宙研) 田村 山下 渡部 (天文台) 高見 (ASIAA) 議題 1. 当面のスケジュールとマイルストーン:サイエンス/装置  (松原 2. 中間赤外観測装置  1)MIRACLE - 検討現状 (和田) 狭帯域フィルタ(R=20-30)ーの技術的見通し ビームスプリッター、各チャンネルの多重化の見通し - MIRACLEチームのレガシーサイエンス (和田) - 銀河のコンフュージョン (竹内。市川代読) - 銀河面サーベイとサチュレーション限界(泉浦) - 狭帯域フィルタの分解能の科学的検討(高見) - タスクフォースからの提言(STFメンバー)  2)中分散(R=1000)分光器 - 具体的仕様の提案  (片坐・左近) - 分光器チームがめざすレガシーサイエンス(左近) - タスクフォースからの提言(STFメンバー)  3)高分散(R=30000)分光器 - 具体的仕様の提案 (片坐) - 分光器チームがめざすレガシーサイエンス(片坐) - タスクフォースからの提言(STFメンバー) 3. ミッション{サイエンス)要求の検討   - ミッション要求書の現状 (松原・田村・左近ほか) 表2.1 SPICAのミッション目的・目標・成功基準(表2) 表3.1 ミッション要求(装置の仕様/性能の要求) - 物質循環コメント (田村) 4. その他   - 焦点面近赤外カメラ(FPC)について     - 太陽系天体の追尾精度 (渡部) 4. 次回以降の議題   - 第2サイクルを進めるにあたっての「STFからの提言」のまとめ方   - ALMA、Subaru、TMTとの連携   - 装置チームへの宿題:重量、電力、発熱の見積もりと搭載可能性? 等 ------------------------------------------------------------------ 議論 ○当面スケジュール(松原) 3月16日 FPI meeting (今後の重量軽減の方針を決めたい。) 3月17日 pre-project meeting 3月31日-4月1日 SAFARIチームによるサイエンス検討会@パリ Q: 3月17日は装置はどれぐらい絞り込むのか? A: まだ羅列でいい。サイクル2で絞る。 ○中間赤外線カメラMIRACLE(和田) 感度曲線は、First NullをApertureとして計算。 竹内資料に基付き、SPICAコンヒュージョン限界の見積もり。 20ミクロンより長いところは、~1時間積分でコンフュージョンに達する。 20ミクロンより短いところは、検出限界のほうが、コンフュージョンより浅いだ ろう。感度とコンフュージョンの見積もりを見ると、10ミクロンより短い方は、 アンダーサンプルでもいいだろう。 38-50ミクロンは、フィルターとビームスプリッターの製作困難度は、同じぐら い。 Q: 38-50ミクロン帯の検出器の目途は? A: アメリカのメーカーと、技術情報交換の契約は進めている。メーカーでは シングルピクセルの地上観測用のものを作っている。現在の技術で製作可能だ と思うが、作ってもらうには投資が必要。検出器のできあがりはDarkなどが大 きく、ないよりはマシという物になる可能性もあることは否定できない。 Q: 40ミクロン帯カメラを追加することで、技術的な困難は増えるのか? A: 重量のことが問題となる。 スリットマスクの交換機構の必要性 Q: 困難さは? A: 重量とスリット位置の再現性が問題となるだろう。 Q: 5-26ミクロン分光器は、波長が最大5倍異なる。同じスリット幅か? A: 分散素子の制限のため全波長一度には分光できない。幅が場所によって異な るスリットを準備し、波長によって光を入れる位置をずらすという解もある。 Q: ダイクロイックで折り曲げた方のカメラでもPeak-upになるのでは? A: Peak-Upにはなるが、別に望遠鏡のガイダーが必要である。 Q: ガイダーの波長は? A: 座標精度のいいカタログを使いたいので、星の放射が強い波長に する予定である。近赤外か可視光。 ○銀河面での観測検討(泉浦) Q: コンフュージョンの回避ならばJWSTでもいいのでは? Q: 星の放射のピークは1000K以上なら3ミクロン以下になる。SPICA10ミクロ ンだと、ベガのような星周ディスクを持った星が明るくなり、星自身の研究とい う目的に対しては、話しがややこしくなるのではないか? A: その通りだ。SPICAでのサーベイ可能性を検討しただけである。 C: 検出器のアフターエフェクトがあるので、明るい星のある領域の観測は 注意が必要であろう。 A: GLIMPSEの積分時間は1.2秒。 Q: 銀河中心の星の研究は、UKIDSSではできないのか? Q: ダスト吸収カーブは、波長2-3ミクロン以上ではフラットという結果が出されて おり、長波長に行ってもあまりメリットがないのでは? A: 銀河中心で、Kでは見えず、4ミクロンで見えてくる星の例もある。 