*講義ノート [#kdc1626c]
-4/9 : 本原 / &ref(http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/~kmotohara/lecture/2014komaba/01motohara.pdf);
-4/23 : 本原
-4/30 : 休講
-5/7 : 田村
-5/14 : 酒向
-5/21 : 宮田
-5/28 : 小林
-6/4 : 河野
-6/11 : 峰崎
-6/18 : 諸隈
-6/25 : 土居
-7/2 : 本原 / &ref(http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/~kmotohara/lecture/2014komaba/12motohara.pdf);
*シラバス [#c0779ab9]
**時限 [#k0f20a19]
金曜日4限(14:50-16:20)
水曜日5限(16:30-18:00)

**出欠表 [#mc93cde6]
[[出欠表>./attendance/2013星間物理学II]]

**講義題目 [#r9234eb9]
「最新の宇宙像」
**講義内容 [#cf5ea8e4]
***授業の目標・概要 [#dd4e7b55]
天の川銀河から初期宇宙の銀河まで、宇宙の歴史の中で様々な時代に存在する、
多種多様な銀河を題材として、星間物理学の基本的な概念・方法論を理解する
ことを目標とする。主に可視光・赤外線からミリ波サブミリ波・電波に至る波
長域の観測をもとに得られた、銀河の基本的性質・活動性、さらに形成と進化
に関する、最新の描像を取り上げ、考察する。
近年、宇宙観測の技術は急速に発展を遂げており、私達人類が持つ宇宙像は、大きく塗り替えられている。最先端の宇宙観測とその成果を、理学系研究科天文学教育研究センターに所属する様々な分野の専門家がわかりやすく紹介する。天体現象だけでなく観測の手法についての解説も随時行う。天文学の知識を系統的に与えることが目的ではなく、多様な宇宙の姿やその観測技術・研究手法に興味を持ってもらい、科学的な思考方法に慣れてもらうことに主眼をおく。
***授業のキーワード [#h5ec5a46]
再結合線、微細構造線、回転遷移線、自由自由放射、ダスト熱放射、
シンクロトロン放射、局所熱平衡、衝突係数、励起臨界密度、励起温度、
分子雲の階層構造と質量関数、ジーンズ不安定性、爆発的星形成、銀河回転、
渦状腕、銀河相互作用、銀河中心、星間物質の加熱と冷却、光乖離領域、
X線卓越領域、巨大ブラックホール、水メーザー、電波銀河、超高光度赤外線銀河、
負のK補正、サブミリ波銀河、スニヤエフ・ゼルドビッチ効果、
マイクロ波宇宙背景放射、HII領域、電離光子、ストロムグレン半径、ダスト吸収、
減光曲線、スペクトルエネルギー分布、星の初期質量関数、銀河の合成スペクトル、
輝線比診断、ライマンブレイク銀河、ライマンアルファ―エミッタ、BzK銀河、
DRG銀河、ERO
星、惑星系、銀河、星間物質、膨張宇宙、観測技術
***授業計画 [#h82cac4c]
+星間物質からの放射機構
+放射の輸送と励起
+分子雲の階層構造と星形成
+銀河における大局的な星間現象
+活動銀河とその周辺における星間現象
+爆発的星形成銀河の形成と進化
+銀河団と宇宙背景放射
+星形成領域の物理
+銀河のスペクトル1
+銀河のスペクトル2
+膨張宇宙の観測
+ダストに隠された銀河
+銀河形成と環境効果
+初期宇宙での銀河形成と進化
1「様々な天体と宇宙」 
幅広い波長域にわたる最先端の天体観測により、膨張宇宙において様々なスケールの天体が生まれ、進化している様子が明らかにされつつある。ここでは星、ガス雲、銀河、銀河団など様々な種類・スケールの天体が、膨張宇宙の進化の過程でどのような位置づけにあるのかを俯瞰し、ゼミナール全体のイントロダクションとする。 

2「HR図と星の進化」 
Hertzsprung-Russell (HR) 図は、恒星の進化を研究する上で大変有用な図である。HR図及び類似の図の意味について解説すると共に、これらの図を作るための恒星の物理量、観測手段 について説明する。また、これらから星の進化がどのように判るかを説明する。 

3「星と惑星系の誕生」 
星は暗黒星雲の中で冷たい星間ガスが降り積もって作られる。その美しいながらもダイナミックな過程を、最新の赤外線データをもとにして紹介する。星が 生まれると同時に、その周囲を取り囲むようにできる原始惑星系円盤の中で、木星や地球のような惑星が誕生していることがわかっている。最近の観測技術の発展により、われわれの太陽系以外の、系外惑星系の観測が可能となり、数多くの知識が得られるようになった。この講義の後半では、この10年で明らかに なった惑星系誕生についての最新の知識を紹介する。 

4「赤外線天文学の歴史」 
可視光と電波の間に挟まれた赤外線と呼ばれる電磁波による天文観測は、超低温に冷却された固体半導体を必要とすることから、電波天文学やX線天文学に比べてその展開が遅れ、近年に至るまで未開のフロンティアとして残された分野であった。1960年代の初頭に行われた最初の高感度検出器による宇宙の探査から、最新の宇宙像まで、赤外線天文学の技術に進展に伴って、どのように宇宙についての理解が深められてきたかを概説する。 

