「Biermann mechanismによる第一世代超新星残骸中の種磁場の生成」 花山 秀和  宇宙では磁場が普遍的に存在している(Ruzmaikin et al. 1988)が、その起源につ いては未だに明らかではない。現在観測されている〜μG程度の磁場は銀河ダイナモ などの増幅機構による説明が示唆されている(Parker 1973)が、増幅される種磁場の 起源については相転移(Quashnock et al. 1989)・インフレーション(Turner et al. 1988)などの宇宙論的な起源や第一世代星(Kemp 1982)・原始銀河(Davies et al. 2000)・AGN(Daly et al. 1990)などの天体起源など、様々な起源が提唱されている。  これらの起源における磁場の生成過程の中で、特に本質的なプロセスの一つとして 注目を浴びているものの中にBiermann Mechanism(Biermann 1950)と呼ばれるエント ロピーに依存したプラズマ中の圧力勾配による非断熱的プロセスがある。この Biermann Mechanismはshock加熱やphoton加熱などの非断熱的な過程が働く領域で磁 場をゼロから生成する機構であり、原始銀河やAGNなどの他、超新星残骸(SNR)の衝撃 波中においてもその効果が期待される。  そこで本研究では、第一世代星のSNRでのBiermann Mechanismによる磁場の生成に ついて、2次元MHD数値シミュレーションを用いて明らかにした。ISMに密度ゆらぎを 与え、爆発エネルギーやゆらぎのスケールを変えた複数のモデルを計算した。結果と して、第一世代SNRでは10^(-14)-10^(-17)Gの磁場が生成され、磁場のエネルギーの 総量は10^(28)-10^(31)ergになることがわかった。この結果は解析的な見積もりによ る定量的な評価と一致した。また、初期天体の生成率(Pello et al. 2004)から、生 成される磁場のエネルギーの総量は必要とされる種磁場の総量(Athreya et al. 1998)に対して十分な値であり、第一世代SNRが種磁場を生成する有力な候補の一つで あることがわかった。