The Gaia-ESO Survey: Tracing Interstellar Extinction


Schultheis + 21
2015 AA ???,




 アブストラクト

 背景 
 大規模分光探査のおかげで、正確な恒星大気パラメタ―と距離を用いて、3次 元減光マップの作成が可能となった。そのようなマップは測光から決めた3次元マップと 相補的で、ダストの性質を求めるのに役立つ。

 目標 
 Gaia-ESO 高分散分光サーベイ第2データ公表と十分に精度の高い距離と組み合わせて 星間減光とその銀河系内での位置による依存性を調べることである。
 方法 
  5000 以上の星の大気パラメタ―を使い、SDSS, VISTA、理論モデルと組み合わせて、 距離と減光量を求める。減光係数を文献値と比較して星の性質と銀河系内位置に対する 依存度を論じる。

結果 
 減光係数が大気パラメタ―や銀河系中心距離に依存する証拠はなかった。これは SDSS ugroz バンド、NIR JHKs バンドでは減光則が一様であることを意味する。従って 平均色超過に一定の減光係数を適用して求めた減光マップは付加的な系統誤差を考慮 せずに使用できる。


 1.イントロダクション 

 2D 減光マップ 

COBE/DIRBE
Schlegel et al. 1998 が最初、赤化の補正を加えて、Schlafly et al 2010, Schlafly, Finkbeiner 2011 .

レッドクランプ
レッドクランプのカラーはメタル量による変動が小さいので赤化の決定に向いている。 Nataf et al. 2013, Gonzalez et al 2011, 2012 は減光マップを示した。しかしサンプル数を稼ぐため、 マップ領域は銀河面またはバルジに限定される。

RJCE 法
Nidever et al. 2012 は レーリージーンズ色超過法(RJCE)、[H-4.5] 法を用いて、星毎の赤化を求め、 2 空間分解能で銀河面深く侵入した。

 3D 減光マップ 

COBE/DIRBE
Drimmel et al. 2003 は COBE/DIRBE の FIR と NIR 表面測光データから3D 減光 マップを作った。

2MASS
Marshall et al 2006 は 2MASS カラーに Besancon 種族合成モデル (Robin et al 2003) を合わせて |l| < 90, |b| < 10 領域で、 3D 減光マップを導いた。 空間分解能は 15 である。

他の測光法
Green et al 2014, Schlafly et al. 2014, Bailer-Jones 2014, Sale 2012, Sale et al 2014, Lallement et al 2014 が様々な測光法で 3 D ダスト分布を調べた。

 
 可視、2MASS, WISE  

  Chen et al. 2014b は Berry et al 2012 法と似た星の経路を辿る手法で、 可視、2MASS, WISE 測光データを併用して減光を調べた。彼らのマップは 6000 平方度で、我々の GES フィールドと少し重なる。

分光パラメタ―の利用 

 これまで述べた減光研究は主に測光に基づいている。既存のまたこれから現れる 大量の分光データ、 RAVE, APOGEE, Gaia-ESO, GALAH, 4MOST、からは色々な 種族の星の正確なパラメタ―が得られるだろう。したがって、個々の星の期待される カラーを観測値と比べることで、星間ダストの3D分布が求められる。

 GES = Gaia-ESO Survey 

 Gaia は個々星の減光と距離を同時に与える。この論文では、 Schultheis et al. 2014b が APOGEE データを用いて 3D 減光マップを導いたのと同様の手法を GES データに 対して適用する。 Schultheis et al. 2014b は 3D 減光モデルを Marshall et al 2006, Schultheis et al 2014a と較べ、最初の数 kpc で減光が急激に立ち上がり、その後 4 kpc から先では平坦になることを見出した。 Schultheis et al. 2014b Wang, Jiang 2014 は APOGEE データを用いて、|z| < 1 kpc でのダストの性質を調べたが、GES 領域 はもっと高い |b| > 20 なので両者は相補的である。


