ASTROSスケジューラ文法書 .scdファイル

ver.1.00 1990/12/14      半田利弘
ver.2.00 1992/02/13      半田利弘
ver.2.01 1996/12/21      半田利弘(マニュアル改定)

スケジューラファイルの単位

 制御に用いるMS-DOSマシンはシングルタスクマシンなので、一旦、観測プログラム を起動し、観測をしながら他のモードに切り替えることは困難である。 一方、60cm鏡はシンプルなシステムなので観測プログラムの再起動は容易である。

 したがって、スケジューラファイルは観測プログラム起動時に 1回読み込むものとし、2つ以上のスケジューラファイルを続けて 1セッションの観測プログラムで使用することはしないものとする。


ファイルの構造

 1行を1単位とする。1行は復改を最終文字とする256バイト以下のASCII文字 列とする。漢字など2バイト文字は用いず、すべて1バイト英数字とする。

 この1行には、コメント,領域設定,周波数設定,積分指示の4種類がある。

 コメント行はどこにあっても構わない。

 ファイルは先頭から(コメントを除いた形で)領域設定行、周波数設定行 の順に現われ、その後に積分指示行が続くものとする。

 ファイルの最終行は必ず「最終行」(積分指示行の一種:後述)とする。

 いずれの行でも「/*」よりも右のカラムはコメントとして扱われ、 観測プログラムの実行には影響を与えない(文字列をパラメータとして与える 場合などに注意)。

 パラメータのうち、規定文字列から選択指定するものは大文字小文字の区別は しない。混ざっていてもよい。


コメント行

 コメント行は、スケジューラファイルを人間が識別するために使用する。 観測プログラムはこの行を読み飛ばし、観測制御には何の影響も与えない。 先頭が「/」「#」または「\」で始まる行は全てコメント行と見なす。 したがって、仮に書いておきたいパラメータなどは「/」「#」「\」でコメント アウトできる。

example

# This is a comment line.

領域設定行

 領域設定行は、一般に観測セッション中変更しない空間情報に関する パラメータを記述する。

 パラメータは「\」「;」またはタブで区切られており、以下の2つまたは3つ を記述する。パラメータの順序は固定である(この行のみ、空白「 」や「,」 での区切りができない)。逆に文字列の中に空白や,を含めることができる。

プロジェクト名
観測プロジェクトを示す任意の英数字文字列。16文字以内。
天体・領域名
観測対象のの名称を示す任意の英数字文字列。15文字以内。
実行開始行数(省略可)
以下の積分指示行のうち実行を開始する行数(整数)。 省略時は最初の積分指示行から実行する。先頭からすべて実行させる ならば1を指定する。
Quick Look表示範囲下限(上限とセットでなら省略可)
Quick Lookで表示される窓の下限。単位K(小数点付き実数)。
Quick Look表示範囲上限(下限とセットでなら省略可)
Quick Lookで表示される窓の上限。単位K(小数点付き実数)。 上限と下限とは逆順に指定してもよい

example

Project name;Region name;1;-5;10

周波数設定行

 周波数設定行は、一般に観測セッション中変更しない周波数情報に関する パラメータを記述する。

 パラメータは空白「 」「,」またはタブで区切られており、以下の4つを 記述する。パラメータの順序は固定である。 文字列の中に空白や,を含めることはできない。

  1. 観測分子線名
    分子線名を示す任意の英数字文字列。15文字以内。
  2. 静止周波数
    観測すべき静止周波数のGHz単位の値。
  3. 第一中間周波数
    観測に用いる第一中間周波数のGHz単位の値。
  4. サイドバンドモード
    観測信号が入力されるサイドバンド。usbまたはlsbで指示。

example

CO(2-1) 230.538001 1.45 usb

積分指示行

 1点指示行は、分光器で積分する1点についての指示を行なう。特殊なもの として終了行を含む。

 パラメータは、空白「 」「,」またはタブで区切られており、以下の3または4つ を記述する。パラメータの順序は固定である。必要数のパラメータが記述されていない 場合は、左から値を設定し、残りは変更なしとする。また、途中のパラメータを 変更なしとする場合は、そのパラメータ値に「*」を設定する。最初の行で「*」が 指定されていた場合はプログラムのデフォルト値を用いる。

 変更なしの場合は、直前の行で指定されていた値をそのまま用いる。

  1. 積分種類【観測プログラムver.1.0ではz0とcoldが使えない】  どのような種類の積分データを取得するのかを指示する。 大文字小文字の区別はない。
    r または hot
    室温黒体輻射のデータを積分する。
    cold
    液体窒素温度の黒体輻射のデータを積分する。
    on または obj
    天体からの輻射のデータを積分する。
    off または sky
    参照する空(大気)の輻射のデータを積分する。
    z0
    分光器への入力0レベルのデータを積分する。
    end
    スケジューラの最終行を意味する。=観測終了。
  2. 天体座標系【観測プログラムver.1.0からver.2.xではazelが使えない】  積分する間にアンテナが向くべき方向の座標系を指示する。 大文字小文字の区別はない。
    lb
    銀河座標(l-II, b-II)
    radec
    B1950.0分点赤道平均位置
    radec-aparent
    瞬時分点赤道視位置
    azel
    地平座標
  3. 天体位置(経度)  天体座標系に対応する方位角,銀経,または赤経。 書式は標準角度書式。 赤経の場合のみ標準時間書式でもよい。
  4. 天体位置(緯度)  天体座標系に対応する高度角,銀緯,または赤緯。 書式は標準角度書式
  5. LSR速度  天体を速度追尾するための天体のLSRに対する速度をkm/s単位の実数で 示す。赤方偏位が+。速度計算は周波数比の1次までの計算である。

example

on lb 121.123d -1d -20

handa@mtk.ioa.s.u-tokyo.ac.jp