C: UKIDSSはシーイング、光学設計により、星像が悪い。銀河中心だとコン ヒュージョンが問題になる。星像0.3秒角のMOIRCSの方が強力だ。 ○狭帯域フィルタの分解能と科学的検討(高見) C: Thermal励起のH2が面白いという意見があった。この場合連続光が強い。 その差し引きが重要であろう。 A: たとえばショック領域では、H2の等価幅が大きく、連続線はあまり強く ない。チームを作っての検討が必要であろう。 Q: 面分光装置は?JWSTのMIRIは。 A: 広視野が重要。 C: H2を詳細に研究するには、オルソパラ比、温度の情報が必要で、最低3本 ラインが欲しいだろう。  A: リソースの問題もあるので、詳細な研究は、分光機能を当てにしたい。 C: 本研究に必要な狭帯域フィルターは開発要素が多い。もっとクリアな科学 目標を示さないと、積極的にリソースを投資しようという雰囲気にはなりにくい という印象である。 C: R~20をもっと上げられるなら、その方がいいだろうか? A: その通りだ。R~60は必要ないだろう。いずれにせよ系内天体の線幅は ずっと小さい。 C: 狭帯域フィルターはどの程度の物が作れるのか? A: 調査する。20ミクロンより長くなると格段に困難になるという印象。 Q: チューナブルの可能性は? A: 今のところ難しい。 C: 狭帯域のLyαサーチにも使えるだろう。 A: もちろんである。Hαサーチの検討している。 (和田)ロングスリットのニーズについて、お伺いしたい。 C: 欲しい。 Q: 今まで検討していたのか? A: 可動部を減らすという意味でオプションであった。技術的には可能。 スリットは高い位置精度が必要で、回転機構に対する要請が増える。 その分故障のリスクは増える。フィルターだけだと位置の精度が少し悪くても よく、リスクは減る。  C: ISOはフィルター回転機構が、一方向しか動かなくなった。 C: JWSTのMIRIのフィルター回転機構は、ISOと同じである。 Q: スリット交換機構に関して、コアチームの感触は?検討余地はある? A: 頑張りたい。 ○SPICA高・中分散中間赤外線分光器(かたざ・左近) *高分散の話 基本的に地上からは観測できない波長4-8ミクロン、12-18ミクロンをR~30000で カバーする、2本立ての分光器を検討している。 C: HCO+ 12.1ミクロン、HNC 21.7ミクロンのラインはミリ波のHCO+(J=1-0)、 HNC(J=1-0)ラインの赤外線放射励起という観点から面白い。 A: 是非考えたい。 Q: 二つの分光器の視野は? A: べつべつになる。 *中分散の話 波長10ミクロン以上のR~3000のビームスプリッターで分けるdouble-arm系の分 光器を検討している。18-19ミクロン付近で分ける。波長を少しオーバーラップ させ、相互キャリブレーションを行う。 C: 系外の禁制線の研究にはR~1000で充分な気がするが、R~3000は大きすぎ ないか? 系内でR~3000が必要なサイエンスがあるのか? A: Rをいくつかにするかは、要検討。 Q: JWSTのMIRIとの比較では、どうなるのか? A: 28ミクロン以上はSPICAがユニーク。感度的にも、25-26ミクロン以上か らSPICAに分が出てくる。 C: R~3000を1000にしても重量は減らない。ピクセルスケールを変えられ ないから。視野が広くなるという利点はある。  C: (左近)25ミクロン以下はJWST MIRIに分があるかもしれないが、広い波長範囲の データを同時に取ることは、多くのサイエンスにおいて重要だ。不定性が小さく なる。 C: あかりでも証明されている。 C: 点源とdiffuseで、考え方が変るだろう。diffuseなら確実に同じ領域を 見るために、同時に観測するメリットは大きい。 C: それなら、ARM-SとLのピクセルスケールが整数倍になっている方が単純。 微妙に整数倍からずれているのはなぜか? A: 光学収差とかもあるので、少しくらいのずれは仕方ない。 Q: リソースの見積もりは。 A: 次回までに準備する。 C: イメージスライサーだと、スリットロスの不定性をなくせるし、衛星の 姿勢制御への要求を緩和できる。 Q: 準備状況は? A: 試作品ができている。幅1秒、長さ6分のスリットを視野内に5-6本付け、 diffuse放射の研究を効率的に行うという可能性もある。 A: R~1000のバージョンも検討する。 ○Mission Requirement Document(松原) 下記の物を、レビュー・整理したい(特に今回から導入されたMajor Objective [2]) @Major Objective[1] 遠方宇宙 (松原) Objective 1 種族III天体の検出 Objective 2 赤外背景放射の分解 Objective 3 Obscured AGNs Objective 4 大規模構造形成 C: 種族IIIに関しては、BLISSの感度必要。