 2.サンプル 

 観測装置 
 ガイアESOサーベイ(GES) はハローから星形成領域に至る銀河系内 105 天体の分光サーベイである。観測には VLT UT2 望遠鏡の FLAMES 多体分光器が使用される。データ処理から分類までの詳細は Gilmore et al 2015 に 述べられる。ここでは GES 第2データ公開 DR2 の 10,000 個の観測結果を 解析する。データは 5488 A 中心 R = 19800 HR10 グレーティングと 8757 A 中心 R = 16200 HR21 グレーティング使用の GIRAFF 分光器により取得された。天体 選択は VISTA 測光から 0.2 > J-K > 0.8, 12.5 > J > 17.5 で行 われた。

 天体選択 
  VISTA Variables in the Via Lacctea (VVV) サーヴェイか、2MASS 測光が あり、信頼できる大気パラメタ―が分光から得られている天体が選択された。 これは、S/N > 10, σ(Radial Velocity) < 1.5 km/s, で 3つの異なる nodes(第3章)間で Teff, log g の内部分散が小さいことを 意味する。こうして、 NIR 測光値のみのある 5603 星と ugrizJHK の揃った 1106 星が選ばれた。図1に多体観測の中心位置を銀河座標系で示した。

図1.GES-DR2 観測領域の中心位置分布。


 3.距離と減光の決定 


表1.巨星(log g < 3)と矮星(log g > 3)に対し、導かれた大気 パラメタ―にオフセットを加えた時の距離中間値のエラー。"+" サイン= オフセットを加える。 "-"=オフセットを引く。


 Kordopatis 法 

 絶対等級を決める方法は Kordopatis et al 2011b, Kordopatis et al. 2011a に述べられている。

 等時線モデルでの存在確率 

 与えられた年齢で異なるメタル量を持つ等時線の ある星が、年齢 a, 質量 m, メタル [Fe/H] である確率を以下の ように考える。

W(a,m,[Fe/H])= dm exp ( - Σ iOb,i )2 )   (1)
i Ob,i2


ここで、θi=モデルのパラメタ― Teff, log g, [Fe/H] を表す。θOb,i=星の測定されたパラメタ― Teff, log g, [Fe/H]、 σOb,i=星のパラメタ―測定値のエラー である。この定式は質量分布が平坦という仮定が内包されている。


 絶対等級の推定 
 絶対等級の予想値 M とその分散 σ2(M) は以下の式で与えられる。
M= Σa,m,[Fe/H] W(a,m,[Fe/H])M(a,m,[Fe/H])  (2)
Σa,m,[Fe/H]W(a,m,[Fe/H])


σ2(M)= Σa,m,[Fe/H] W(a,m,[Fe/H])[M-M(a,m,[Fe/H])]2
Σa,m,[Fe/H]W(a,m,[Fe/H])




 使用した等時線 
 等時線は Yunsei-Yale (Demarque et al 2004) と Padva(Bressan et al 2012) を使用した。
 Yunsei-Yale 等時線は a = [1 - 14] Gyr, [Fe/H] = [-3, 0.8] を 0.1 dex 刻み、α 強化は、次のようにとった。内挿計算は提供された式を 用いて行った。
[Fe/H] ≥ 0 では [α/Fe] = +0.0
[Fe/H] = [-0.3, -0.1] では [α/Fe] = +0.1
[Fe/H] = [-0.6, -0.4] では [α/Fe] = +0.2
[Fe/H] = [-0.9, -0.7] では [α/Fe] = +0.3
[Fe/H] ≤ -1 では [α/Fe] = +0.4
Padva 等時線は [Fe/H] = [-2.2, 0.2] を 0.1 dex 刻み、太陽スケール 組成を仮定し、年齢は 0.5 Gyr 刻みである。結果はオンライン内挿インタ ーフェイス経由で結果を得た。

赤化と距離の計算 

 赤化はモデルの固有カラーと観測カラーとの差として得られる。 我々の星の 5 % は負の減光を持つことになった。その大部分は Ks > 14.5 の暗い星である。それらは解析から外した。距離は 次の式で決めた。
log d = Ks - MKs - A(Ks) + 5    (4)
5
ここに、A(Ks) = 0.528 E(J-Ks) 西山その他 2009 である。



図2.上:Teff と等時線からの対応する Teff との差と3つのノード間の Teff 散布度(?)との関係。黒点=100 度刻みでの平均温度。 下:log g に関する同様の関係。黒点=0.2 dex 刻みでの平均 log g。



 パラメタ―の距離への影響 

 表1には導いたパラメタ―が、 Teff±100 K, log g ±0.2 dex, [M/H]±0.1 dex ずれた時の距離への影響を示す。 巨星では log g の 影響が大きいことが判る。それは大きい場合距離を 34 % 変える。矮星、準 巨星では log g 効果は小さい。矮星で効果が効くのは有効温度である。

 図2 

 ここには図2の説明が述べられているが、内容がよく分からない。




図3.左:Teff - log g 面上の等時線。赤=パドヴァ。黒破線= α 比太陽の Y-Y モデル。黒実線=α 増強 Y-Y モデル。
右:(J-K) - K 面上の等時線。


 3.1.等時線ライブラリーの効果 

 モデルの選択が重要 
 等時線を作成する際に使用する恒星大気モデルの選択は減光と距離の導出に 影響する。この先ではパドヴァと Y-Y モデルを Kordopatis et al 2011b のパイプラインを通した結果を比較する。 Schultheis et al 2014b では K/M 巨星に対して、パドヴァ等時線と Basel3.1 モデルとの間で、 APOGEE で観測された減光と距離に関して 殆ど差がないことを示した。この論文ではもっと広い Teff, log g 範囲を カバーする GES サンプルに対してはモデルの選択が重要であることを示す。 そもそもなぜ等時線を挟む必要があるんだっけ? 絶対等級を決めるため?

 パドヴァと Y-Y 等時線の差による影響 
 図3ではパドヴァと Y-Y 等時線を比べた。低メタルになると二つの差が拡大 してくることが判る。Y-Y ではターンオフと赤色巨星位置が赤い方に位置する。 しかし、良く知られている年齢カラー、または年齢メタル量縮退の結果、 Y-Y とパドヴァモデルは与えられたメタル量に対し、若い Y-Y と老いたパドヴァ が重なる。我々の処方では、 Teff, log g, [M/H] 観測値は全ての年齢の 等時線に投影される。そのため、得られる絶対等級の差は単純な等時線間 の1対1比較から想像されるよりは小さい。 ここもよく分からない理屈。 しかし、境界の星=非常に熱い星やとても低メタルの星、では差は大きく なると予想される。



図4.左:Y-Y とパドヴァで導いた E(B-V) 差と Y-Y E(B-V) との関係。
最後に、α 増強の影響はどうだろう? 図3には Y-Y 等時線の実線と破線を比べるとその影響は小さく、 α 増強により距離評価が大きく変わることはないと言える。

 赤化の差 
 図4では、赤化と距離が二つの等時線使用でどう影響されるかを示す。 Y-Y モデルはパドヴァより小さな赤化を与える。これは前に述べた Y-Y モデルの固有カラーが赤いための結果である。

 距離の差  
  この減光差が距離に移されると、図4下に示すように、 Y-Y 距離は パドヴァ距離より大きくなる。それは特に d < 3 kpc において そうである。この効果を詳しく調べた結果、Teff = [5500, 6500] の 矮星 (log g > 4) で著しいことが判った。これは図3でパドヴァ 等時線がより青い J-K を与える領域である。一方、 Y-Y は Teff = [4000, 5000], log g < 3 の低温巨星で距離を過小に評価する。 距離の差が大きいのは低メタル星である。

教訓 
 これらから、二つの大気モデルには重要な差が存在すると言える。 我々の扱う天体の大部分で距離の差は 20 % 以内に収まる。


図4.右:パドヴァ距離/Y-Y距離のY-Y 距離に対する関係。


 4.2D減光マップ (Schlegel et al 1998) との比較 


図5.|b| > 10 における我々の E(B-V) とシュレーゲル値との差 のヒストクラム。黒線=パドヴァE(B-V), 赤線= Y-Y E(B-V).



 系統誤差 
  Schultheis et al. 2014b が APOGEE によるバルジの高減光領域を調べたのに 対し、ここでは GES により低減光域を扱う。既に述べたように星のライブラリー は減光量に系統的なオフセットをもたらす。何処で? 図5にはシュレーゲルの E(B-V) 値をパドヴァ(黒)、Y-Y(赤)と較べた。パドヴァ 等時線の方がシュレーゲルに良く合っていることが判る。両者の差の平均は  0.009±0.075 である。低銀緯 b = [-10,+10] を含めると、散布度は 0.18 mag に上がる。しかし、低銀緯ではシュレーゲルは赤化を過大に見積もって いる Schlafly et al. 2014 という指摘もある。 Schlafly, Finkbeiner 2011 は SDSS から導いた星パラメタ―を用いてダスト赤化を測った。彼らの 誤差は E(B-B) < 0.04 の高銀緯星に対して 0.030 mag である。 我々の散布度の方が大きいのは GES 領域が低銀緯のためである。 Y-Y 等時線はシュレーゲルに対し E(B-V) で 0.065 mag 系統的に大きい 値を与える。そこで、今後はパドヴァ等時線のみを扱う。

 FIRマップとのずれ 
 図6では E(B-V) をパドヴァとシュレーゲルで較べた。系統的な 差はないが分散が大きい。特にシュレーゲル E(B-V) は 0.3 より大きい 個所では過大になる。我々の結果は Schlafly et al. 2014 と合っている。彼らは PAN-STARRS 測光に基づく減光マップをシュレーゲル と較べ、同じ現象を見出した。Planck 353 GHz (1 mm) ダストマップも 似た振る舞いを示す。したがって、遠赤外モデルの再検討が必要かも知れない。

 ずれの Teff, log g, [M/H] 依存 
 比較した結果が少し書いてあるが略。

図6.パドヴァ E(B-V) とシュレーゲル E(B-V) の関係。




図7.パドヴァ E(B-V) とシュレーゲル E(B-V) の差の銀緯による分布 の変化。



図8.シュレーゲルとパドヴァの E(B-V) の差が Teff, log g, [Fe/H]で受ける 影響。

 5.3D減光マップ 


図9a. 0 < |z| < 500 pc の減光分布.背景は Hurt.




図9c. 1 kpc < |z| < 1.5 kpc の減光分布



GES + APOGEE 
 近距離を可視の GES, 遠距離を近赤外の APOGEE の組み合わせで、系統的に 3D 減光マップを作っていく。   ここでは Drimmel et al. 2003 Chen et al. 2014b のモデルを我々の結果と比較したい。

Drimmel et al. 2003 モデル 
  Drimmel et al. 2003 モデル は Drimmel, Spergel 2001 が COBE/DIRBE の NIR と FIR データから作ったダスト分布モデル に基づいている。空間分解能は 21 × 21 である。ただし、このモデルには銀河系バー も中心円盤も含まれていないので、銀河系バルジ方向では赤化を 系統的に大きく見積もることとなる。 (Schultheis et al. 2014b)

  Chen et al. 2014b モデル 
  Chen et al. 2014b は r, r, i 測光を 2MASS (J, H, Ks) と WISE (W1, W2) と結合し、 Berry et al. 2012 の多次元空間内での恒星進化経路の方法を用いた。ただし、我々の観測領域と、 彼らのマップとはあまり重なっていない。彼らの 3D マップは反銀河中心 方向 6000 deg2 以上に渡り、空間分解能は 3 - 9 である。