5「赤外線スペクトルで見る大質量星の誕生と死」 
大質量星は数こそ少ないが、寿命が短いため進化のサイクルが早く、輻射及び物理的なエネルギー放出が極めて大きい。さらに、その最期である超新星爆発に伴って、大量の金属元素を宇宙空間に放出する。これらの特質は、恒星進化のみならず、銀河の活動性の起源、及び宇宙における元素の形成に本質的な影響を与える。この重要な大質量星の進化について、減光が大きく可視光での観測が困難な領域も含めて、赤外線スペクトル観測が明らかにしつつある現状及び将来の展望について紹介する。 

6「宇宙に漂う塵(ちり)」 
宇宙空間は全くの真空ではない。そこには気体のガスの他に、小さな固体物質=塵が大量に漂っていることが知られている。この塵を良く調べると地球の石に似たものやスス、複雑な有機物なども含まれていることが分かって来た。この様な塵はどこからきたのだろうか?本講義では最新の赤外線観測などから明らかになって来た宇宙の塵の正体に迫る。 

7「変光から探る活動銀河核中心部の構造と放射機構」 
活動銀河核とは銀河の中心部に存在する巨大ブラックホールへの質量降着によって解放される位置エネルギーを源として、X線、紫外線、可視光、赤外線から電波まで、広い波長域において強力な放射が生じている現象である。これらの電磁波はブラックホールを中心とした極めて小さい領域から放射されており、撮像観測によってその放射領域と構造を研究することはほとんど不可能である。しかし、活動銀河核の放射の時間変動=変光現象を利用して、活動銀河核中心部の構造を探ることが可能である。本講義では、変光現象を利用したさまざまな研究について紹介し、活動銀河核中心部の構造と放射機構に迫りたい。 

8「光赤外線天文学の観測技術」 
対象が遠方に位置する天文学では、他の自然科学のように能動的な実験・測定による調査を行うことができない。天体が発する微かな信号(電磁波)をいかに検出し測定するかという受動的な手法を極めることになる。CCDに代表される電子の目と高速な演算処理が可能な電子の頭脳の獲得は、天文学に17世紀の望遠鏡の発明以来の第2のブレイクスルーをもたらした。本講義では可視~赤外線光を用いた最新の観測技術とそれにより得られた研究成果について紹介する。 

9「赤外線で探る銀河の誕生と進化」 
光の速度は有限であるため、遠方の天体を観測すれば宇宙の過去の姿を観測することが可能となる。この事実を利用すれば宇宙や銀河の進化を探ることができるが、その一方で宇宙膨張による赤方偏移のため、宇宙初期の天体から放射された可視光は近赤外線でないと観測できない。ここでは最近の可視/赤外観測で明らかになってきた宇宙初期の銀河の形成と進化についての最新の研究成果を、その観測手法も含めて解説する。 

10「可視広視野撮像カメラを用いた大規模探査とその成果」 
天文学で用いる可視望遠鏡やそのカメラの視野の広さは、一般的に、最大でも数度角程度であり、全天約4万平方度と比較すると、非常に狭い。これまで光学的・機械的な制限から、比較的口径の小さな専用望遠鏡でのみ広視野大規模探査に目的を特化した計画がいくつか遂行されてきたが、近年の技術進歩によって、8-10m級の大型望遠鏡でも広視野大規模探査を行うことが可能になってきた。例えば、クェーサー等の稀な天体を発見・研究する際には、数千平方度以上を探査することが必要であり、このような広視野大規模探査は欠かせない。この講義では、これらの探査の歴史、および最新の計画を、その成果とともに紹介する。 

11「膨張する宇宙」 
宇宙が膨張していることは1920年代より知られている。ここでは、すばる望遠鏡を用いて発見した遠方の超新星を用いた膨張宇宙の測定の様子などを紹介する他、宇宙背景放射を用いた測定方法などについても触れ、宇宙はこのまま膨張を続けるのか、それとも やがて収縮するのか、という疑問などについて、現代天文学の答えを紹介する。 

12「ミリ波・サブミリ波で探る宇宙」 
ミリ波サブミリ波観測により明らかになってきた最新の宇宙像、特に、星・惑星系の誕生、銀河中心核における巨大ブラックホールとその周辺での多様な活動現象、初期宇宙における銀河や銀河団形成領域の観測、また、宇宙背景放射の観測などを取り上げ、その意義や今後の展望を解説する。

***授業の方法 [#ae8d85d2]
講義による。前半を河野が、後半を本原が担当して行う。
主に液晶プロジェクターを使ったオムニバス形式での講義(全12回)を行う。授業の各回ごとに、取り上げるテーマは異なるが、ストーリーとしては完結して理解できるように配慮する。講義の順番については入れ替わる可能性があるため、第一回のときに最新のスケジュールをアナウンスする。

***成績評価方法 [#r038bc60]
レポート(100%)による。
***参考書 [#w141a9d9]
日本評論社「シリーズ 現代の天文学」第3~6巻、第15~16巻。
その他については、授業の中で提示する。


トップ   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS