「大規模構造形成の起源となる宇宙論的密度場進化に対する初期磁場の影響」 山崎 大  天文・天体現象において、磁場は様々なスケールで多様な影響をもたら す、重要な物理要素の一つである。また宇宙論的な密度場の進化の解明 は、宇宙の構造形成に直結する事項だけに、非常に重要な研究課題の一 つにあげられる。  Mpc以上のスケールの密度進化において初期磁場を考慮した場合、まず磁 気圧が影響し、光子-バリオン流体の音響振動の周期と振幅を減少させる。 我々は、初期磁場を考慮したバリオン-光子流体の数値計算にを詳細の解 析することで、音響振動の周期が変わることによって、赤方偏移$z\sim$ 1100において光子と脱結合するバリオンの密度進化の振幅は、スケールに 依存し、磁場がないときと比較すると、positive boost、zero boost、お よび、negative boostの三つの増幅(減衰)を受けることが分かった。  再イオン化した後にも、宇宙論スケールの電離バリオンの密度場が磁気圧 の影響を受け、単純に磁場がない場合よりも密度場の振幅が小さくなるこ とも判明した。さらに、暗黒物質もバリオンと重力的に結びついてること により間接的に磁場の影響を受け、その密度場の振幅も減少することが分 かった。  今回は、Yamazaki et al.(2006)で宇宙背景放射の温度揺らぎによって制限 された初期磁場の上限$B=7.7$nG(at 1Mpc)を宇宙論的な密度場の進化に考慮 した場合と磁場の影響を考えない場合と比較することにより、磁場の影響を 定量化し、大規模構造形成との関連性も考慮して議論した結果を発表する。