z 別の GES 天体の AK 
 図9には異なる銀河面からの高度 z 別に GES 天体の AK を示した。
(しかし、視線上での減光は 低 z での比重が大きい可能性があるのではないか? )
太陽位置は銀河中心から 8 kpc とした。APOGEE 天体が 6 kpc より遠方にある のに対し、GES 天体はずっと近傍の星 d = 2 - 3 kpc を調べている。GES は銀河系バー方向 (l, b) = (28, -3) を調べているが、そこにはダストの 強い凝集が見られる。また、ペルセウス腕、サジタリウス腕、 盾座ーケンタウルス座腕に伴うダスト量の増加も明らかに見られる。低減光の 大部分は太陽位置から数 kpc 以内で起きている。 Schultheis et al. 2014b によると、これはバー前面のダストである。

図9b.0.5 kpc < |z| < 1.0 kpc の減光分布




図9d.1.5 kpc < |z| < 2.0 kpc の減光分布



 GES 減光の特徴 
  図10と図11では、数本の視線方向に対して我々の 3D 減光を Drimmel et al、Chen et al と比較した。オンラインの表
( 表がオンラインで得られれれば それに勝るものはないのだが。"see A.1." とあるがそこはグラフがあるのみ。)
にその他の視線方向の減光値をしめす。以下に GES の特徴を述べる。

太陽近傍
APOGEE と逆に GES は数 kpc 星を高い距離分解能で観測する。一般に急激な 減光の立ち上がりが観測される。

高銀緯
Drimmel モデルは |b| > 50 では系統的に Av が低過ぎる。 Chen et al マップ は初めの吸うkpc で Drimmel モデルより急な Av 増加を示し、 GES と一致する。

Av 急な増加とその先の平坦化
大部分の視線方向で、Av は初め急増し、その先平坦化する。これは Drimmel モデルで定性的に表現されている。ただ、 4 kpc より先ではエラーが大きい。

反中心方向の第2減光増加
Puspitarini et al 2014 は 5 領域で 225 GES 星の DIBs を調べ、 それが減光と強い相関を有することを確かめた。我々の領域とは (l, b) = (212.87, -2.04) が共通である。彼らは d = [0, 1] kpc で 急な増加、 [1, 2.5] kpc で平坦、その先再び増加を発見した。 我々も平坦化までは確認したが、その先の増加はデータ不足である。

遠距離までのデータ領域
(l, b) = (38.30, -6.51), (14.60, 21.85), (147.13, -2.04) は距離が 広い範囲に渡り、そこでは Drimmel モデルとの一致が確認された。

全体の特徴
GES 3D-Av は一般に 4 kpc まで急上昇し、その先、APOGEE より近距離 で平坦化が始まる。 4 kpc ?! 


 図10.視線方向距離と減光の関係。赤線= Drimmel モデル 







































 図11.視線方向距離と減光の関係。赤線= Drimmel モデル。 緑線= Chen モデル 




 6.減光則 

 最近の減光則 
  Wang, Jiang 2014 は APOGEE データを用いて、近赤外べき乗減光則を調べ、指数 α = 1.95 AJ/AKs = 2.88 を得た。彼らが用いた星は、Teff = [3500, 4800] K, log g < 3, [Fe/H] > -1 dex であった。一方、 Yuan et al 2013 は SDSS, GALEX, 2MASS, WIDEE 測光を組み合わせ、SDSS スペクトルデータベースを用いて、 FUV - MIR に至る赤化の係数を求めた。 彼らは彼らが導いた減光係数は、 Cardelli et al 1989 や O'Donnell et al 1994 よりも、僅かな違いはあるが、 Fitzpatrick 1999 の方に近いと結論した。

 赤化係数の比較 
 我々は類似の方法で、星のパラメタ― Teff, loh g, [Fe/H] が 減光則にどう影響するかを調べる。NIR と SDSS u, g, r, i データ を合わせて、減光則を可視から赤外に渡って扱う。固有カラーは 等時線マッチングから導いた。図12には Wang, Jiang 2014, Yuan et al 2013 と同じような色超過同士の比較を示した。 表2にはその結果を他の研究と並べて示した。

 u - g 赤化 
 表2を見ると、我々の結果は Yuan et al 2013 と 10 % 以内のずれで一致 する。ただし、 u - g では Fitzpatrick 1999 に近い。u - g の分散 は他のカラーより大きい。