SAFARIではだめ。 SPICAの視野はJWSTより広いが、大規模構造の研究は、すばるHSCレベルの視野が 必要では? z=7-8の宇宙が中性の時代の研究は、LyαよりHαが良いので、赤方 偏移したHαを検出できる狭帯域フィルターの検討もしたい。 @Major Objective[2] 物質循環 (左近) Objective 1 大質量星のダスト形成過程 Objective 2 中・小質量星のダスト形成過程ダストの一生の描像 Objective 4 Astrochemistry Objective 5 銀河考古学 Objective 6 遠方銀河の星間物質 C: サイエンスは面白いが、JWSTのMIRIへの提案のように感じる。 SPICAの有利な25ミクロン以上をメインにして、SPICAのユニークさを強調するべ きだ。例えば、28ミクロンの水素分子に関しては、SPICAが有利だ。ガスと固体 のバランスが悪い。宇宙初期から現在に至る物質循環の解明を目指している。 近傍に関してはJWST MIRIの波長だが、z=2だとSPICAの波長になる。 C: 0次案である。インプットして欲しい。 @Major Objective[3] 惑星形成過程 (かたざ) Objective 1 最高性能のコロナグラフで太陽系外惑星の解明 Q: 分光トランジット方法の一番重要な波長は? C: 大気バンドであるのは、数ミクロンから20ミクロンぐらいまでが、重要。 20ミクロンより長いところは、よくわからない。でも地球大気を透過しないのだ から、20ミクロン以上にも大気バンドあるはず。水だろう。  C: SAFARIは、検出器技術の観点から難しいが、検討する。 C: SAFARIは採用される検出器方式によってダイナミックレンジ異なる。 サイエンスの観点から必要なダイナミックレンジ、サチュレーションリミットに ついての検討が必要。 C: コロナグラフの分光機能を使って分光トランジットの検討を始めている。 Objective 2 惑星形成過程の固体 Objective 3 惑星形成過程のガス 要分光分解能が3000でいいのかを検討。 Objective 4 原始惑星系の内側の空間構造 高分散分光で、ラインのプロファイルから、惑星によって作られたガ スディスクの構造を研究する。TMTとは波長が異なり、見る領域が異なるので相 補的。 Objective 5 デブリ円盤 C: 装置へのダイナミックレンジが必要である。 Objective 6 太陽系外縁部 C: SPICAを用いれば、太陽系外縁部天体を約1000個観測でき、可視 との比較から、アルベドの多様性を明らかにできる。 C: 小惑星は一度破壊されたので、多様性が大きいかもしれないが、太陽系 外天体はまだ作られつつある段階であり、多様性小さいのでは? C: そうかもしれない。 C: 3月末のパリでのSAFARIとの会議に暫定案は、持って行きたい。タスク フォースに分担して頂いて、各項目をレビューをして頂きたい。改訂版を作る。 ○コロナグラフの現状報告(塩谷) Q: 次回のタスクフォースの少し前までに資料を送って下さい。 C: 星の質量放出の研究に関して、コロナグラフへの期待、要求有り。 ○太陽系天体の追尾性能への要求(渡部) ざっと要求は、600 arcsec/hour C: 機能は持たせる予定。トラック精度は、少し悪くなるだろう。 C: 宇宙線除去の観点から、一回の露出は長くない。問題ない。 ○ALMAと連携したSPICAへの要望 (河野) Dusty銀河はALMAでたくさん見つかると期待されるが、zの同定にはBLISSが非常 に強力で是非必要。 C: MIRACLEで、PAH、シリケイト吸収を用いても、zは同定できるのでは? 1型AGN的で、フィーチャーのない天体は難しいが。 Q: BLISSとBASSの状況は? A: BLISSの縮小版であるBASSの可能性はなくなった。可能性があるのは BLISS。Decadal サーベイ待ち。2010年7月頃だと思うが、それより早い時期に 状況を把握したい。 ○FPC(田村) 天体導入・ガイド用のカメラ。信頼性が必要で、2台になる可能性がある。 韓国と協力して詳細を検討中。2台で10kg以下、発熱1mW以下。1台はガイド専用。 2台目で近赤外線のサイエンスの可能性を検討中。 C: サイエンスが出てきたときは、STFで検討することになるであろう。 ○4-5月にレガシーサイエンスを、立ち上げる会議をしたい。1年ぐらいかけて練 っていきたいがそのキックオフをしたい。光天連と協力して、5月末に2-3日の 研究会を開催したい。(かたざ) ○MRDのレビュー担当 Galaxies 市川・川良・今西・齋藤 Planetary Formation 山下・高見・渡部 物質循環 泉浦・河野・田村 委員長 厳しくかつ建設的な意見を出して下さい。