星パラメタ―の影響 
 Wildey 1963 は星の元素組成が減光に影響すると述べた。Grebel, Roberts 1995 は減光は星の温度、光度、メタル量の複雑な関数であることを示した。 Rv でさえこれらのパラメタ―に影響される。彼らによると、星の温度が 3500 K から 10,000 K に代わると Rv が 10 % 変わる。図13には 色超過の比が Teff と log g でどう変わるかを示した。我々の方法では Grebel, Roberts 1995 が予言した 10 % レベルの変動を検出するのは無理で ある。我々の決定精度ではパラメタ―効果を検出できなかった。

 ugri のある星 
 GES と SDSS 間で重なりが小さいので SDSS ugri 等級の得られる GES 星の 数は少ない。 Teff < 3500 K で log g < 3.5 の低温巨星では E(g-r)/E(r-i) が過大評価されている。メタル量効果は誤差内では不明である。

べき乗指数 α 
 驚いたことに、E(J-H)/E(J-K) のような減光係数は星パラメタ―に 殆ど関係なく一定である。この事実は、例えば RJCE のように星の平均 カラー(何のことかな?) から導いたり Majewski et al. 2011 や色超過  Lada et al 1994, Gonzalez et al. 2012 に基づく減光マップが、星パラメタ―による減光変化を考慮してな くても使えるということを意味する。我々は、 E(J-H) - E(J-K) 図のフィットから E(J-H) = 0.651±0.009 × E(J-K) とした。これは Wang, Jiang 2014, のE(J-H) = 0.641±0.001 × E(J-K) より少し大きく、 べき乗指数 α = 2.12, AJ/AKs = 3.15 に対応する。計算に用いた有効波長は 1.25, 1.65, 2.15 μm である。 この指数は Stead, Hoare 2009 の 2.14, Fritz et al 2011 の 2.11 と近い。



図12.色超過の比較。赤線はベストフィット。




表2.色超過勾配の比較。



図13.赤化同士の比に対する星パラメタ―の影響。



 視線による減光係数の変化 
  Zasowski et al 2011, Gao et al 2009 は中間赤外減光則が銀経によって変化すると示唆した。 Chen et al 2013 はバルジで銀緯により減光則が大きく変化するとした。 Zasowski et al 2011, は赤外減光則に強い銀緯依存性があり、長波長になると勾配が急になるため 外側銀河では減光則が急勾配になるとした。 Gao et al は銀河の腕部分で 中間赤外減光則に小さな変動を見出した。  

 我々の結果では 
 図14に E(J-H)/E(J-K) の銀河中心方向からの角度による変化を 示す。 GES が見た領域は APOGEE と違い、 減光が強い銀河面は避けて いることに注意せよ。我々の結果には E(J-H)/E(J-K) の銀河中心方向からの 角度による変化は見出されない。これは、APOGEE レッドクランプ星を用いた Wang, Jiang 2014, の結果と一致する。

図14.銀河中心方向からの角度による E(J-H)/E(J-K) の変化。 点線=我々の平均減光計数。


 7.結論 

  
 GES 分光サーベイデータを用いて決めた Teff, log g, [Fe/H] から、銀河系の中高銀緯星間減光の3次元分布を求めた。等時線モデル の影響を調べた。

 ダストマップ 
 われわれの3Dダストマップを Drimmel et al 2003, Chen et al 2014b と較べた。GES データは 0 - 4 kpc における減光の急な増加とその 先での平坦化を確認した。
(全方位での話のような 書き方!平坦化はもっと近くで始まるのではなかったのか? )
星パラメタ―の減光への影響を調べたが検出できなかった。
 将来構想 
  将来 GES データが公表された時には我々はもっと系統的な 減光マップを作れるであろう。